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冒険者暮らしも甘くない。

どりゃああ!

連投です!

俺達は【モフカフェ】を出た後すべての買い物を終え、大通りからギルドに向かって歩いていた。


「いい店だったな……」

「クク……じじい、スケベな顔を晒しておったぞ?」


(……チッ!)


ダメだ。このババァとは、会話が成立しない……しかもマジックポーチを持っているのに、何で俺に持たせたのか。確かに【陽炎】には世話になっているが、このババァには悪意を感じる。


(さっさと、仕事と住む場所を探しに行くか……ん⁉ ババァ、何故止まる?)


クレアは、空を見上げていた。


見上げた空は今日も青く澄んで美しい。相変わらず巨大な月が2つ見えるが、幻想的な異世界の空らしく俺の荒んだ心を癒してくれる。


「……まさか⁉ 」


急にクレアが喋ったかと思うと、物凄いスピードで大通りを駆け抜けて行く。驚異的な速さで走るクレアは、人混みの中を誰かとぶつかる様子もない。


すぐに後を追うも、やはり俺の足は泥にハマったかの様に動きが鈍かった……。


ーーーー


それは空を飛んでいた。


大きく広げた翼に風を受け、ほとんど羽ばたきの必要もなさそうに目的地を目指す。竜の様な圧倒的風格は感じられないが、通常のワイバーンより一回り大きく、飛行能力などにおいても優れている事は一目瞭然だ。


その生物は元々ミズリ近くの大森林をテリトリーに、数百の群れを率いて支配していたが【新種ゴブリン】との争いに敗れ、配下となっていた。


「グルル……」

(この辺りか……)


知性を持ったその魔物は、新しい主に【ジェネラルワイバーン】と名付けられ、請け負った命令に従って足に掴んでいた〈荷物〉を落とす。


荷物はミズリの大通りにある交差点に落ちていき、やがて真っ赤な花を地上に咲かせた。そして【ジェネラルワイバーン】は満足した様に森へ進路を変えた。


ーーーー


クレアは走る。道を往来する人々に注意を払いながらも、神経は研ぎ澄まされて行く。


彼女は感じた……悪しき魔力の襲来を。

彼女は見た……空を飛ぶ大きなワイバーンを。


そして落ちてくる〈何か〉……を。



「……グシャ!」


人々は聞きなれないその衝撃音に振り返り……やがて腐臭を伴って原型を留めていない人間の様な物を確認すると、恐怖で悲鳴を上げ出す。


「うわぁ!」


「キャー!」


逃げる人達、好奇心からそれを見に走る者まで、大通りは大混乱に包まれる。

颯汰は騒乱の中人混みを掻き分け、ようやく中心部にたどり着いた。


腐臭が漂うその中で、クレアはバラバラになった亡き骸を丁寧に拾い集めている。やがて衛兵と何やら話し終わると、何処ともなく姿を消していた。


俺は茫然とクレアの後ろ姿を見送る事しかできず……何も言えなかった。


冒険者ギルドの前にあるベンチに一人、老人が腰掛けている。

薄汚れたローブに古めかしい杖を力なく持つその目は、虚ろな様子だ。


(あんな……死に方……)


ファンタジーの世界で生々しい〈死の現実〉に触れた颯汰。この世界は人間に優しくなく、どこか甘い考えをしていた事にまた気が付かされてしまった。


(【陽炎】のメンバーだよな……Sクラスなのに……)

クレアは怒っていたのか、泣いていたのか……俺は無力だ。


「おじぃ~ちゃん!」


「ん⁉ ティア……ちゃん⁉」



俺の弱った心に、ティアの笑顔は救いの女神に見えた。


今日もお疲れ様でした!

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