第十二話 エリクシールがなんぼのもんじゃ
俺はさっそくエリクシールが売っていると言うお店に向かい店主に聞いてみた。
「おい、店主エリクシールを出してくれ」
「お客様、エリクシールをお買い求めでしょうか? 失礼ですが、エリクシールは希少価値が高い故、現金払いのみとなっており、それまでエリクシールをお見せする事はできないのです」
「ふーん、結構ケチだな。 値段はいくらなの?」
「1000万ジェニーです」
「はっはっは、高すぎるね。 俺は生憎、今手持ちで1万ジェニーしかない。 これで売ってくれ」
それまでにこやかに対応していた店主の顔がみるみる内に鬼のような形相へと変貌していく。
「冷やかしなら帰んな!」
俺は少女の手を引いて急いで、店を出て噴水のある広場まで走った。
「ったく切れやすい奴だな」
「当たり前なのです。 エリクシールは別名『生死草』と呼ばれていて、見た目は全く同じなのですが摂取すると死に至る毒草のそばにエリクシール草が生えているのです」
俺は成程と手を叩き、納得する。
「それで生死――ね、でも生死の2択なら家畜にでも食べさせれば簡単に採取できそうだが」
少女は目を瞑り、小さく首を横に振り答える。
「――10000分の1なのです」
「えっ?」
俺が思わず疑問形で返すと、少女は俺に理解できるよう言い直す。
「エリクシールが手に入る確率は10000分の1なのです」
「それは凄い確率だ、ならどうやってエリクシールは製造されているんだ?」
「それは、あなたの言ったように家畜や奴隷を使って採取するのですが、コストも莫大にかかるです。 だから、エリクシールはお金持ちの人達が採取するです。 金持ちが更に儲けたいと言う理由とかかるコストによって高価な物となっているです」
俺は話を聞き、口角を吊り上げると少女は馬鹿にされたように感じたようで地団太を踏みながら怒る。
「何でこんな絶望的状況で笑っていられるですか?」
「その中に絶対あるんだろ、エリクシール? だったら、簡単に取れると思うぜ。 エリクシールの草が生えている所、案内してくれよ。 ってか俺達まだ自己紹介してなかったな。 俺はクール、お前の名前はなんて言うんだ?」
少女は案内する事を迷っていたようだが、やがて意を決して案内する事に決めてくれたようだ。 少女は俺の方へと振り返り名前を告げる。
「私はルシールなのです。 私に着いてくるです」
「案内頼むぜ、嫁ちゃん」
ルシールは振り返り、キッと睨むも再度振り返りこう告げる。
「もし、本当にあなたの言う通りエリクシールを採取出来たのなら、あなたのものでも何でもなってやるです」
「その言葉、絶対忘れるなよ」
俺はその言葉を聞くと、もはや笑顔を消す事など出来るはずもなかった。