プレゼントは、甘くない。
いらっしゃ~せ~!
「ほら、じいさんこれ使ってみ!」
トレーニングの朝、ジョーが差し出して来た弓にじじいは目を見開く。
(は⁉ ……何これ?)
ジョーが笑顔で持っているその弓は、全長2メートルをゆうに越した〈大弓〉だ。
色は白く、表面はうっすらと透明の樹脂に覆われている様にみえる。
「美しい…… 」
「いいから持ってみ!」
「う……お⁉ 」
ジョーから弓を受け取ると、じじいはその重さに驚愕した。
(ダンベルかよ⁉ )
ジョーは片手で軽々と弓を渡してきたが、じじいにはそれが出来ない。片手で持つ事はできるが、持つ事に意識を取られてしまう。
「ダッハッハ! じいさん似合ってるぜ! それは〈ニブタ〉で買って来た一点物だ。矢もここに置いとくから! 使いこなせる様になるまで自主トレっつ~事で! 」
そう言い残してジョーは足早に去って行った……。
「やれやれ…… 礼を言う暇も無いなんて、あの人らしいわね~ん 」
サミーも呆れた様に笑っている。俺は弓に張り付けてあった〈取説〉を見つける。魔法の弓なのか、コツでも書いてあるのか、すぐに紙を開いて見た。
『この商品はリサイクルです』
「……」
くやしくて弓を捨てたくなったが、気を取り直した俺はギルドの地下射撃場で試し打ちを始める。
頑丈に作られたこの部屋は、学校にある体育館ぐらいの広さを持ち、壁は更に土魔法で強化されていた。
「……こんな所を握るのか?」
弓を持つ〈握り〉の部分が、中心よりやや下に黒く装飾されていた。しかし弓道の経験など無い俺は、勘でやるしかない。
「全然ダメだ~…… 」
試しに弓を引いてみたが、予想以上に硬い。重い上に硬いとなると最早お手上げだ。
……くやしくて弓を捨てたくなったが、気を取り直した俺はトレーニングジムでもう少し体を鍛える事にする……。
ウェイトトレーニングを終えた俺は、部屋で一人ネックレスをいじっていた。ジョーは仕事なのか、やはりいない。
「あ~あ。せっかく貰ったのに射つ事も出来ないなんて……」
俺は愚痴をこぼしながら、いつかの〈指ズポ〉を繰り返す……。
「しかしこれ……クセになるな。中柔らかいし…… 」
(柔らかいといえば、ティアの手は柔らかかったな…… 唇もきっと…… しかしじじいだもんな…… 嫌だよな…… 若くなりたい…… そしてモテたい! )
そう強く思った瞬間だった。ネックレスの宝石部分が、強い光りを伴って部屋全体を白く染める。
余りの眩しさに驚き、目を閉じていた俺は……ゆっくりと目を開けた。
(部屋は異常なし…… ネックレス……⁉)
驚いたのはネックレスの事ではない。自分の手だ。
年老いたはずのしわが刻まれた手が、若々しいハリを取り戻している……。
恐る恐る部屋に備え付けられた鏡を覗くと……
黒目黒髪のイケメンが、そこにいた!
(俺……なのか⁉ 確かに俺の面影がある…… しかしハーフみたいだな…… 女神が空気を読んだと言う事か⁉ )
鏡の中でイケメンが笑う……
「ク……クククク! 」
「……俺こそが! 主人公だ! 」
じじい……いや、イケメンはマジックポーチから〈封印〉した純白のローブを取り出し、マントの様に羽織った。
「待っていろ! 愛する妹達よ! 」
一人恥ずかしいポーズを決めながら、鏡でもう一度全身を確認すると、じじ……イケメンは、風の様にギルドを出て行くのであった……。
ーーーーーー
「う…… 」
「クレア様、どうなされたのですか?」
「いや…… 何でもない 」
突然の寒気に襲われたクレアだったが、【魔力探知】の範囲には何も感じる事ができなかった……。
作者は弓道の経験……ございません(笑)
小説もですが……他の方の作品を拝見するだけで心が折れそうです(笑)
今日もお疲れ様でした。




