初めての告白。
「フフ……驚いたかね。私は魔道具をいじるのが少し得意でね。 その仮面は元々、精神系の魔法に対して抵抗力を持つものだったが、魔法動力術式だけを残し新しい魔力回路のーー」
うるさいオッサンだな……聞きたいのは、それじゃねえ。
「ーーという様に微量の魔力でーー」
くそ…… 俺は女の子に本気で打ち込んだのか。
「ーー私の知り合いの声をーー」
しかし何でこんな事を……
「ーーまたこれを応用した……」
ちっ! 可愛い顔してんじゃねえか……
「ーーつまり音を術式として刻み込んで、解放する…… 」
「「なげーよ!! 」」
「フフ……失礼。 苦労して造ったのでね……」
ふ~、落ち着け。
「……で、訳を教えてくれ」
「フフ……それはーー」
「それはボクが! ……アルティーナ王国に狙われているから……」
パクパク! 「フ、フフ…… 」
「ボクの生まれた場所はアルティーナのずっと北にあってーー」
ーーボクは寒さで悴んだ手に、白い息を吐きかけた。
この名も無い村は、ほぼ一年中雪に閉ざされていて誰も来ないし、出て行く事もない。
住んでいる人も少なくて、みんな親せきみたいな感じだ。
ボクは朝一番の仕事である〈水汲み〉をしに近くの川まで来ている。雪を溶かして飲む事は、あまり良くないらしい。
こんなに寒いのに凍る事がない川を、憎らしげに思う事もあった。
……もし川が凍れば、大人を呼びに行けばいい。氷を割ったついでに水も汲んでくれるだろう。
(毎日凍れば最高なんだけどな……)
そんな事を思いながら、膝まで雪で沈んだ足を必死に動かし川までたどり着いた。
(む……重いな。 入れすぎたか…… )
出来るだけ、たくさん入れたいけど持って行く時に溢れてしまう……
ボクは慎重にバケツに入った水を眺めながら、ゆっくりと歩いた。
……村の空が、煙で真っ黒に染まっている事に気付かずに。
よいしょ! よいしょ!
「エミー!」
母さんが走ってくる音が聞こえる。
「母さん! 」
ボクは笑顔で、途中まで上手く運べた水を自慢しようとしたが、落としたバケツからは水がどんどん溢れていく。
ボクは見た。
母さんの胸から突き出た、血まみれの刃物。
その後からボクを睨む恐い人達……。
「子供か。 ……もう人質はいらん。殺せ。」
恐い……
「逃げ……て! 」
恐い恐い!
母さんの声にハッとしたボクは必死で走った。毎日の水汲みのおかげか、雪で埋もれた道はボクにとって、障害にはならない。
でも、いつまでも追い掛けてくる雪を踏み締める音が、ボクを恐怖で支配した。
やがて丘の上の行き止まりにたどり着き、ボクは覚悟を決めた。
この下は川だ。
助からない。
でもどうせなら、誰かに噛みついてやるーー
「自分はどうなってもいいからってね…… 」
「……で、どうなったんだ⁉ 」
「……覚えてない。 ……意識を失って川を流されてる所を、パオロ様が助けてくれたんだ…… でも顔が血だらけだったらしいから、噛みつけたんじゃないかな?」
「…… 」
おいおい……信じられないぜ。めちゃめちゃハードじゃねえか……。
「フフ…… で、その村を襲った連中は白い鎧に赤マントをしてたらしい……」
ドン!
「アルティーナの幻想騎士団⁉」
ラウル……テーブルを叩くな。 シャリーがびっくりしてんじゃねえか……。
「フフ。わからない……今はまだな。だがこの事は秘密だ。頼んだよ……。」
くそ! 難しくてよく分からないが……。
「パオロ……さん、話がある」
夜風が心地よく風の音が聞こえる。俺は星空を眺めるいつもの場所でパオロと二人きりになっていた。
「パオロさんーー」
「カール君。 ……その昔、この世界は〈異世界人〉と呼ばれた人達が寄り添い、平和に暮らしていた。しかし異世界人の中には不思議なスキルを持つ者達がおり、世界征服を企んだ。そしてそんな彼らを恐れた者達によって滅ぼされた……
」
「信じられるかね? 」
「……」
「何故スキルは存在するのか⁉ 」
「何故異世界人だけが特別なスキルを持つのか…… 」
「その発動条件は⁉ 」
「スキルの強さに何故違いがあるのか…… 」
「この世界は、分からない事だらけだ……」
「フフ……私達、【グリフォス】はこの世界の謎を解き明かす為に存在している。この先、君と一緒に仕事できる事を願ってるよ…… 」
「…… 」
俺はパオロの背中を黙って見送るだけだった……。




