エネミーウォーカー
ソラは起きると髪をポニーテールにした。
戦うためにはツインテールでは視界が邪魔になる
クライシスを守るため。
フィアーと一緒に戦うために。
フィネロード様のために。
「クライシス、起きて?」
軽くキスをするとクライシスは微笑みながら起きた。
朝食を早めにすませ
クライシスと一緒にフィアーとフォルエナ軍の元へ向かった。
大砲部隊
魔法部隊
騎士
かなりの数の兵士が巨大な城壁の外で並んでいる。
「我々はこれより西のイリア・イロード達を迎え撃つ鵺蘭使いのイオナとアクトレシア、そしてイリア・イロードが居ると思われるが王蘭使いの者はこちらに二人居る!我らは屈しない!剣で矢の雨をかいくぐり魔法を飛ばし矢を滅し大砲で蹴散らすのだ!進軍開始!」
映画で見たのとは比べ物にならない数えきれない鎧を着た重い足音が響く
その先頭でフィアーとクライシス、ソラが目に力を込め高鳴る胸を抱いてイリア・イロード達へ向かっていた。
時を同じくしてイオナとアクトレシアもまた兵士と共に未開都市フォルエナへ向かっていた。
先に敵軍を見つけたのはイオナ達だった。
イオナ達は兵士は多くはないが鵺蘭使いしか居ない
強化された喜びを鎧に秘め
イオナ達の魔法部隊が一斉に詠唱を始める。
少し近くに紫色の光にフィアーが気付くと戦闘態勢に入った。
「フォルエナ軍騎士団前へ!詠唱の長い魔法を唱えているうちに倒すのだ!クライシス!頼む!」
「はい!フレイムネットネイル!」
騎士達を飛び越えクライシスの魔法がイオナ達を襲う
そこにイオナ達の魔法使いが防御魔法で書き消す。
「クソッ魔力が強い、、鵺蘭を強化したか、、」
「フィアー、何もわかってないねぇ快楽に溺れる事こそ女の本質。高めようとするだけでいいのさ」
イオナが笑いながら言う。
やがて両陣営の騎士達の戦いが始まった。
クライシスも魔法部隊とイオナの魔法部隊を迎え撃つが歯が立たない。
敵を倒しても味方の方が倒れる数が多い
フォルエナ軍の魔法部隊の数の少なさは誰の目にも明らかだった。
大砲部隊の攻撃は次弾装填をしているうちに数が減り発射した弾も魔法で燃え尽きた。
ソラはフィアーと騎士部隊と一緒に近距離戦闘をしていた。
皆鵺蘭使い
紫の剣の強さになんとか抗っているものの押し返すのが精一杯だった。
しかしデヴァイスシールドは殆ど重さはなく剣撃を受ければ跳ね返す
フィアーも長剣で敵を倒していた。
「鵺蘭の兵士、クソッ、パワーアップは計り知れないな、、」
大砲部隊と魔法部隊はイオナ達の魔法をかき消し僅かに戦力を削る事しかできない
強化された鵺蘭が猛威をふるっていた。
徐々にフォルエナ騎士団が押されて行くなかで
やっとクライシス達の魔法が前衛の敵に届いた。
炎で焼かれイオナ達の騎士は倒れて沢山の亡骸が吹き飛んでいく
そこへ亡骸を切り裂き吹き飛ばしながらフォルエナ軍へ突撃してくる赤髪の狂戦士がいた。
刃の周りを回転しながらチェーンソーのように意図も容易く亡骸だろうが魔法だろうが弾き返していく
「フォルエナ軍!気を付けろ!奴はアクトレシアだ!」
あっという間に沢山いたフォルエナ騎士団は蹂躙されてしまった。
長剣が破壊されてしまうが故にフィアーにも手だてがない。
「ソラ!剣を縦に振ってクナイを発射しろ!一点集中だ!」
突進してくるアストレシアから走りながら逃げクナイを出そうとするも間に合わない!
「ワタシにお前の王蘭食わせろ!」
笑いながらアクトレシアがソースソーで斬りかかってくる
ソートソードが耐えられるのかわからない
私は無意識にデヴァイスシールドで防御した。
私は吹き飛びながらアストレシアも吹き飛んでいくのを見ていた。
「エレガドリー!撤退しましょう!もうフォルエナ軍には戦う力がありません!」
「クライシスに任せてください!主霊を呼び出して最後のノットファンドフレイムを使います!」
クライシスから猫の霊が出てくる
猫の霊はだんだんと大きくなり燃え上がった。
やがてフォルエナ軍とイオナ達の間に
大きな炎の壁が出来た。
イオナが壁越しに笑いながらエレガドリーに話しかける
「ずいぶん死んだねぇ、大丈夫ちゃんと後でみんな仲良くさせてあげるから
お前らアストレシアを運べ
イリア様の屋敷に帰るよ」
燃え盛る壁の向こうで敵が去っていったのがわかった。
「なんとか、、退いてくれた、、ん?」
「クライシス!」
クライシスを見ると座りこんでいた。
「大丈夫?クライシス!」
「お姉さま早くキスをしてください。。。」
ソラはクライシスを抱き締めて両方のほっぺたをそっと持ち舌で唇をこじ開けるとクライシスの甘い味が広がった。
震える腰を手で支えひたすらクライシスの舌を吸い舐めあげ上唇を優しく唇で挟む
ソラの舌の熱さに溶けそうになりながらクライシスは愛とは何かわかったような気がしていた。
残ったフォルエナ軍は悲惨な状況だった。
騎士部隊は半分にまで減り大砲部隊こそ七割は生き残っていたものの鵺蘭には歯が立たない事を誰もが痛感していた。
エレガドリー主導の元フォルエナへ着いたのは朝になってからだった。
傷付いた兵士たちの体力には何度も休息が必要だった。
「各部隊動ける者は手当てに向かえ!救護班と連携しできるだけ負傷者を助けろ」
エレガドリーは一人惨劇を悔いていた。
己の作戦の甘さに
そして強化された鵺蘭使いの強さに
次の戦いまでの手立てを考える
フィネロードに報告に向かう足は自然と遅くなっていた。
「フィネロード様、我が軍は負けました。。。鵺蘭が強化されていたのです。
それにアクトレシアまでもが現れ多くの騎士部隊が犠牲になりました。完全に私の作戦ミスです。なんとかクライシスの結界により敵の進軍は抑えることができましたが。。。」
「フィアー、今は傷付いた者の手当てが優先です。あなたも傷付いていますクライシスさんの結界が保たれているうちは安全ですクライシスさんとソラさんを私の元へ呼んだら下がりなさい少し休むのです。」
「ありがとうございます、失礼致します」
フィアーに呼ばれたソラとクライシスがフィネロードの部屋の扉を開けた。
「クライシスさん、フォルエナ軍を守っていただきありがとうございますそしてソラさんもご無事でなによりです。お二人は向こう側の世界へ一度戻って頂けますか?王蘭使いを探してきて頂きたいのです。このままではこの国は滅びるでしょう」
憂いを帯びた目でフィネロードはそう言った。
「フィネロード様わかりました、一人だけ可能性がある人間を知っています、私がこの世界にくるきっかけになったスムーズデバイスを教えてくれた人です王蘭を使えるかもしれません」
「ク、クライシスは戻れません!えっと、戻り方がわからなくて、」
「クライシスも私と同じ世界の人間よね?何故戻り方がわからないの?バッテリーが切れたらじきに戻るわよ、私ももうすぐ戻るわ」
「えっと、そう!私が戻ったら結界が保てなくなるので無理です!」
クライシスの言動におかしさを感じたソラだが結界が消えたら困る
その時向こう側の世界で時間が進んでもこちら側の世界の時間は進まない事に気づく余裕は既にソラには残っていなかった。
「私はこの世界の王蘭を探します!フィネロード様が王蘭を持っているようにまだこちらの世界にも王蘭はあるはずです!選ばれた者の元に王蘭は現れるのですから!私のスマホのカメラアプリで念写で探します!」
「クライシスさん確かにこのフォルエナにはあなた達の世界の物ではないとわからないものがあるでしょう。念写をお願いいたします。ではソラさんもお願いいたしますお気をつけて」
フィネロードの声がだんだん遠くなりソラはもとの世界へ戻った。