第五話 俺、大地に立つ
俺は元騎士である父グランと、元貴族である母クレアの間に生まれ、クールと言う名前を授かり早1年の時が流れた。 騎士である父が貴族である母との結婚の際に、家を勘当されてもよいなら結婚してもよいと言う事で結婚した為、父も騎士を辞め、今では小さな村で農民生活を送っていた。 つまり家の財政は普通、いや普通よりも貧乏な家庭だが、この村全体がそういった感じの自給自足生活をしている村なので、貧しいと感じている様子は一切なかった。
それよりもたった今俺は人としての一世一代イベントを巻き起こし中であった。
両手を床に付いた状態で足に力を入れ、何度も両手が床から浮いては付くと言う状態を繰り返していた。
「クール、がんばれ」
「クールちゃん、あぁもう少し」
「だばぁばあぁばあぁ!(うおおおぉお、燃えろや俺の究極魂!)」
俺は足に全身全霊の力を込めると、ゆっくりと床から手が離れると、足を小鹿のようにプルつかせながら、仁王立ちを決め吠える。
「だっしゃあぁ! 父ちゃん、母ちゃん、俺やったぜ。 自分コングラッチレーションだぜ。 今、どんな気分ですか? 最高です! 自分で自分を褒めてあげたいです」
「立った、クールが立った! 痛っ」
「きゃああぁ、立ったわぁ」
父が興奮する横で、母はより興奮したようで天に向かって振り上げた拳が父の顎にクリーンヒットしていた。
一部始終を見ていた俺は父に心の中で合掌する。
そして、俺は思わず興奮して言葉を発してしまったが、両親がそれに関しては特に驚いた様子を見せないので、これ以降は言葉を普通に使おうと決め、早速歩行訓練を開始しものの数分で歩行技術をマスターして見せた。
「ふぅぅ、じゃあ歩けるようになったし、ちょっくら外の空気でも吸いに散歩してくるわ」
「そうか、歩けるようになったか。 ちょっと早い気もするが行ってらっしゃい」
「うふふ、よちよち歩いて外に行くなんて元気な子ね」
そう言って俺は家の扉を押し開け外へと出かけたが、数分後お宅の子が外で1人で歩いていると、家に強制送還され両親はこっぴどく村の人に叱られてしまったので、俺は申し訳ない気持ちになり、しばらく外へ行くのは控える事にした。