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サーティンズ クロニクル  作者: 風風風虱
13人の怒れる魔女達
8/22

1 朝 ケンダの町

朝。

ケンダの町。いや、町だったところと言うべきか。

バンナとカナレは、その広場の有ったところへ来ていた。

「なにも無くなっちゃったよ。」

途方に暮れたようにカナレが言う。

確かになにもなくなっていた。有るのは黒く焼け焦げた建物の残骸ばかりだった。動くものはなにもない。

「パジャー。」

カナレが大声で叫ぶが反応はなかった。

「パジャ、死んじゃたのかな?」

カナレの言葉にバンナは首を横に振る。

「綺麗すぎる。

この広場にはかなりたくさんの人が避難していたはずだ。

それがこの一帯だけが何もない。

となると考えられるのは一つ。」

と言いながらバンナは杖で地面をコンコンと叩く。

それが合図とばかりにカナレの近くの地面が突然陥没し、人の顔が出てきた。

「あら、バンナ。

おはようございます。」

パジャが呑気に朝の挨拶をしてきた。

「ああ、おはよう。無事か?」

「はい。」

「なによー。

何で二人で普通に挨拶してるのよ。

ワケわかんない。ちゃんと説明して。」

カナレが叫ぶ。

「あらあら。」

逆にパジャは楽しそうに笑う。

「それはですね、カナレ。」

パジャは、よいしょと地面から這い出しながら答える。

「万一の事を考えて緊急避難用の魔方陣をつくっておいたのです。それが役に立ちました。」

「魔方陣?」

「そうです。

さ、さ、ちょっと移動しましょうか。」

パジャはカナレとバンナを連れて移動する。

最初にパジャが顔を出した所から大分離れた所まで来ると目を閉じ意識を集中させる。

微かに地面が揺れ始める。揺れはどんどん大きくなる。

「わ!何?」

カナレが驚きの声を上げる。目の前の地面がゆっくりと隆起していく。

大地の盛り上がりが見上げるぐらいの高さになったところで山が弾ける。一瞬で、視界が茶色の粒子に包まれる。

「ケホ、ケホ。」

カナレが咳き込む。

視界はすぐに晴れる。

小山は消え、代わりに500人近くの人達が姿を現した。

「広場をまるごと地面に沈めたんだ。」

何がなんだかという顔をしているカナレに、バンナが説明する。

「リビングデッドに防衛線を突破された時のために備えておいたのです。リビングデッドの突破を許したら皆を地面に隠せるように、とね。

でも、まさか『魔導師殺し』が来るとは。

慌てて魔方陣を発動させて難を逃れた訳です。

しかし、何であんなものが突然現れたのでしょう。」

パジャは、うっすらと浮いた額の汗を拭いながら、いう。

『よくわからないが点描法の変形かな。」

『点描法?

点描法と言うと、魔方陣を全部描いていくのではなく要点に魔素を込めた点を置いて、最後に点を繋いで魔方陣を完成させる方法のことですか?』

「そう、魔導師同士の戦いで不意打ち的に使う奴だ。』

『でも、誰があんな大きな魔方陣を?

あの規模の魔方陣を作ろうとすると町中に点を打たないとダメでしょう。

あの混乱した中の町中に点を打つなんて不可能と思いますが。」

「おそらくはリビングデッドを点として利用したんだ。」

「あー、あの光ってたリビングデッド!」

カナレが、わかった!という感じで叫ぶ。

「光るリビングデッド?」

逆にパジャはキョトンとする。

「ああ、魔方陣が現れる直前、町中に変な光を放つリビングデッドがたくさんいた。

それが魔方陣の接続点になったんだろう。」

『そんな事、聞いたこともありません。』

『自分も聞いたことがないな。だが、理論上は出来る。』

「誰がそんな事を?」

「さあ。誰がやったかはさっぱりだ。

やったか、というよりやれるか、を考えた方が犯人にたどり着くのは早いかもな。」

そこで、バンナは言葉を切る。

「今回の事件は単純なリビングデッドの自然発生ではない。

何かとんでもない力をもった黒幕がいる。」

「黒幕ですか。」

「黒幕?」

バンナの言葉にパジャとカナレが同時に呟く。

その時。

「パジャさ~ん。」

妙にテンションの高い声がした。

三人同時に声の方へと顔を向ける。

見ると、キーラがブンブンと手を振っている。

「誰?」

カナレがやや、引き気味に聞く。

「はは、私の上官です。」

パジャが苦笑いを浮かべて答える。

「朝御飯の準備をしましょ~う。

町の人達がお腹空かしてますよ~。」

「と、いうことですわ。

何はともあれ、二人ともご飯にしましょうか。

幸い、補給部隊の物資は全部残っていますから。」

口に手を当てて大声で叫ぶキーラの姿を見て、パジャはクスクス笑いながら、そう言った。


2017/04/16 初稿


投稿方法をちょっと変えました。

基本毎週 日曜日投稿としていくつもりです。



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