1 赤鬼と呼ばれる少女
赤鬼と呼ばれる少女はエリートヤクザだった。
赤鬼と呼ばれる者たちがいる。
数十年前から、途端にその姿を現しだした人間ではない者たちだ。銀色の髪と深紅の瞳を持つ彼らはどこからともなく現れ子孫を増やしていった。
人の血を啜り、眷属を従え、半端ない身体能力を持ち、夜を支配するとされて恐れられてきた。 人々はそんな者たちのことをこう呼んだ。
赤き鬼、吸血鬼と・・・。
しかし、吸血鬼と言ってもよく聞く不死だとか十字架怖いなどはない、まだよくわからない存在だった。
天王洲組
元々は財力があるだけのヤクザの集まりだったが現組長である天王洲 帝により組は一新され、今ではあらゆる分野で成功しとてつもない財力と権力を持つ大組織になっていた。
天王洲 優姫は組長の帝とその妻、桜の一人娘である。
「ねぇ おかーさま どうしてわたしはお屋敷の外に出てはいけないのですか? 外で遊びたいし、学校という所にも行ってみたいです!」
「ごめんね、優姫。 私のせいなの、本当にごめんね。」
優姫はそう言って泣き崩れる母をみて不思議に思っていた。
だが、まだ幼い優姫を外に出す事ができない理由があった。
「あなた 私、もうあの子がかわいそうで。私に似たせいで不自由な生活を送らせてしまって・・・。」
「桜、そう気をおとすんじゃねえ! もう少しでかくなったら皆で遊園地でも行こうや! それに優姫は桜によう似てべっぴんさんだからなー! モテまくるだろぅなー ワシはな、優姫が変な男に寄り付かれんか心配でしょおぉーがないんじゃ!」
「フフッ あなたに似てたら色白ゴリラになってたかもねっ」
「ガッハッハ!ゴリラはいけねーな!! まあなーこれから色々苦労はあるだろうけど、何とかなるだろ!!」
そう、優姫の母である桜は赤鬼だったのだ。
人間と赤鬼のハーフである優姫は桜の血を濃く受け継ぎ、赤鬼の象徴ともいえる銀髪と深紅の瞳をもっていたのだ。 しかし、まだ世の中は赤鬼というだけで恐れられ、軽蔑される。 それが幼い少女となればいったい何をされるかわからない。
だから帝と桜は優姫がある程度成長するまで屋敷の中で守ろうと決めたのだ。
それから数年後、優姫は18歳になっていた。
この頃から組の仕事の一部を任され、既に独り立ちしてエリートヤクザになっていた! 赤鬼と言えど、この若さで多大な財力を持つ敏腕美少女を嫁にしようと縁談の話が多数来ていた。
「父様、戻ったぞー。 大事な話って?」
「んぉおお!!優姫ー!!久しぶりだねー!元気だったかい??」
「あの、父様? ウザイ。」
「桜ー!大変だ!ワシの優姫が反抗期だー! 不良だー!」
「もう、何言ってるの。優姫おかえり 元気だった? 実はね、あなたに縁談の話が沢山来てるのだけど。 そんな事より会えて嬉しいわー!」
「縁談?てゆうか1週間しか離れていないぞ?」
「桜!イラン事言わんでいい! そんなもん届いてねーよ! ワシがぜーんぶ!捨てたもんね!」
「捨てたってあなたねー。 まぁそんな事もあろうかとお母さんが選んでおいたから 後で見ておいてー」
「さぁーくらぁ!! 優姫は誰にも渡さん! んがぁーー!!」
「んー 考えとく。じゃ私は東京の屋敷に戻るぞー」
「うん! 気お付けてね優姫! いつでも帰っておいでね!」
親バカ両親に別れを告げて、優姫は東京へ戻った。
そして数日後、桜が選んだ3人の縁談があったが、 内2人は謎の体調不良を訴えた優姫が縁談をキャンセルしてしまった。
優姫としては別に好きでもない相手と結婚なんてするつもりはなかったので申し訳ないとは思いながらも3件ともキャンセルするつもりだったが、しぶとい生き残りがいた。何度断っても予定を調整しまくってくる男がいたのだ。 とある銀行の頭取の息子だった。
しぶとすぎる男との縁談から逃げるため優姫は街外れの公園まで逃げて来ていた が捕まった。
「もう逃がしませんよ!今回ばかりは何が何でも連れていきます。」
まったく、これ以上お嬢のわがままで先方に迷惑かけるわけにはいかねー。 ちょいと強引にでも連れて行かねーと このわがまま姫はまた、逃げ出してしまうだろうし しょうがねぇ。
「おい待て! その子を離しなさーい!」
おや?いけねぇ一般の方がいらしたか。
「すいやせん、お兄さん 驚かしてしまったようですね。」
「フフッ 確かに知らない人から見たらそう見えそうだな。 誘拐ではない問題ないぞ こやつらは私の部下だ! 助けようとしてくれてありがとう 嬉しかったぞ 行くぞ 賢、篤史。」
優姫を乗せた黒い高級車はそのまま縁談会場へ向かっていた。
「ねえ、賢。 さっきの人って・・・。」
優姫は窓の外を見ながら、さっき公園で出会った少年の事を考えていた。
「さっきの少年がどうかしたんですかい? まさか、惚れちまいましたかい?」
優姫は無言のまま窓の外を見つめていた。
そうしている内に縁談の場である高級料亭にたどり着いた。 優姫が脱走したせいで既に待ち合わせ時間は過ぎているが、とある銀行 頭取の息子はしぶとく待っていた。
先方の要望で2人きりで話したいと言う事で、付き人である賢と篤史を車で待機させ 優姫は店内へ入っていった。
「お待たせして申し訳ございません。 天王洲 優姫と申します。」
「お待ちしておりました、優姫さん。石田銀行 頭取の息子の石田 たかし と申します。よろしくお願いします。 お着きになって早々で申し訳ありませんが私と結婚していただけないでしょうか?」メガネクイッ
「石田さん、お気持ちは嬉しいのですが本日は今回のお話。お断りさせて頂に参りました。 そもそも、お互いの事も何も知らないのにいきなりすぎだぞ!」
「確かに優姫さんのおっしゃる通りです。ですが、私の妻になると言う事はそちらにもメリットがあると思いますが。 むしろメリットしか思いつきませんよ。」メガネクイッ
「ごめんなさいねー お断りさせて頂きます。 私は今石田さんとは別に気になっている方がいますので。 それでは失礼します。」
まったく、何なのだあの男は。
「お嬢おかえりなさい、早かったですね?いかかでしたかい?」
「最悪よ 屋敷に帰るぞ」
まったく、お嬢ってやつは・・・。 賢は呆れながらもどこかホッとしていた。
石田の態度にイラつきながら優姫は店を後にした。
一方、優姫が店を後にした後石田はどこかへ電話をかけていた。
「もしもし、私だ。 例の男は? そうか、採用したか。 大丈夫だ心配ない あの男はあの黒鬼だ、間違いない うむ、そうだ 後はそちらにお任せする。」
ちっ 天王洲のガキが赤鬼の分際でこの私に恥をかかせてただで済むと思うなよ・・・。