初めての取引。
くっ!
痛てて…… 何だ? 確かに面が入ったと思ったんだか……
当たる瞬間、小さい魔方陣みたいなのが……
「おい! 貴様! 何をした! 」
「お前のスキルは何だ⁉ 」
なんだコイツいきなり……
「待て、エドガー。勝負はカール君の勝ちだ」
「そんな……」
「カール君。君には約束通り、私の全財産を貰ってもらうよ。」
「私の家族の面倒もよろしく……〈オリビア〉すまないな」
はぁ⁉
「あらやだ、ウフフ……こんなに若い旦那様、いいのかしら? 」
ちっ!
「勝負は引き分けで構わない。あんたの財産なんかいらないよ」
「フフ……残念だったな、オリビア…… しかし私にもメンツと言うものがある」
パオロはオリビアが持っているバックから何やら取り出すと……
「これを君に差し上げよう。軽装備だがミスリル製だ。そして君の〈剣の道〉に良き未来があらん事を……」
(どうなってんだ? あのバック……)
そう言ってパオロが地面に並べた装備品の一つに、俺は目を見張った。
刀らしき物がある…… マジか⁉
「パオロさん。もう2つ頂きたい」
「……貴様!」
仮面野郎が興奮しているが、無視だ。 こうなったら利用させてもらう。
「ラウル守備隊長の装備品に、ゴブリン討伐の協力だ。……無理ならアンタの家族を養うよ」
「フフ……フッハッハッハ! 君には別の才能が有るかもしれんな。いいだろう! 取引成立だ!」
アストレイ夫妻は機嫌良く笑っているが、うろたえるラウルとエドガーは何も言葉が出てこなかった。
ーー
「カール!何故あんな事を言った!」
俺はシャリーの家で飯を食っている。俺の親父とシャリーの親父は昔からの友達で、共に母親を病気で亡くして以来、よくお互いの家で飯を食べていた。
今日の食事はシャリーが作っているが、やはり俺が作るべきだったか……。
「別に……いらないならあのミスリルの鎧、俺が貰うけど」
「むむ……」
ラウルは守備隊長のくせして、最近やたら先頭を切りたがる。ジルーの事があってからだが、アイツの家族の様になって欲しくない。
たった一人の家族を失ったジルーのおばさんはあの後、悲しみに暮れて自殺してしまった……。
ラウルが責任を感じるのは勝手だが、シャリーを悲しませたくない。
「いいじゃねえか。相手は金持ち! 俺達貧乏。 支援してもらおうぜ!」
「まったく……」
ラウルはいまいち納得していない。真面目な奴だ……。
結局ラウルはミスリルの鎧と魔法のメイスを譲り受けた。身体が大きくて怪力のオッサンにはお似合いだ。
ゴブリンの討伐に関しては守備隊の訓練終了後に合同で行う事で話がついた。近隣の村では女が拐われるなど、まだ被害が続いている。
夕食が終わったあと、日課になった素振りを始める。
しかしこの〈刀〉本物とは若干、装飾などが違うがこの世界の人が本当に造ったのか?
〈自動修復〉の魔法が付与されてるって言っても、ぶっ壊れたら嫌だし……
先ずは、振れるようにするか……
日課の素振りが終わり、俺はいつもの様に星空を見上げる。
そしていつの間にか隣にいるようになったシャリーにキスをした。




