第十四話 エリクシールより危険なもの
彼これ俺はこうして、計7000本目の草を試食していた。
「くそっ、またハズレか。 俺じゃなかったら命どんだけ失ってんだよ。 そろそろ出てきてもいいだろ。 牛の気分です、もはや牛になった気分です」
「師匠、あと3000本この中に当たりはきっとありますから、さぁもう少しなのです」
あの後、泣き止んだルシールは急に俺に敬意を示し、俺の事を師匠と呼ぶようになった。 俺はルシールに気のない返事をして、ラストスパートだと気合を入れなおし、残りの生えている草をかじり始めると、何か遠くから虫の羽音が聞こえる気がしたのでルシールに聞いて見る。
――――――――ゥン
「なぁ虫の羽音みたいなの聞こえてこないか?」
「気のせいですよ、さぁもう少し頑張りましょう」
ルシールにそう言われ、再び草を食べ始めるもやはり音はこちらに近付いてきている気がする。
――ブ――――ブゥン
「やっぱり聞こえるって、ルシールちゃんと聞いて見ろって」
「何を言ってるです、この辺に生息する虫なんてそんなに気にする必要ないです。 気にしないといけない虫は1匹だけなのです」
――ブブゥ―――ブブゥン
やはり、気のせいなんかじゃない。 音は確実にこっちに向かってきている。 と言うよりもう俺の視界には大量の虫が映っている。
「あのぉルシールさん? その危ない虫って、まさかとは思うけど赤と黒のシマシマ模様だったりしない?」
「そうなのです、この辺には珍しい危険度ランクAの虫『シマシマビートル』だけには気を付けないといけないのです。 何といっても、その虫は肉食系なので集団で迫られたら骨も残らないのです」
力説するルシールに見えるように俺はゆっくりと後指を指し、穏やかな口調で告げる。
「ルシール、あれはシマシマビートルじゃないかな?」
「んなわけないじゃないですか? あれは滅多な事ではでませ…………あれ? 目がおかしいかな、師匠逃げましょう!」
ついさっきまで落ち着いていたルシールとは思えないほど、慌てふためき逃げようと言い出すが、この距離では絶対に逃げる事は出来ないだろうと俺は思い、ルシールの前に立った。