プロローグ いつかのために
プロローグ 逃走者
ルガ王国-某街
「はぁ……はぁ……」
荒い呼吸をしながら少女は街を駆け抜ける。
どれだけ走っただろうか、そんなことを考える余裕も無い。
見えた角を曲がってはまた角を曲がり、たまに直線に進む。
無計画な逃走だが逃走経路を考えていたら考えている間に捕らえられるかも知れない。
心の中で考えつつも逃げることだけに集中しようと心掛ける。
「そっちに行ったぞー!」
少女を追う者達、ルガ王国の騎士団だ。
普段は訓練を行うつもりの彼らだが最近の一週間は違う。
逃走を続けている少女、彼女は知ってはいけないルガ王国の秘密を知ってしまったために
国から指名手配され騎士団に追われているのだ。
ひたすら走り続けるのだが、足が疲労してくるため隠れ場所も探す。
_ここだったらある程度休憩できるかな。
見つけた場所は家と家の間にある少し広めの空間だ。
_少しだけ休憩してから次の街へ逃げよう。
_ずっとこの街にいたら住人に迷惑をかけちゃうかもしれないしね。
_………でもそのあとはまた逃げ続けるだけだよね。
今後の行動を考えながら休憩していると背後から声がした。
「はっはー、やっと見つけた〜。」
見た目は騎士のような格好をしているためおそらくルガ王国の騎士団だと考えられる。
_しまった…!
少女の全身に警鐘を響かせる。
騎士はこちらへ近づいてきた。
「そろそろ大人しく捕まってくれないかなー?俺たちも疲れてくるんだよ。」
そう言うと騎士はこちらへ手招きをした。
「大人しく捕まってくれるんならこっちも強引に捕まえようとはしないからさ、こっちに来てよ。」
無言のまま、少女はその命令に従うように大人しく近づいていった。
そして少女は騎士の目の前に来て捕まえられ_ようとした。
少女は騎士の背後へ一瞬で回り込み騎士の首筋に鋭い一撃を与えた。
「グハッ!」
騎士はその場へうつ伏せに倒れ込んだ。
その声を聞いた騎士団がこちらへ駆けつけてくる足音が聞こえてくる。
見つかりそうだと判断した少女は騎士がたまたま持っていた布を奪い取り顔を覆い隠した。
一度周囲を見渡し、誰もこの状況を見ていないと確認できた少女は、その場から逃げ出した。
「なかなかやるな……俺の見込み通り、か。」
だが、一連の様子を見ていた者が一人いた。
少女が先程までいた家の屋根の上から行動を観察している。
するとしたから声が聞こえた。
「シュラ副騎士団長!少女を逃してしまいました!」
「そうか、分かった。あいつはおそらく次の街、フーソリ街へ向かったはずだ。そのまま追い続けろ!」
「はい!分かりました!」
一人の騎士_シュラが騎士に伝え終えるとシュラもフーソリ街へ向かおうと準備を始めた。
_見た感じはガキだがなかなかやるもんだな。
_少なくとも俺の計画にはあいつは必要不可欠だしな。
_……そろそろ動き出さないといけないかな。
少女の背中を見送りながら次なる街を目指すシュラ。
そして少女は自分が屋根の上から見られていることに気づかず、ただ逃げ続けた。
どこまでもどこまでも、いつか晴れて、自分の無罪が認められるまで。