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ヒロイン登場も甘くない。(第3章)

「……じじい、こんな所で何をしておる?」

「……いや、その……日なたぼっこじゃ!」



俺の目の前に現れたのは、〈クレア〉だ。相変わらず、黒いローブにフードをスッポリと被り、鋭い眼光を放ってくる。



「ちょうど良い! これからワタシに付き合え!」

「え……今ですかいの⁉」



「問答は無用じゃ!」

「はい……」



何処に行くかも分からないままに、クレアの後を歩く。


「じじい……いや、何でもない……」


さっきの〈指ずぽ〉が見られていたかと、ドキッとしたがクレアは何も言わなかった。


やがて多くの店が建ち並ぶ商店街へと足を踏み入れる。


ミズリの商業区にある専門店街で、その道のプロ達が、より幅広く珍しい物を取り扱っているのが特徴的だ。


クレアは、ミズリの特産品や農場で使う様な簡易魔道具を次々と買って行き……俺に持たせた。


「ぐぉ…… 」

(し……死ぬ! )


「クク……どうしたじじい。重いか?」


トレーニングによって破壊された筋肉が悲鳴を上げ、全身が小刻みに震えだすが、ここで一般人が持ち合わせないマジックポーチを使う事はできない。


「なんの! レディに優しくするのは紳士のたしなみよ!」


俺は冷汗を出しながらも、男の意地を見せる。


「……ポッ!」


(……ポッ! ってなってんじゃね~よ!)


俺は心の中で激しくツッコミを入れるも、冷静を装う。



「しかし、たくさん買ったのぉ。故郷への土産か? 」

「……フン! そんなとこじゃ!全くあやつめ……土産くらい自分で…… 」


(何だ? 怒っているのか? )


急に不機嫌になったと思ったが、クレアの目は悲しく潤んでいる様に見えた。


「む! ここじゃ! この店に入るぞ! 」


急にクレアは立ち止まると、じじいが持つ大量の荷物を自分の〈マジックポーチ〉にしまい、店に入る。


「【モフカフェ】⁉……だと!」


商業区の一角にあるその店は2階建てで、建物は古そうだが〈カフェ〉にしては広い。俺はメイド喫茶に初めて入る、地方から遊びに来ただけの、親のすねをかじる貧乏な予備校生が友達の誘いを断れない……様な気分で、店のドアを開けた!


「いらしゃいませ!飼い主様~!」


「おお……! 」


そこには、メイド姿の獣人娘が眩しすぎる笑顔で俺を出迎えていた。


「か……かわいい……」


「……おいじじい! こっちじゃ!」

(……ぐ! あのババァめ……)


大声で、じじい呼ばわりされた事に苛立ちを感じたが……確かに俺はじじいだ……。


「……ズズッ。 美味しい!」


この【モフカフェ】のやり方は日本のメイド喫茶と動物カフェを合わせた様なものだ。美味しいお茶とスィーツ、かわいいメイドに獣人、モフり放題の珍しい獣魔達。色んなニーズに対応している。


さらに〈メイド獣人〉は、初級魔法【リフレッシュ】を使う事で、客のメンタルまで癒している様だ。


「完璧だな……ババァも興奮する訳だ……」


クレアは店の、中二階にある〈モフり天国〉コーナーで、獣魔相手にチャマじゃらしを振り回している。


(ん⁉ ……あの娘は…… )


メイド獣人の中で見覚えのある顔を見た。そのメイドはゆっくり俺に近き、耳もとで囁く。


「この前は、ありがとうございました。もうあんな事はやめたので、良かったらまたお店に寄って下さいね。……おじぃちゃん! 」


「……OH! 」


俺の体に衝撃が走る!

それはまるで……ラノベ小説に置いて、初めてポイントを頂いた作者の様な……ブックマークがいきなり二個付いた時のような、感動的な何かだった……!


『リフレッシュ!』

「……ほへ~! 」


ティアの甘い香りが鼻をくすぐっていたが次の瞬間、深緑をイメージさせる爽やかな空気が俺を纏っていた。


目をつぶれば……それはまるで日本にいた頃、修学旅行で登った阿蘇山の草千里でーーーー


「お名前を聞いても……いいですか?」

「……ほへっ! サ…… ソータです……じゃ 」



「ソータ……さん、また今度待ってますね! 」

名前を聞いたティアは続けて何か言おうとしたが、何もなかった様に仕事へ戻った。


「フッ。おじいちゃん…… 悪くないな……」


「おい! じじい! 帰るぞ! 」

(ぐ! このババァ…… )



【リフレッシュ】は、無効化されていた……。




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