プロローグ
クールは堕神と対峙していた。 堕神はクールと比べて何十倍と言う背丈があり、理性はなくただ暴れ回るだけの巨体であった。
クールは堕神の背中まで跳躍し、剣を勢い良く振り落とし片翼を斬り落とす。 バランスが崩れ、少し傾いた堕神の胴体までクールは落下した所で、今度は剣を胴に向かって横一直線に振り抜き真っ二つにした。 堕神の上半身は物凄い音を立て地面へと落ち、棒立ちの下半身は無数の小さな光となって空に向かって消失していく。 クールが地面へ着地し、堕神の方へ向くと上半身だけが地面へと横たわっていた。
勇は深く息を吐くと地面に腰かけ、少しだけ感傷に浸る。
「これで最後だと思うと、やはり寂しいものがあるな――」
クールの思いに答えるかのように4人の勇者達が一斉にこの場所へと転移してきた。 その表情は様々であったが、誰もが何かを堪えている、そんな表情をしていた。
クールはそんな姿を見て、たまらず立ち上がり4人の名前を呼ぶ。
「ルシール、スフィア、ノルン、マヤ。 何て顔をしているんだ。 皆こっちへおいで」
4人は名前を呼ばれ、クールの元へと駆け寄ると、クールは4人をまとめて抱きしめる。
そして、クールは最後の言葉を彼女達にかける。
「これで、最後だから……」
抱きしめられる4人は誰も、何も答えない。
「終わったら……さ」
4人は目を瞑り、思いを押し殺すように涙を流す。
「笑顔でいるように」
「「「「はい!」」」」
クールは彼女達から手を放すと、静かに背を向け堕神の上半身へと向かって歩いて行った。