魔法検査
「ハァ…」
こんなに走ったのは初めてだろうと思うほど全力疾走した。実際そんなに距離は走っていなかったのだが、部活が面倒くさくて中学に入ってから2年間ずっと帰宅部を貫き通してきた俺にはあまりにもキツかった。
一息つくために周りを見回して見ると目に入るのは木のみ
「なるほど…迷った」
と絶望していると、遠くからとてもいい匂いがしてきた。
学校が終わり帰る途中で、ご飯も何も食べていなかった俺にはとても嬉しい匂いだった。匂いのする方に向かうと、そこにはとても小さな村があった。喉も乾き今にも倒れそうだったのでとりあえず、すぐ近くの青い屋根の家の扉をノックした。
すると、がチャリという音とともに中からとても美人な女性が出てきた。しかしそんな事を気にしていられるわけもなく
「すいません…み、水とご飯を貰えませんか?」
普通こんな事を言う人何ておかしいと思い、スルーされてしまうかと思ったが、そんな俺の考えとは裏腹に、笑顔で
「問題ないですよ?上がってください」
と言ってくれた。
その後ソファに座らせて貰い水とご飯を貰った後に、不思議そうな目で俺の顔を見つめてきた。
こうまじまじと見られると恥ずかしいので
「何か付いてますか?」
と聞いてみたら
「いえ、付いているというかむしろ足りてないと言うか…」
不思議そうなかおで見返してみると
「何でそんなにも耳が小さいのですか?」
そう言われて、その女性の耳を見てみると確かに俺の耳より少し大きくとても尖っていた。
「もしかして、エルフでは無いのですか?」
俺から言わせて見れば逆に「あなた達がエルフなのですか?」と聞きたくなるが、その気持ちをぐっと抑えて
「はい、人間ですよ?」
と言った。するととても驚いた顔をして
「すごいですね!人間族と言えば少し前に獣人族によって大虐殺をされたじゃないですか。まさか生き残りがいたなんて、あ…ごめんなさい!私だけが喋っちゃって、でも本当に珍しいですね!」
全く何を言っているのか分からないという顔をすると
「もしかしてその時他の場所に行っていたのですか?確かに行方不明な人が4人ほど居たと聞いたことがありますが。」
…確かに何かおかしい、さっきまでコンクリートの道路や壁だらけだったはずなのに、目を開けてから1度もコンクリートや信号、車すら見ていない。一つ質問をしてみた
「ここはどこですか?」
俺の記憶が正しければここは○○県○○市の○○区の辺りのはずだ。
「ここですか?ここはセルジオーネ自治区ですよ?」
さも当然かのように聞いたことも無いような場所を口にする彼女
やはりそうだこれはよくラノベ、ゲーム、マンガ、アニメにある異世界転移と言うやつだ!となるとやはり一つ気になってしまうものがある
「魔法って使えるんですか?」
期待を込めた目で彼女を見つめる。すると何を言っているのでしょうとでも言っているような口ぶりで
「当然使えますよ?と言うか幼児でも検査してもらって適正さえ教えてもらえれば1時間くらいである程度使えるようになりますよ?」
そう言われると、今すぐにでも手に入れたい!
「じゃあ、その適正の検査ってどこでしてもらえるんですか?」
すると丁度いいといいという感じに手を合わせ
「それなら、私の夫が検査技師なので帰ってくるまで待ってみてはどうでしょうか?」
そりゃあ周りに知ってる人もいないしここに居ていいのなら居たいのだけど
「迷惑でありませんか?」
するととんでもないと言わんばかりに
「人間族ですよ!こんな機会滅多にありません。どうぞいて下さい!」
それからお茶を頂いたりして1時間程度待ったら、ガチャリという音と共に大きい人が入ってきた
「ただいまー…な、な、何なんだ!?その男は?」
声は女性のように聞こえたが、声の主の方を向いて見るとそこにはがたいのいい…って言うかさっき全力で逃げた男が居た
「お前…俺をコケにするに飽き足らずまさか俺の女にまで手を出すとは…死で償うのみ!」
スラァ、という音とともに腰に携えてある剣を抜いた、そのままビョゥッ、という音を出しながら剣が振られた。動揺していたのかその剣は俺に当たること無く足元に大きな穴を空けて刺さっていた。そして二激目を繰り出そうとした瞬間
「落ち着きなさい!」
その声とともに男の手足に木が絡みついていた。当然それは俺が放ったものなどでは無く、この男の奥さん…つまりさっきの女性が放ったものだった。そのまま男に近づいて
「ボソボソ…ボソボソボソ」
何を言っているのかよく聞こえなかったが、その後男の顔から血の気が引いたように見えた。
「さぁ、彼の魔法の検査をして上げてください」
まるで何事もかなったかのようににこやかな笑顔でそう告げた
「はい!やらせて頂けて光栄です!」
人が変わったように接してくる男に戸惑いながらも彼の指示に従った
10分ほど待っただろうか、さっきまでゴチャゴチャやっていた男が急に立ち上がり驚いた顔でこっちを見てこう告げた
「お前の魔法は…オリジナルスキルだ」