第十話 夢のお告げ
クールはとうとう15歳を過ぎた。 それまでどのように生きてきたのかというと言うと、この通りである。
「ミーナちゃーーん、今日もお尻がキュートだねぇ。 撫でちゃおうかなぁ。 リーゼちゃんのその豊満な胸もはや感服いたします」
「いやん、クール君てばえっちねぇ」
「もう、クール君ってばそうやって女の子一日中、声かけまくってるでしょ」
常日頃から村の女性を口説いてはいちゃつき、とっかえひっかえ、まさに至高の生活を送っていた。
「あー今日も楽しかったぁ。 明日は誰とおしゃべりしようかなぁ。 寝ながら考えよーっと」
毎日、朝起きてどの子を誘いに行こうかと朝から楽しくて仕方がなかった為、当初の目的などすっかり忘れてしまい今日もぐっすり気持ちの良い眠りについていた。 当の本人とは反対に両親はとても心配していた。
「クールは寝たのか?」
「えぇ、眠ったわ。 今日はノワールさんの所が家に押しかけて来て、当然家の娘を貰ってくれるんだろうなと釘を刺しに来たわ」
そんな呑気なクールとは裏腹に父である俺は思わず溜息を吐く。
「クレア、クールにそれとなく誰が本命なのか聞いてくれたか?」
「えぇ、聞きましたよ。 本命は誰なの?って。 そしたら何て答えたと思います?」
クレアは直球で聞いたんだなと思いつつ、その口調からして良い答えは全くもって想像できず俺は思わず唾を呑む。 そして、聞く心の準備が出来たと小さく頷いた。
「誰かが2番になるなんてあり得ないよ――ですって」
「裏山、けしからん! ……いや、バッカモン」
俺はつい男の本音が出てしまい、クレアに睨まれたので言い直したが最後の方は声が小さくどもってしまった。
「はぁ、クールはあなたの血を引いたのね。 一夫多妻制とは言っても……やっぱり村の子全員ってのはいくらなんでもね」
「はは、俺はそんなに息子嫁がいたら覚えられる自身がないよ」
両親の心配など置き去りにするかのように、夜は更けこんでいく。
~~クールの夢の中~~
俺は真っ白な花が一面中咲いている場所でミーナちゃんと追いかけっこをしていた。
「うふふ、待て待て―」
「相変わらず、君の頭の中はお花畑なのだな」
ミーナちゃんの幻影はボンっと煙を立てて消えると、代わりに顔の見知った女性が現れた。
久しぶりに聞いたその声に俺は驚き、思わず感嘆の声を漏らす。
「神様! 久しぶりだね? 一体どうしたんだい? 俺の女になる気になったのかい?」
「――失くすよ?」
その言葉を聞いた瞬間、俺は昔やりとりした会話が瞬時に記憶の倉庫から蘇り、久しぶりのジャンピングスライディング土下座を披露して許しを乞う。
「すみませんでした、調子に乗り過ぎました! ここ、最近村の女性陣を全制覇したので、てっきりエクストラボーナスに入ったものとばかり……」
「何がエクストラボーナスだ、君の人生のラインに私の乗せるでない。 とは言え、クライティアの世界を堪能していたのであれば何よりだ。 それより、君に次のミッションを告げる。 と言うよりも前回説明したが話聞いていなかっただろう? だから、君には段階的にミッションを告げる事にする。 まずは火の勇者の素質を持つ者を探し、同行のスカウトをするのだ。 やり方は問わない、以上だ」
俺は神から次なるミッションを聞き、元々堕神を倒す事がここに来た目的だった事を思い出し、無言で頷いた。
すると、神は微笑み夢から現実へと引き戻される間、最後の神の声を聞く。
「勇者のいる場所は、自分自身に聞けば分かるだろう。 力をうまく使いなさい――」
そこで、俺は目を覚ました。
「――力ね。 俺ってそういえば堕神を倒すってミッションがあったの忘れてた」