第三章新生活に悪戦苦闘する俺 1
「出てこい、引きこもり!」
「・・・・・・」
「いい加減にしろ、進夢!遅刻するぞ!」
「・・・・・・」
「完全に出るつもりないな」
「そうだな、どうする永木?」
う~ん、こうなったら奥の手だ。
「進夢~、この前お前が欲しがっていた「すぐに行く、待て!」・・・・」
まぁ、何も言ってないけどな。ただお前の欲しがっていた・・・までしか言ってない。多分前から「よこせよこせ」ってうるさく言ってきた限定発売されたギャルゲーを貰えると思っているんだろうな。
まったく二次元のことになるとありえないくらいの行動力だ。
『恋愛に対してのおぬし見たいじゃの』
そうか、俺はこんなにもガツガツしているのか。認めてはいないよ?中身はそうかもしれないけど外見は違う、冷静そのものさ。
『おぬしは一度自分をしっかりと見直す必要があるの』
「聡流、時間大丈夫か?」
「走ったら間に合うはずだ」
「クソ、進夢のやつを走らせないとダメなのか」
これまた文句を言われるぞ、だるいな。
『堂々と無視しよって、生意気な奴じゃ』
いちいち相手などしていられるか、疲労困憊で倒れるだろ。
『それが狙いに決まっておろう』
ふと思ったけど日常生活は邪魔しないとか言っていたよね?これって邪魔していますよね?現行犯逮捕だよね?
『私はそんなつもりはないがの~、ピュ~、ピュ~♪』
言っても無駄なようだ。
「おい、永木大丈夫か?」
「上の空じゃん。どこ見ているのかな?」
「悪い悪い、ほらさっさと行こうぜ。走るぞ!」
「え~、走るのかよ~。帰っていい?」
「「却下」」
逃げる進夢を捕まえて聡流と一緒に担いで登校することになった、リティは担がれている進夢の上に座っていた。
あぁ、進夢のやつ見えていたら喜ぶだろうな~二次元に乗られているぞ~。
「ふむ、こやつ座りにくいの。やはりおぬしに被さっていよう」
あ~あ、進夢~大好きな二次元に振られたぞ~。降りるときに鳩尾踏まれているし。
他の奴にも触ったりできるのかな?
『触ろうと思えば可能じゃぞ?まぁこやつは触ろうとは思わんが』
それはそうだろうな、僕も触りたくないし。
「離せーーー、僕は三次元になんて興味ないんだ~!」
「諦めろ、進夢。どうあがいても二次元には行けないぞ」
「進夢、叫ぶなよ!周りの人に変な目で見られるだろ!」
『こやつはもうダメじゃの。もうすでに人外の者じゃな』
人外の者に人外って言われている。二次元に猛り狂った進夢はもう取り返しの付かないところまでいっているのか。
進夢の抵抗もねじ伏せてどうにか入学式遅刻だけは避けた。でも周りからすごい見られたけど・・・・・・さっそく悪目立ちしてしまった。
まぁ見られるのは当然だけど。なんせ奇声を上げる奴を二人がかりで担いで登校してきているからな、僕も他人なら目を疑うよ。
でもそうまでして進夢を連れてくる理由はある。
『そうじゃったのか。ただの親切心じゃないのかや?』
それは・・・・・
「あの担がれている男子ちょっと美形じゃない?」
「えっ?本当だ普通にイケメン~」
「あの男子可愛い~、超美形だよ」
周りの女子の反応見ればわかるよな。説明いらないよな。説明したくないんだよな。
『すごい妬み様じゃの、顔が強張っておるぞ』
妬んでなんかないし、悔しくないし、なんとも思ってないし。
確かに美形でイケメンなのは認める、三人の中じゃ一番小柄でそこらにいる女子となんら変わらない。顔は完全に王子顔、どこの国の御坊ちゃまですかって感じだしな。
だがしかし!中身は人外だ!だれが人外の奴に妬みなんて抱くんだよ。
『そう解釈して目を背けておるんじゃな?』
ふぅ、まったく。
「痛い痛い!ちょ、永木痛いって!」
「進夢が大人しく登校しないからだろ?」
『完全な八つ当たりじゃの』
違うね、これは進夢が逃げようとして暴れたから力が入っただけだ。別にこいつが妬ましいから八つ当たりしたなんてことはないね。まったく誤解もいいところだね。
「ん~~!んっ、んっ!」
「永木、進夢の首を絞めるのはやりすぎだと思うぞ?」
「おっと悪い悪い、気付かなかった。もう学校着いたし開放してあげようか」
「かはっ~~~~。僕をどうするつもりなんだ!?」
「まぁ、進夢が最初から大人しく学校に来るなら問題なかったけどな」
「聡流の言うとおりだ、僕らは普通に入学式に出そうとしているだけだし」
「わかったよ、入学式に出ればいいんだろ?まったく永木くんは寂しがり屋ですね~」
うわぁ、うっぜー。もう一回首絞めてやろうかな?
「僕がいないとお前たちはなにも出来ないでちゅもんね~」
「永木俺が間違っていた、やれ」
「だよね~、よし首絞め開始」
「冗談だって!ちょ、やめ、うぐぅ~~」
進夢を完全に絞め落としてから入学式を迎えた。いや~、この人外の者重たいな。
入学式会場に入るときものすごく注目されたな、人を引きずって入ったらから当然か。
『女性は明らかに人外を見ておったがの』
余計な茶々をいれなくていい。
僕らが入学した学校は名桜星高等学校。
自由な校風で人気が高い。服装は好きのものを選べるし、学校への交通手段も自由だし、髪を染めるのもピアスをするのも許されている。
でもなんで定員割れになっているのかというと、ここは面接試験が重要視されているからだ。もちろんある程度の学力も必要らしいけど面接がよければどんなバカでも受かるみたいだ、だって俺らが受かったし。学校の先生に「お前がいける可能性のある学校はここ以外考えられない!」って言われたからな、ひどいよな~。
『バカならば仕方がないじゃろ』
それを言ったらもともこもないだろ。それでも晴れて合格したってことは面接受けが良かったってことだ。俺の性格はどこに出しても恥ずかしくないくらいに出来ている人間だからな。
『自信過剰もほどほどにの』
大丈夫だ、受かった時はびっくりしたから。
『うむ、ダメだと自覚しているならよい』
他人からダメと言われると認めたくないけどな。
しかし面接重視の学校だなんていい学校だ。本当に入学できてよかったぜ、なんで受かったか分からないけど。
「新入生の皆さん、入学おめでとうございます!自由な席にお座りください!」
「もう始まるみたいだぞ、さっさと座ってしまおう」
「出口の近いところにしようぜ~」
「絶対に逃がさないからな?」
まったくまだ逃走を考えているのかよ。
しかし入学式の席まで自由とか本当にこの学校は緩すぎだろ。
「それでは入学式を始めます!まずは校長先生のお話からです」
「うわぁ~、だるい奴じゃん、めんどうな奴じゃん」
確かに進夢の言うとおり一番めんどうな行事だ。でもマイク渡されている校長らしき人なんか戸惑っているぞ?なにやっているんだろ?
「わしか?話さんとダメか?」
ええ~~!?嫌がっているよ!校長まで自由なのかよ!
「ふむ、挨拶に預かった校長じゃ。おぬしらもめんどうだろうし手短に済まそう」
いやいや絶対に自分がめんどうなだけだろ。うん?「おぬしらも」ってことは自分もめんどうなのも認めてやがる!
「一言じゃ、自由に謳歌せよ!」
おお~、やりきった顔してやがる。あれだけで金貰っているのか、校長最低だな。
「え~次は在校生の校歌斉唱なのですがほとんどの生徒が出席していないので中止にいたします」
校長の終わりでいいんだ。しかも在校生がいないから中止ってすごいな、聞いたことないぞ。どこの不良学校だよ、荒れている学校しかないだろこんなの。
その後もほとんどの行事を出席していないだのめんどうだの言って入学式はすぐに終わった。どうりで入学式の案内に保護者は入学式に同伴不可なんて書いてあったのか。こんなの保護者が見たら激怒するな。
「なんていい学校なんだろう!僕は今最高に嬉しいよ!」
なんだか進夢が輝いているし。確かにここまで自由なのは生徒からしたら嬉しいな、少し不安もあるけど。大丈夫かな?
「それでは今からクラスに移動していただきます。お好きなご友人と好きな教室でお待ちください。これで入学式を終了します!」
終わったよ、数十分もしない間に終わったよ。
うん?あれ?そういえばさっきからリティが静かだぞ?
『うん?なんじゃ?寂しいのかや?』
なんで静かだったのか気になっただけどなんか聞く気が失せた。
『それはおぬしが静かにしろと言ったからであろう』
なんと!?リティが素直に言うことを聞いてくれただなんて!知り合って間もないけど絶対にリティは人の言うことを聞かないと思っていた!
『・・・・おぬし自分の心がだだ漏れなのを忘れておるじゃろ?』
し、しまった!
『さっきおぬしが人外の者にしたように私も首を絞めてあげようかの~』
「わ、悪かった!」
「何が悪いんだ?」
「永木くんはなにかしたんでしゅか~?」
げっ、また声に出してしまった。
『まぁ、それで勘弁してやろう』
くっそ~、本当に喋ってしまうのをどうにかしないと。
「そうか!僕を無理やり学校に来させたのを謝っているのか!」
「「そんなわけないだろ」」
「まぁまぁ、二人の謝罪はどこかの教室でじっくり聞くから」
「なんでだ。でもさっさと教室は決めないと混みそうだな」
「せっかく自由に選べるんだし同じ教室にしておくか」
「「まさかゲイになったのか?」」
「なんでそうなんだよ!」
『まさか・・おぬしそっちの方に・・・』
リティも反応するな!
「俺が女性への興味を失うわけがないだろ!」
『よい反応じゃ、見事に周りを引かしたの』
はっ!
「さすが永木くんですね~、羞恥心をかなぐり捨てますね~」
「永木はもう少し心の声を抑えることを覚えた方がいいな」
「お前らが俺に言うように誘導したんだろうが!」
まったく早く教室に入ってしまおう。
『周りの目が痛いからの』
いちいち周りを強調してくるなよな、心に傷をおってしまうだろう。
『おぬしの心弱っ!あの威勢の良さは何処にいったんじゃ』
さぁ、どこにいったんだろう?もう俺の青春遠すぎて見えないや。
「なに遠い目をしているんだ?早く教室を選ぶぞ」
「一番人の少ない教室にしようぜ!」
「どんな教室でも進夢は学校に来る気がないから関係ないだろう?」
「俺は女子が多ければなんでもいいや」
ふっ、所詮無駄だろうけどな。
「なんだか永木くんがご機嫌ななめですね~」
「まぁ、そのうち可愛い女子でも見たら元気になるだろ」
進夢のゴリ押しでまだあんまり生徒が入ってない教室に入ることにした。確かに人の目が少ない方が今は助かるな。
「先は入っといて、ちょっとトイレ行ってくる」
「そのまま帰るなよ~」
「なんのことかな?帰る?なにそれ?」
「信用できないから一緒に行く。永木は席とって置いてくれ」
一番後ろの席とって置けばいいか。教室を見渡した感じ女子は・・・・いない。いや語弊があったな、女子はいる。ただ可愛い女子が見当たらないだけだ。
『おぬし自分のことを棚にあげて最低じゃな』
うっさい、可愛い子でも見ないとやっていられないんだよ。はぁ、失敗しないように意識していたつもりなのに普通にリティ達に乗せられて言ってしまった。
『おぬしは単純バカだから仕方ないじゃろ』
誰が単純バカだ、このやろう。
「おい、永木!坂沙の奴に殴られたぞ!幼馴染のパラメータぐらいしっかり管理しとけよ!」
「進夢、千佳のパラメータは攻略不可能キャラだからないぞ」
「勝手に人を変なキャラみたいに言わないで、キモイ」
相変わらず俺と進夢に冷たいこと。
「進夢が逃げようとしたからだ。坂沙、助かった」
「べ、別にこれくらいの事。聡流くんの頼みならいつでも言って!」
そして相変わらず聡流には優しいこと。まぁ、千佳とかどうでもいいけど。
それよりも気になるのは
「うげー、なんか人増えてきているし~」
そうなのだ、進夢が帰ってきたと思ったらその後からどんどん人が入ってくる。しかも入ってくるのが女子ばっかり!これは嬉しいことこの上ないな、テンションが上がるぜ!
『やはり単純バカじゃったの』
別に単純バカで結構だ、女子がたくさん居るだけで幸せだからな!
『誰もおぬしに興味があるわけじゃないじゃろ。たぶんそこの人外の者に釣れられてきたんじゃろ』
くっ、現実を聞かされるほど嫌なものはないな。しかし進夢はいつまでも人外の者って呼ばれているな、いい気味だ。なんでこんな顔だけの奴にみんな釣られるんだろうな。体中から溢れ出るダメなオーラが見えてないのか?
『おぬしのダメなオーラは見えていそうじゃの』
俺のが見えているなら進夢のも見えているだろ、向こうの方が酷いんだし。
『多分顔がいいからそれで隠されているんじゃろう』
世の中美男美女に対して優しく作られてやがるな。もう顔がいいだけで何もかも許されるんじゃないか?
誰か不細工の方が優遇される国を作ってくれ、直ぐに国籍移しに行くから。
『不細工に優しくして誰が得になんるじゃ、馬鹿者』
少しくらい優しい世界があってもいいじゃないか。
『それにおぬしは不細工ではないじゃろ』
な、なんだよ。おだてても何もでないぞ?で、でも言いたいことがあるなら言ってもいいぞ?喜んで聞こうじゃないか。
『おぬしは中途半端じゃろ?』
・・・・・・・・・・・・・・・・でたよ、上げて下げてきたよ。
『いや、別に上げたつもりはないんじゃが』
上げてくれよ、情けでもいいから。
落ち込んだから心を落ち着けるために今入ってきた女の子でも観察しますか。
『観察って言い方がすでに変態っぽいの』
気にしないぜ、女の子を見ているだけで嫌なことも軽くスルーだぜ。
「って、・・・・あれ?あの子は」
書いてあった分です。ちょっと区切り方が微妙ですいません