見知らぬババァも甘くない。
「おい…… あの人…… 」
「きゃ! 素敵…… 」
大通りを歩く、一人の若い青年がいた。
青年のやや長い髪と瞳は〈漆黒の神々〉の様な美しい黒色をしており、肩に羽織った純白のローブは風の精霊から祝福を受けているかの様に、キラキラと華麗になびく。
「間違いない……〈白い賢者〉様だ! 」
時おり見え隠れする引き締まった全身のセクシーな筋肉に、すれ違う者は男女問わず視線を釘付けにして離れる事はなかった。
「……最高の気分だ!」
颯汰は全身に羨望の眼差しを浴びながら、モフカフェへと進む。
「試してみるか……」
そう呟くと、颯汰は急に走り出す。
(体が軽い!風の様だ!)
人混みをあっという間にすり抜け、時には街の外壁を足場に駆け走り、跳躍して屋根から屋根を飛ぶ様に走る。
(凄い! 凄いぞ! )
やがて人々の歓声が聞こえ無くなる頃、彼は〈モフカフェ〉の前にいた。
「フフ……ティアの驚く顔が楽しみだ 」
妄想で顔が歪みそうになるが、一呼吸おいて店を睨んだ瞬間、颯汰は衝撃を受ける。
「な⁉ バカな! 」
窓越しに見える店内に、だらしない笑顔をして接客されている〈ジョー〉を見た!
「……ぐぬぬ!」
しかもジョーの隣で笑っているのはティアなのだ。颯汰はすぐに店の横壁に隠れる様にへばりつき、窓越しに中の様子を伺う。
(ジョー…… まさか、ティアの事を…… む⁉ )
ティアの次に来たメイド獣人は……さらにボリュームのある、バストを完備していた。
「……ゴクリ」
大人の色気と言うのか……冒険者に例えるならば、……いや、〈勇者〉レベルだ。
ジョーのデレ具合からしても間違いない。
……ヤツの目的は……。
『ぴか~!』
颯汰の体が再び光りに包まれる!
「ヤベェ!」
危険を感じ、人目のつかない路地裏の奥へと急ぐ。
光りが収まった後、民家の窓に映った自分の顔は……やはりじじいだった。
呆れた様に苦笑し出した俺であったが、不意に目の前のガラス窓が激しい音を立て開いた。
「アンタ覗き⁉ じじいが調子こいて発情してんじゃないよ! 」
俺は着替えの途中であったであろう下着姿の見知らぬババァに胸ぐらを捕まれ、為す術もなくババァスキル〈ビンタの奇蹟〉をコンボで叩き込まれる。
「おぶぶぶぶぶぶ!」
このスキルはババァの怒りに魔力が反応し、〈身体強化〉〈障壁無効〉の効果を生み出す悪魔的スキル……らしい。
「二度と顔を見せるんじゃないよ!」
じじいのライフゲージは、安全であるはずのミズリの街で今、一番少なくなっていた……。
ーーーーーー
「クレア様、何か良い事でも?」
機嫌良く鼻歌を歌いながら馬を操るクレアに、【陽炎】の若手〈リアーナ〉が笑顔で話し掛けた。
「よく分からんが……調子が良いぞ! 力がみなぎる様……じゃ!」
リアーナは安堵する。アーサーが亡くなって以降、クレアは黙り混み、時にはイラついた様子を見せ【陽炎】のメンバーも対応に少し困っていたからだ。
そんなクレアの元気な様子を見ると、リアーナ自身も嬉しくなるのは当然であった。
夕方に差しかかった頃。
「クレア様、どうやらここで夜営する様です 」
「……ああ 」
先頭を行く馬車が止まりバルト伯爵の兵士が次々に、夜営の準備を始め出す。
「どれ。ワタシはついでに何か狩ってくるよ」
バルト伯爵の兵士が用意する代り映えしないない食事に、少し飽き始めていたクレアは、周囲の探索ついでに自ら食料調達する事を思いつき、〈飛翔魔法〉で空に舞い上がる。
『魔力探知!』
アクティブスキル〈魔力探知〉を発動させる。
周囲5キロに及ぶ魔力探知は、通常の魔物より低い反応をみせた動物にも効果が及ぶ。
「あの辺りか……」
目星を付けたクレアが、上空から近寄り獲物を確認したその時、王都の方向に揺らめきを見せる煙を見つけた。
しかし王都までの道のりはまだ、1週間ほどかかる。ならば明日到着を予定していたウルの街に違いない。
両手の指先を合わせて、円の形を作ったクレアは高度を上げて【遠見】の魔法を唱える。
「なんて事に…… 」
ウルの街は王都とミズリを結ぶ中継地であるが、街にしては人口が千人と少ない。しかし、商業ギルドと冒険者ギルドが存在しており、定住しない旅人などが多い為に常に活気のある街だ。
アルティーナ王国にしても重要度は低く無く、300名の予備兵力を常駐させていた。
大きく燃え広がる建物。逃げ惑う人々の様子は、ここまで悲鳴が届きそうな惨状である。
「ゴブリン共め……」
クレアの目に映る悲惨な光景がアーサーの記憶を呼び覚まし、怒りで全身が震え出す。その時クレアに近づいてくる、ワイバーンの集団を見つけた。
「う……クッ……クフッ!」
「逃げ……んじゃ、ねえぞ⁉ 」
狂喜の表情に歪んだクレアは、全身から燃えるような紅い魔力を放出し始めた……。
勝手にランキング、250位くらいにきました!わ~い(笑)




