表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

星花女子プロジェクト番外編・短編

ふれるぬくもり。

作者: しっちぃ

10月3日は有里紗ちゃんのお誕生日だから書いてみました

 カレンダーの日付を見て、息を呑む。前から準備して渡しそびれてたけど、

 ポケットの中にあるラッピングを軽く見つめて、それからおずおずと声を掛ける。


「ねえ、有里紗ちゃん」

「何ですか、志乃先輩」


 ちょっとツンとした声で、こっちを振り向く。そういえば、有里紗ちゃんは明日が試合なんだっけ。そういえば、今日は軽めの調整だって、私より早く戻ってきてたな。うちは昨日だったからすっかり忘れかけてた。


「お誕生日おめでと、有里紗ちゃん!」

「あ、……ありがとうございます、志乃先輩っ」


 慌てたように姿勢を直して、土下座でもしそうなくらいに頭を下げる。そういうとこは、相変わらず真面目だなぁ。そんなに固くならなくたっていいのに。試合前なんだから、ピリピリしてるのもわかるのに。

 その目の前にうちも座って、目線の高さを同じくらいにする。有里紗ちゃんのほうがちょっと背が高いから、完全には合わないけど。


「そんなに緊張しないで、ガッチガチになっちゃうと、上手く足動かないから」

「わかってますよ、それくらい……、でも、志乃先輩にきつく当たっちゃったから」

「いいよ、それくらい。それよりも……、渡したいものあるんだ」


 ようやく、話を切り出せる。プレゼントにしてはちっちゃすぎるものだから、そうは言えなかったけど。

 

「なんですか?」

「これ、開けてみて? ちっちゃいのでごめんね?」


 きれいにラッピングされたちんまりとした袋を、有里紗ちゃんに手渡す。

 その袋を開けて出てくるはずのものは、明るいオレンジのシュシュ。


「これ、試合のとき付けてほしいなって」

「いいですけど、……どうしてですか?」


 ただのわがままだけど、ありのままの思った気持ちを伝える。複雑に言おうとしてもできないし、ただ真っ直ぐ走ることしかできないから。


「そのね、……有里紗ちゃん、大会のときは髪結んでるでしょ? それつけてれば、どこにいるかわかるから、……有里紗ちゃん、すっごくキレイだから、ずっと見てたいの……、こんなのしかあげられなくて、ごめんね?」

「そんな、嬉しいですよ、あたし……っ」


 顔の奥、ずっと熱くなる。有里紗ちゃんのことを好きになってから、そんなことばっかりだ。

 俯いて、上目遣いだけで前を見ると、真っ赤になった、きれいな顔。普段の明るいムードメーカーな様子からは、想像できないくらいに。

 体が、有里紗ちゃんを軽く抱きしめていた。


「や、志乃センパイ……っ」

「ただ、ぎゅってしただけだよ?」

「でも、なんか恥ずかしくて……っ」


 よかった、いつもの有里紗ちゃんだ。私にしか見せてくれないようなとこ、いっぱい見つけて。ちょっと、からかってみたくなる。


「もっとすごいプレゼント、してあげよっか?」

「そんな、あたし明日試合が……っ」

「大丈夫、ちゅーするだけだから」


 体が固まった隙をついて、そのくちびるに、うちのそれを乗せる。くちびる同士の間でなったちゅって音も、有里紗ちゃんが耳まで真っ赤になって、頭から湯気が出そうになってるのも、いつもと同じ。


「明日は、いっぱい頑張ってね、有里紗ちゃんのお誕生日と、二人で区域大会出る記念で、お菓子パーティーしよ?」

「もう……、言われなくても分かってますよ、志乃センパイ」


 有里紗ちゃんの手が、背中に触れる。普段だと、有里紗ちゃんは恥ずかしがってなんにもできないはずなのに。

 ……でも、そうやって近づいてくれるのが、嬉しくないわけがない。

 大好きだよ、有里紗ちゃん。

 進む道は違うかもしれないけど……、それでも、こうやって二人で歩いていけたらいいな。

ギリギリ間に合ったマンですね。よかったよかった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ