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NEW life  作者: 如月駆
1/5

プロローグ

初投稿です。よろしくお願いします。

 

 ( ああ……今日こそ死ぬかも。)

 家に帰ると親から殴られ、蹴られ、包丁で切りつけられ、傷を作り血を流す。

 それが彼の日常だった。

 顔を殴られ視線が床を向く。

 その床には所々血がこびりついている。

 すでに、固まり黒ずんでいるものもあれば、真新しい綺麗な鮮血もある。

 この状況を見れば日常的に虐待が行われていたことがわかるだろう。

 

 ( 今日はいつもより血が流れてるな……)

 

 彼はそんな事を他人事のように考えていた。

 殴られても、蹴られても、切られても何も言わない。

 彼は人としての感情が壊れていた。

 小学生の頃から少しずつエスカレートして行った両親からの虐待は彼からいとも容易く感情を奪い取ったのだ。


(今までなんで生きてきたんだろう?)


 そんな事を考えてしまうほどに彼は生に疲れ果てていた。

 今まで親に言われてきた通り生きてきた。

 言われた通り、学校の成績は常に上位を取っていたし、周りにもあまり関わらずに生きてきた。

 しかし、暴力は減るどころか日に日に激しさを増していった。

 

(何が悪かったんだろう……でも、きっと自分が悪かったんだな。早く死にたい。)


 ついにその時がやってきた。

 目を切られたと認識した時には、視界が闇に覆われていた。

 両親の哄笑を最後に意識が途切れた。



 


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





 気がつくと暗闇の中にいた。

 体を動かそうと試みるが、手足の感覚が無く動けない。

 いや、手足だけで無く身体中の感覚が麻痺しているかのように何も感じられない。

 匂いや音すらも感じられない。

 正に死後の世界を思い浮かべるような場所だった。

 

 (やっと死ねたのかな?)


「はい、ここは死後の世界です。ただしここは、正確には選択の間です。」


 誰かの声が聞こえてきた。

 女性の透き通るようなとても優しい声だ。

 人を信じることをやめた自分には何か裏がなるのでは?と疑ってしまうような優しい声音だった。


「あなたは、死んでしまったのです。そこで、あなたには異世界に転生する権利が与えられました。」


 警戒を強める自分に構わず、謎の声は唐突にその言葉を告げてきた。

「拍手、拍手、おめでとう!」などと務めて明るい雰囲気を醸し出そうとしている。


 もともと死にたいと思っていたせいだろう、唐突に告げられた'死んだ'という言葉は何故かすんなりと受け入れられた。

 何処か寂しさを含んだその声だけは疑問に感じてしまうが。


 (そっかやっぱり死んじゃったのか。他人から見たらつまらない人生だったんだろうな。まあ、地獄が終わったわけだし良かったのか。)


「そうですね。あなたの人生は他の人に比べて酷かった。心も少し壊れてしまっている。あなたは、本当に可哀想な人だった。」


 改めて他人に言われると悲しくなるな、と思いつつも、今自分の心と会話している謎の声が誰なのか、そして先ほど言っていたいせかいてんせいとは何の事か気になって仕方がない。


 生きている間には他人にあまり興味が持てなかったが、死んだことで心境にも多少の変化が生まれたのだろうか。

 それとも両親がいなくなったことで、今まで無かった余裕が生まれたためだろうか。


 ここが死後の世界であるならば、話せる相手は神様か閻魔様ぐらいだろうと思っているが、辺りが真っ暗なので確認する術がない。


「ですからあなたには、選択の余地を与えることにしました。異世界に転生するに当たって、赤ん坊から始めるか。あちらでは確か、15歳から成人のはずなのでそこから新たな人生を始めるか。どちらがいいですか?」


 通常であれば何歳から始まるか選択することは出来ないんですよ、とは謎の声の言葉だ。


 きっと自分の頭上にはクエスチョンマークが浮かんでいたことだろう。

 何を言っているのか全く分からない。 

 考えれば考えるほど疑問が湧いてくる。


 まず、死んでしまったら天国か地獄に行くのではないのか、それとも何も感じないまま消えるだけだと思っていた。 

 そのため、この場所にきて最初に死後の世界を思い浮かべていた。

 きっと普通であれば、いきなり暗闇で何も感じない場所にいればパニックになるのだろう。

 しかし、自分は暗い場所には慣れていたためパニックにならずにすんでいる。


 次に、いせかいてんせい、とは。

 いせかいてんせいとは漢字にするとどのような文字なのだろうか。

 耳で聞いただけでは言葉の意味が理解できない。


(いせかいが異世界という意味なら、そもそも異世界ってなんだよって話だよなぁ……)

 

 彼は学校の成績は優秀だった。

 しかし、(ライトノベル)等は全く、それこそ異世界転生ものは読んだことがなかったために異世界転生というとものの知識がない。


 親に生活のすべてを管理されていたため、当然自由時間など与えられていなかった。

 そのため、彼は日本に住んでいたが、オタク文化に馴染みは無かった。


「……」


「……」


 しばらくの間沈黙が場を支配した。

 目の前?にいる誰かはついに耐えきれなくなったのか


「どうかしましたか?異世界転生ですよ。あなたの人生が可哀想だったから、地球とは違う世界で人生をやり直させてあげようと言っているんですよ。」

 

 こんな事を言ってきた。

 つまり、いせかいてんせいというのは地球とは異なる世界で新たな生を授けてくれるということか。

 きっと、オタクという人種であれば興味をそそられたのだろう。

 しかし、自分に対しこの言葉に効果は薄い、いや無いの方が正しいのかもしれない。

 何故なら自分は生きることに疲れているから。

 17年という決して長いとは言えない人生の中で嫌という程地獄を味わっているために。


 そのため、人生をやり直させてあげようと言われても、唯の迷惑でしかなかった。

 むしろ、やっと掴んだ自分の平穏を奪われようとしている。

 とどのつまり、ただの嫌がらせにしか感じられなかった。


(生きるのは疲れた。そんな事しなくていいから早くゆっくりさせてくれないかなぁ。)


 これが自分の偽られざる本音だった。

 その言葉に対して謎の声は何故か焦ったように言葉をまくし立ててきた。


「な!そ、そんなこと言わないでよ。今度の世界は魔法があるのよ。魔法よ、魔法。男の子なら嬉しいでしょ!ね!ね!」

 

 魔法と言われると自分も昔テレビでみた魔法使いに憧れがあったので、興味はそそられる。

 小学生の頃、学校でクラスメイトと自分が魔法使いになったらそんな話を楽しそうにしていた光景が思い出される。

 あの頃の、虐待が無かった頃の自分は何と答えていたか今では思い出せない。

 きっと、空を飛ぶとか魔法で火を起こすとか希望に満ちた答えを出していたのだろう。

 

 魔法使いになった自分を想像してみる。

 想像の通りであれば、きっと楽しいのだろう。

 だが、それでも生に疲れていることも確かなのだ。

 何か行動を起こしても無駄だということは嫌というほど理解させられた。

 そのため、もう一度人生をやり直すという選択肢は自分には無かった。


「そ、そうだ。今度の世界には、たくさんの種族がいるのよ。ほら、男の子ならエルフとかに会って見たくない?美形の人ばかりなのよ。」


(だからなんだって話だよなぁ。そもそもエルフってなんだよ、何かの動物か?いや、人って言ってたか。黒人白人みたいなものか?)


  エルフというのが何かは分からないがきっと謎の声にとってはいいものなのだろう。

 だが、人というものは美醜だけで判断出来ない。

 顔がよくても性格が破綻している人もいるし、母のように昔は優しかったとしても心が壊れてしまった人もいる。


(もう辛い思いはしたく無いし、生きるのは面倒くさいから早く死なせてくれないか?)


「そ、そんなこと言わないで!あなたはまだ人生を楽しめていないんだから!」


 どうやら謎の声は何故か自分に死んで欲しく無いらしい。

 生前は誰も自分の生を望んでいなかったのに、死後にそんな人物が現れるとは皮肉なものだと思う。


(というか、本当に誰なんだ?何も見えないから誰だか分からないし。もう休ませてくれないかな。それともこれって夢なのか?さっきから心の中の声聞きとられてるし)


「異世界転生はもう決定事項なんです。覆りません。だから、赤ん坊と15歳どちらがいいか選んでください。あなたのためになりますから!」


 先ほど選択の間と言っていたはずなのに……やはり世界は理不尽だと思ってしまう。

 それでも選択肢が無いことは生前自分にとって当たり前だったため、転生するならどちらが良いかを考える。


(う~ん、だったらまだ15歳から始めた方がマシかな?また、変な親だっら嫌だしなぁ。そうだな、1人の方が気楽でいいな。)


「分かりました。やっぱり人は苦手なんですね。でも、きっと向こうにはあなたを必要としている人がいますよ。だから、人との出会いを大切にしてみてください。」


(はあ、もうなんでもいいから休ませてくれ。疲れたんだ。)


「そういえば、異世界転生に当たって何か欲しい者はありますか?あなたは、少し心が壊れていますが、他人の痛みも理解できるでしょう。だから、力でも巨万の富でも好きなものをあげますよ。」


 休ませてくれるどころか質問が繰り返される。

 何と理不尽が続くことか、死んでも結局自分の運命は変わらないのだろうか。


(はぁ…まあ、お金はほどほどでいいし。だったら1人で生きていけるだけの力が欲しいな。またあんな生活はいやだからなぁ……でも、目立ちたくないな。変なやつに目をつけられたらたまんないしなぁ…)


「でしたら、あなたには力を授けましょう。その代わり、しっかり生きるのです!人生を楽しんでくださいね!でないと力はあげませんからね。それでは、あなたの人生に祝福があらんことを」


 やっと終わりが来るのかと思った次の瞬間、自分の意識は再び暗闇へと落ちていった。



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