万雷の庭
主人公
時和・空
長い髪の女子中学三年生
少し大人の匂いを求めてグルチャをしていた時にアクセス負荷を少なくできるスムーズデバイスなる物を手に入れるがMODドラゴンのブレスにより異世界へ召喚される
その日、私は、高校生のふりをしてグループチャットをしていた。
今時、ネットでならいくらでも中学生というのをごまかせる。
少し大人な匂いを求めて、毎日グルチャに入り浸る生活。
何人か友達はできたけどネットの友達、顔だって見たことない。
最近アクセス量が多過ぎで全然まともに見れないけど、スムーズデバイスっていうポケットWi-Fiが良いらしいと友達が書いていた。
でもそれを使うには専用アプリを課金でダウンロードしなきゃいけない。。。
お母さんごめん!4800円は大金だけど、これは月のアクセス量を減らすためだから許して!
これをダウンロードすれば、アクセス量追加の悪夢から出られるから。。。と言い訳を頭の中で考える。
どこにでもあるノートパソコンの前で、慣れない手つきでスムーズデバイスを眺める。
「えっと、スムーズデバイスを挿入して」
課金しますか?
はい
インストール...
インストール...
インストール完了
スムーズデバイス専用のアプリは、これだけに使うのに薔薇やドレスが書いてあって豪華だった。
しかしここにきて問題が起きた。
「王蘭の購入!?」
聞いてない!更に課金って!
ここまで来てやっと気付いた。
最悪だ。
詐欺だわこれ。
新型機種だから、新しいやり方があるって考えを利用した詐欺だ!
「サイアク!ここまでの道のりはなんだったの?」
「ていうか王蘭てなに?中国語?
確かにマイナーなポケットWi-Fiならどこの国の物かわからない。。。」
「あー本当サイアク!スムーズデバイスだって二万近くしてアプリに4800円課金それに加えてこの王蘭の課金!?とりあえずプロフィール設定するだけならお金はとられない。
はず。ここまで来たんだ、やるしかない!」
あなたの性別を選んでください
女性
あなたの年齢を選んでください
15歳
あなたの名前を記入してください
時和空
「なにこれ!?めっちゃ画面光ってる!?
あれ、、、うわっ!眩しい!!!」
雷の音が聞こえる。雨が降っておりずぶ濡れだ。
黄色の花がソラを取り囲んでいた。
目の前には灰色の壁が天高くそびえ立っていた。
「ここ庭だ!どこかの!」
花のつぼみがあたり一面にある。
凄く手入れが行き届いているけれど、何故かどれも弱々しく
咲いている花は一つも見当たらなかった。
「黄色くてなんだろう蘭・・・かな?
つぼみじゃわからないけど」
近くで足音が聞こえる。
鈍くて重い。。。
それに合わせるかのように鉄がガチャガチャ言う音が鳴る。。。
たぶん兵隊だ。
その時耳を聞いた事のない轟音がつんざく。
「大砲部隊前へ!
魔法部隊詠唱開始
30秒後に一斉射ッ!」
何がなんだかわからない。
私は音のする方へ歩いていく。
そこで女性の声で呼び止められた。
「キサマなんだその格好は!
盾だけ装備してネグリジェでどうやってこの国を守るつもりだ!」
言われて気付いた。
雨で濡れただでさえ薄い布が透けている。
しかも左手はレースのアームウォーマーみたいなお洒落な鎧に包まれていて私のタブレットが白い厚みのある少し大きくなった盾のようになって腕に完全にフィットして外れそうにない。
不思議と重さは感じない。
いやだ!なにこれ!ていうかこの格好恥ずかしい。
女騎士が庭に寝そべった私を上から見ている。
キリっとした金の目に金色の長髪鎧からでもわかる豊かな胸西洋の女性らしい女性だ。
「貴様フォルエナ騎士団として、ん?
それはデヴァイスシールド。。。?」
「撃ち方やめ!
予行演習を終了する
各部隊武器を整備し各部隊長は点呼をとるように」
「お前名はなんだ?」
「私はソラ、トキワソラ(時和空)です」
「私はこの国の騎士団長フィアー・エレガドリーだ。
お前はこの世界の者ではないな?」
世界と言われてもわからない。。。
夢、、だったらあんな轟音聞かないし。。。
「た、たぶん違うと思います」
「何故デバイスシールドを持っているんだ?」
「この盾なんなんですか?」
「かつてこの世界が滅ぶ前に使われてた伝説の武器だ。
おそらく、だが。
ただし 鵺蘭鵺蘭使いの敵であるという事が明確ではないうちは覚悟しろ」
「ぬえらん?なんですか?この世界の事を何も知りません!敵でもないです!現にここがどこかもわかりません!」
気がつくとここに居たなんて信じてもらえるはずがない。
私は必死に説明しながら状況を飲み込もうとする。
「鵺蘭とは敵国ヴァトキアのコードドラゴンがかつて作った王蘭の紛い物だ
ここは未開都市フォルエナ国
自由の国と呼ばれている王嬢王嬢様が治める国だ」
「王嬢様?」
「王嬢とはこの世界の女王フィネロード様の事だ」
そう聞き取れるかギリギリで盾が光だした。
「あれ?私のタブレットが光ってる」
家で見たような、、また光に包まれていく。
目を開けると自分の部屋だった。
「え!?ここは...うち?ここ家だよね?
良かった、全部夢だったんだ
こんなにリアルな夢初めて」
フィアー・エレガドリー。。。妙に焼き付く綺麗な女性だった。
刺すような鋭い目なのにどこか甘いとろんとした顔をしていた。
またこの夢見れないかなぁなんて考えながら寝転びタブレットをふと見たら、電池が切れていた。
充電器を差し電源を入れると、、、
「あれ?王蘭!
王蘭手に入ってる!やった
記憶が曖昧だけどプロフィール入れて手にはいるなんて楽で良かった!
さっそく秘密のチャット!」
と思ったら
「えー最悪誰もグルチャ既読つけてない」
せっかく私が無限アクセス(たぶん)できるようになったのに、仕方なく買ったばかりのスムーズデバイスのアプリを見る。
「そういえばあの夢を見れたのもこれのお陰だわ
ファンシー(?)な世界に行けたんだから
これで沢山アクセスできるなら言うことなし!」
再びあの世界に行ったのはタブレットの充電が終わった後だった。
目を開けるとあの女性騎士が衛兵に命令して羽交い締めにされる。
光の薄い暗い牢屋に連れていかれ鎖に繋がれた。
目隠しをされいきなり尋問されながら鞭を何回も打たれる。
自分の背中の痛みだけは鮮明で暴力なんてふるわれた事のない私は痛みと恐怖で泣き出した。
「嘘は許さない。何故この国に入れた!なぜ伝説の武器を持っている!」
冷たい指で傷を撫でられ変な吐息がでる。
苦しいのに欲してしまう。
頭がおかしくなりそうだった。
どうもスムーズデバイスを使うとこっちの世界に来てしまうみたいだ。
身体をよじらせつつ泣いている私に女騎士団長の声が聞こえた。
「鵺蘭の新しい武器か?答えろ!」
「こ、この盾が欲しいならあげます!気付いたらあの庭に居たんです本当です」
ぼんやりと左手に白い厚みのある盾の部分だけぬくもりを感じる。
「クソッ謎が多すぎる
ただでさえ謎だらけの古代武器が不完全ながらこんな弱い少女に装備されているのかすらわからない不完全な姿はやはり鵺蘭の可能性も。。。」
「そうか!貴様は向こう側の世界で王蘭を手にいれたんだな!
向こう側の人間なら王蘭を変化させ伝説の武器を発現できるか
しかしでは何故このような不完全な状態なのだ、、、」
「王蘭私アプリで手にいれました!」
「いや向こう側の世界の人間はそう簡単には王蘭は手にいれる事はできない
それにデータでは意味がない
かつての大戦でドラゴンの魔法により我々にとっては王蘭はこの世界に咲く花をかたどったただの球状の硬貨にしかならない存在になってしまったのだ
だが向こう側の世界の王蘭なら伝説の武器を具現化する力をもつ
逆に我々にとっては伝説の武器はロストテクノロジーもいいところ
存在すら危ぶまれていた代物だ
全て500年前の書物の通りならだが」
「いいだろう敵では無いことはわかった
まずはこの世界について詳しく教えよう」
目隠しがするりとはずされやっと明るい部屋へ出られた。
私は硬い大理石に倒れこむ。
よかった、悪者じゃないことはわかったみたい。
嫌がおうにも紅く火照った頬と涙でぐちゃぐちゃの目を見つめられる。
「その白い目に髪は!
書物の通り伝説の武器の所有者は伝説の武器と同じ光を発するか」
身体の傷が疼く。
何故かお腹の奥にも響いて不思議な高揚感に包まれる。
「衛兵この者を部屋へ運べ
伝説の通りならば傷はすぐに治る
ドレスを着せ食事をさせたのち
私の部屋へ連れてこい」
部下と思われる鎧を着た女性の騎士がやってきた。
問題はどこで王蘭を探せば良いかだな。。。
騎士団長の言った通り傷はすぐに癒えた。
まだ動悸はするけどご飯もまるでお姫様が食べるみたいな料理、それにこのドレス。
あこがれのお姫様とは言いがたいが傷は消えたし痛みより疼くのが気になった。
「さっきは意識が朦朧としていたけど、そういえば目が白いってどんな意味だろう」
恐る恐るベッドのそばの鏡を見て驚いた。
髪は部分的に銀髪になり私の片目はカラコンをしたようにふちは黒く白いのだ。
しかし時々普通の黒目に戻る。
一瞬本当にカラコンなんじゃないかと思ったが私は目は悪くないからわかった。
異物感もないし黒目だけは大きいとよく言われるのだ。
まるで普段の私とは違う自分に狼狽えつつ騎士団長の部屋へ促され入る。
「ソラ、君には戦力になってもらう
そのためには向こう側の世界で王蘭を見つけてこい」
凛とした目で女騎士団長にそう言われた。
何もわからない世界で一人の騎士が誕生した瞬間だった。
フィアー・エレガドリー
自由の国と呼ばれるフォルエナ国のフォルエナ騎士団長
大人の色気を持つ騎士らしい鋭い目をしているが長い女性だけの生活に独特の甘い顔をするようになった
武器は長剣とイバラのような鞭
尋問に鞭を使う事もある