第8話 グループ分け
翌日、アラームは6時半にセットしたが俺が起きたのは4時前だった。まぁそれもそうだろう。そもそも昨日活動した時間は6時間程度だ。
早く起きた俺はシャワーを浴び、着替えて城を散策するべく外に出た。昨日は上履きで出歩いたが、今は用意されていた靴を履いている。この靴は解析記憶によると魔法が付与されているらしく、サイズは履く人それぞれにフィットするよう変化するようだ。
部屋の外には誰もいなかった。ひとまず外に出て城を見渡せる場所に行ってみよう。そう思って適当に彷徨っていたらメイドを見つけたので、この城がどれくらい大きいのか見てみたいと言い、外に出る道を聞いた。するとメイドは城が一望できる場所まで案内すると応えた。自分の仕事はいいのかと聞いてみると、なんでも、俺たちを優先するよう女王から指示があったらしい。
案内された先は城壁の上で、王城を正面から一望できる場所だった。背後には城下町が広がっている。王城は俺の想像より遥かに大きかった。俺はすぐさま解析記憶を発動する。流石にこの城全体の解析は教科書とは情報の量が桁違いなのか、20秒ほど時間がかかった。何か少し疲れた気がしたので、ステータスを見てみたら10程MPが減っていた。まぁこれだけの大きさのものを解析したならMPも結構持っていかれると思っていたが、MP消費10とは超低燃費だな。
来てすぐ戻っても変なので、数分城を眺めるフリをしながら城の内部構造を見ていると、城内に図書室のような場所があることがわかった。まだ時間もあるし次は図書室に行ってみよう。
ひとまずの目標は完了していたが、情報は早いうちに入手した方が良い。多少怪しまれるのは仕方ないが、俺は図書室へ行くべくメイドに城内で本がたくさんある場所はないか尋ねた。
するとメイドは「はい、ありますよ。まだ時間もありますし行ってみますか?」と提案してきたので、俺はそれに応じた。
図書室に行くとそこにはすでに先約がいるようだった。近づいてみると知り合いだと気づいたので話しかけた。
「おはよう正悟。お前もここ来たのか」
「おはよう秋。早起きしたはいいけどやる事もなかったから図書室みたいな所があるかメイドさんに聞いて連れてきてもらったんだよ。情報収集は大事だしな」
そう、本を読んでいたのは正悟だった。
手元を見てみると、この世界の歴史などに関する本が数冊置かれていた。
正悟とその後も少し雑談した後、俺は図書室にある本を片っ端から解析記憶で保存していった。図書室と言っても王城のものなのでかなり広い。その中を歩いて一周するだけでもそれなりの時間がかかった。
ここにある本全ての解析を終え、部屋に戻ろうと思ったが、朝食まで1時間以上あったので、ここで解析記憶の保存先を脳内に指定してやってみることにした。スキル内で検索をして、この世界の言語に関する書物を探す。このままスキル内に保存されているのを直接脳内にコピーする事もできるようだが、初めてなので本棚からその本を持ってきてやることにしよう。
一度にたくさんやるのは怖かったので、1ページ、数ページという具合にページ数を増やしながら解析記憶を発動していった。
フラッシュバックという現象を体験したことはないが、こんな感じではないのだろうか。突然、頭の中に鮮明に本の中身が写し出される。なんだか少し酔いそうだ。しかしそんなにひどくもなかったので次々保存量を増やしていく。
スキル内からコピーする方法も試したがどちらでも感覚的には変わらなかった。
10冊同時に指定して保存した時、軽い頭痛を覚えたのでこれ以上は危険だと思い、中断した。今回はこれくらいにしておこう。ひとまずこれでこの世界の国や気候などは大体理解できた。
その後は適当に本を読み漁り、朝食の時間も近づいてきたので俺は正悟と共に食堂は向かった。
朝食を終え、一休みしてから俺たちは戦闘訓練があるということで、城の訓練施設に案内された。戦闘訓練といっても、基礎の基礎から教えてもらえ、激しいものではないらしい。この訓練には戦いをしたくないと言っていた生徒たちも含めて全員参加していた。
自分の身を守るすべは身につけるべきだと思ったのだろう。
ちなみにクラスで決めた方針は女王にも伝わっており、今はそれでも構わないということだった。
俺たちが施設内の訓練場に着くと、そこには転移してきた時に女王の近くに立っていた騎士達がいた。全員の顔を覚えているわけではないが、数人は覚えている。
騎士達は俺たちに近づいてきてその中の2人の人物が口を開いた。
「おはようございます。私は近衛騎士団団長のシルヴィア・ガーネットです。よろしくお願いします」
「おはよう諸君。俺はカイサス、この国の魔法騎士団の団長だ。よろしく」
その2人は玉座の間で王の最も近くにいた2人の騎士だった。カイサスは30代半ばくらいに見える筋骨隆々だが優しそうな男性で、シルヴィアは20代後半くらいだろう可憐な女性だった。
騎士団長なら相当強いんだろうと思い、解析して2人のステータスを見てみる。
======================================
シルヴィア・ガーネット
年齢:21歳
種族:人間
性別:女
個体レベル:207
〈称号〉正規勇者
〈適性〉魔術、剣術、治癒
〈属性〉火、水、土、光
HP:3250/3250
MP:2863/2863
物攻:1524
物防:1340
敏捷:1368
魔攻:1263
魔防:1400
〈スキル〉
属性弾Lv10、属性壁Lv10、属性刃Lv10、熱水砲Lv10、動物人形Lv10、
〈固有スキル〉
鑑定、天撃Lv8
======================================
======================================
カイサス
年齢:43歳
種族:人間
性別:男
個体レベル:418
〈称号〉武芸者、竜殺し
〈適性〉魔術、槍術
〈属性〉水、風
HP:4328/4328
MP:4561/4561
物攻:3690
物防:3222
敏捷:3853
魔攻:2569
魔防:2157
〈スキル〉
属性弾Lv10、属性壁Lv10、属性刃Lv10、風纏Lv10、水蛇Lv10
〈固有スキル〉
龍槍Lv10
======================================
なんだなんだ、カイサスさん準勇者でもないのに強すぎだろ。これなら正規勇者のステータス倍率かかっても互角かそれ以上じゃないか。ま、まぁひとまずこれについては置いておくとしよう。
「貴方達にはこれからこの用紙に称号、適性、属性を記入してもらいます。これは貴方達それぞれに合った訓練をする為に必要に必要です。自分たちの今後に関わることなので虚偽の申告などはしないように。ちなみにこれの用紙は特殊なもので、手をかざすと同時にその者の魔力と反応して称号、適性、属性以外のステータスが全て自動で記入されるようになっています。」
シルヴィアはそう言い、俺たちに1人1人に特殊な紙を手渡した。俺は紙を一応解析記憶で危険がないか確認してから手をかざした。
すると、表面が発光し、ステータスが表示された。
虚偽の申告はするなと言われたが、正直に書くと目をつけられそうなので解析記憶内の情報を参考に、属性はそのまま、称号は効果が似ている賢者に、適性は魔術、槍術、治癒、錬成、付与としておく。また俺の属性は基本属性ではなく氷、雷、聖、邪と全て高位属性な上に系統外の無まである。だが、元になっているのは水、風、光、闇と系統外なので基本の4つだけを書き込んだ。
出来るだけ平均的にしようと思ったが、適性が平均より多くなってしまうのは仕方がない。使えるものは使えるようにしておいた方が良いだろう。
また、武術を槍術1つに限定したのは、まずは1つを極めようと思ったからだ。剣士に憧れはあったが、解析記憶によるとこの世界には剣術の称号の保持者が多いらしいので少しは剣士を相手にした時やりにくいだろうと思い剣術ではなく槍術にした。それに俺は空手の経験があるので格闘戦も多少はできるとふんで、拳術なども除外した。
全員が記入を終えた紙はすぐに回収され、シルヴィアだけが目を通す。読み終えると、俺たちを2グループに分け、片方にはシルヴィアが、もう片方にはカイサスがついた。
俺、翔太はカイサスのグループ、正悟、木村一派はシルヴィアのグループだ。全体の人数比はシルヴィアグループ25人カイサスグループ12人。
カイサスグループはその後すぐ隣の訓練施設に移動させられた。何となく予想はついたが一応移動中にこのグループ全員に話しかけ、なんの称号か聞いて回ったが、勇者、準勇者の者はこのグループにはいなかった。