第二章恋愛神に出会って恋から遠ざかる俺 3
「おし、戸締まりOK」
「しゅっぱーつ」
琴莉もまだまだ子供だな、買い物行くだけでうきうきして。
「デート、デート、久々のデート♪」
「家族での買い物だ、間違えるな。しかもご近所さんに聞こえるような声で叫ぶのは遠慮してくれ」
『おぬしの妹はブラコンなのかや?』
はぁ~、その程度で済めば可愛いもんだ。琴莉はガチで俺のことを好きだからな。
『おぬしのほうが重症じゃな、どれだけ自分に酔いしれてるんじゃ』
嘘は言ってないからな、全然嬉しくないけど。普通に慕われるならいいんだけどな~、琴利の同級生に妹を無理やり付き合わしてる変態兄貴と思われているなんて最悪だよ。
「お兄ちゃん、いつまでも沈んだ顔していたらだめだよ~」
原因はお前だよって言いたい、言っても無駄だろうけど。
「琴利は能天気で羨ましいよ。今日の晩飯は何にするつもりなんだ?」
「お兄ちゃんは何が食べたい?」
どうしようかな?これと言って浮かばないな~。
『それなら私が決めてやろう』
う~ん、ご飯物かな?麺物かな?ゲテモノかな?
『ほれ、迷っておるんじゃろ?私が決めてやると言っておろう』
金銭的にも考えないと、あんまり豪勢な物を食べられるほどお金入ってないだろうし。
『・・・・・・これ、いつまで無視する気じゃ?』 グッ
「ぐへっ、ちょっ、やめ」
「なに言ってるのお兄ちゃん?」
リティの奴、触れるからって首絞めやがって!二つの意味で苦しいぞ!
『私に決めさせんと開放してやらんぞ?』 ググッ
くそ、血が上がってきてさらに苦しい!煩悩退散、煩悩退散!
『ほれほれ、早く承諾せんと気を失うぞ?』 グググッ
「どうしたの?お兄ちゃん、顔真っ赤だよ?」
「大丈っ、夫だ、気にっ、するなっ」
「全然大丈夫に見えないよ?」
『・・・・・・・』 スッ
あれ?ゆるくなったぞ?諦めたのか?
『・・・やっぱりMじゃろ・・・』
「琴莉、神様に今日のご飯何がいいか聞いてみるよ」
「えっ?あ、うん。お兄ちゃんがそう言うなら好きにしてよ」
『いい加減に認めたらよいものを・・・・』
誰が認めるか!たかが晩飯の選択権争いでMになってたまるか!
『それより神様に聞くんじゃろ?ほれ、聞いてみよ』
なんで上から言われないとダメなんだ?一様はこっちが頼みを聞く立場だったような?
『はいはい。意地を張り合っても仕方ないしの、大人の私がおれてやろう。私が食べたいのはスイカじゃ!』
なんで晩飯にスイカを主食で食わないとダメなんだよ。普通に考えて答えろよな~、好きなものが食べたい子供じゃあるまいし。
『ふむ、そうじゃな~。とりあえずスイカはデザートとして・・・』
ちゃっかりスイカを今晩のメニューに入れやがった。
「もう!お兄ちゃん答えるの遅い!」
「悪い悪い、なに食べたいか迷ってて」
「もうスーパー着いちゃったよ!」
「いや先に銀行でお金下ろさないとなんにも買えないぞ?」
「・・・・・・・・・・知ってたも~ん。私が先に中に入ってお得なのを探しておくからね、お兄ちゃんは早く引き出してくる!」
「はいはい、よろしく頼むな」
『これ!スイカのことを言っておらんぞ!』
「ああ、琴莉。ついでにスイカもキープしといてくれ」
「お兄ちゃんよく飽きないね。わかった、あったら取っておくね」
そう言って手を振りながら元気よく走っていく姿を見たらモテるのも分かるな。なんであんなに可愛いんだ?もちろん妹としてだけど。俺は・・・・・まぁそんなに・・・イケメンでは・・ないな。俺もイケメンだったらな~、遺伝子は同じはずなのに。
『いくら容姿がよくても中身がダメなら、どうせダメじゃ』
それは俺の中身がダメって言いたいのかな?
『別にそうは言っておらん。妹が兄を好いているのが残念だといいたいだけじゃ』
それって悪く考えたら俺に悪口言ってないか?
『ほう、よく気づいたの』
「・・・・・よし、さっさと金を引き出しに行こう。琴莉を待たしたら悪いしな」
「くくく、おぬしには口で負ける気がせんの~♪」
そういってリティは俺の周りをクルクル回って挑発してくる。相手しても負けるだけだからおとなしく降参することにした。別に逃げたわけじゃない。言い訳でもない。
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「あれ、千佳?お~い」
「げっ、なんでいるのよ?」
「げって言うな、げって。お前こそなんでいるんだよ?」
「バイト始めるか口座を作りにきた・・・・ってなんで答えなきゃいけないのよ!?」
「いや、答えてから言われても」
『誰なんじゃ?』
こいつは隣に住んでいる住人だ。いわゆる一般的に幼馴染とか言われる奴だ。
「本当についてないわ!変態なんかと出会うなんて」
そうです、一・般・的・な幼馴染です。アニメとか漫画とかで登場する非・現・実・的・な幼馴染じゃない。あんなのは現実じゃありえないですから。
『ふむ、嫌われているようじゃの』
こっちだって嫌いだ!坂沙千佳、見た目は容姿端麗。日本人形かと思われるくらい綺麗な黒髪をいつもなびかしている。しかしある一部分は非常に残念な大きさだし、まぁ和服は似合っていたな。でも容姿は関係ない!こいつは完全なる八方美人だと思う。だって俺にだけ態度が酷い、多分こっちが本性だと思う。さっきだって俺に開口一番「げっ」で変態扱いだぞ?他の人にはマックドナルの店員顔負けのにっこりスマイルを見せるくせにさ(進夢は例外。だけど何故か聡流は俺たちと同じなのに普通の対応されている)。
「それであんたは何しているのよ?」
「言う必要あるか?」
「私は教えてあげたんだから教えなさいよ!」
「銀行に来たらお金を引き出しに来たに決まっているだろ?そんなことも分からないのか?だから俺と同じレベルの高校にしかいけないんだよ」
ちなみに千佳も同じ学校だ、まことに残念でならない。
「うっさいわね!あんたよりは頭いいわよ!」
「はいはい、そうですね~」
『早く戻らなくていいのかや?』
そうだそうだ、こんなのを相手している時間がもったいない。さっさと引き出して戻らないと。
「そういえば小耳に挟んだんだけど振られた回数が連続十回に到達したんだって?」
「グハッ・・・・・・・・その話誰から聞いた?」
「へ~、やっぱり本当だったんだ。なんて言って欲しい?おめでとう?」
『ほう、おぬしはそんなに振られておったのか。これは面白いことを聞いたの』
ぐわぁ~、これ以上リティに余計なことを聞かさないようにしないと!
「お前だって付き合ったことないくせに、よく人のことを言えるな」
「あんたみたいに誰これかまわず告白したりしないわよ」
「誰これかまわずじゃねぇよ、全部本気だぞ」
「・・・・・・・・・・あんた何かに憑かれているんじゃない?」
「・・・・・・そうかもしれませんね」
『その十回に私は関係しておらんぞ?おぬしの実力じゃぞ?』
嘘だ、俺は信じないぞ。ずっと前からリティは俺に取り憑いていたから振られたんだ。それ以外にこんなにも振られるはずがない。
『これ現実逃避しても無駄じゃ』
嘘だと言ってくれ~!
「あんた顔真っ青よ、大丈夫?」
「ちょっと現実をあらためて再認識していたとこだ」
「まぁ、さすがに全部本気で全部振られたって聞いたら、いくらあんたでも可哀想ね」
なんと!?この俺を(ちなみに進夢も)あんなにも毛嫌いしている千佳に慰められるなんて!そんなに可哀想なのか、俺・・・・・・・・・・・・。
「まぁ、高校で頑張れば?無理だと思うけど」
「無理だと思うなら言うなよ、俺も無理だと思うけど」
なんていっても
『私がいるからの、無駄というものじゃ』
そうそう・・・・ってあきらめてたまるか!
「なにがなんでも彼女作ってやるぞ!」
「・・・・・そうゆうところがダメって気づいてないの?」
「えっ?俺声に出していた?」
「引くぐらい大きな声でね」
『私が何もせんでも勝手に自滅しそうじゃな』
これはリティが取り憑いているからなのか?そうだ、そうのはずだ。
『私に擦り付けてもなんの解決にもならぬぞ?』
「知り合いだと思われたくないからそろそろ行くわ。学校で同じクラスにならないことを祈っているわ」
千佳のやつ最後に暴言を吐いて帰りやがった。おばさんに言いつけてやる。
『やることが陰湿じゃな、嫌われてしまうぞ?』
あいつに嫌われてもなんとも思わんな。
『新しい学校とやらで悪いうわさ流されたりするかもしれんぞ?』
よし、謝罪の手紙と和菓子でも持っていこう。
そう思っていたとき お兄ちゃんメールだよ? お兄ちゃ
『おぬし、鳴っておるぞ』
即行で止めたね。最速反射神経更新したかもしれないな。それくらいに焦った、他の人に気づかれてないみたいだからよかったけど危機一髪だったぞ!
『誰からじゃ?なんて書いておるんじゃ?』
どれどれ?
琴莉【おっそ~い!またカレーにしたから。お兄ちゃんが悪いんだよ?】
お金を持っている俺に決定権があるのにな。まったく、まずはなんでこんな着メロにしたのかを詳細に聞き出さないとな。
『昨日おぬしが風呂場で倒れているときに設定しておったような気がするの~?』
くっ、油断も隙もない。どれだけ俺を社会的に抹殺されそうな危機に追い込むんだ。しかも悪気があってしているわけじゃないからたちが悪い。
『本当にそうかの?おぬしの携帯をいじっている時に「これで私しか・・・」みたいなことを真顔で呟いておったぞ?』
自分の妹だけど今戦慄を覚えたぞ?これは真剣に警戒しておかないと。
『警戒するのはよいが早く行かんでもよいのか?』
「そうだ、やばい!あいつ拗ねたら面倒なんだ!」
琴莉の奴はマジ拗ねしたら「婚約書にサインするまでゆるさないもん」とか「お父さんに私をくださいって言って」とか「既成事実作ってもいい?」とか・・・・・とにかく頭が痛くなる。
『・・・・・いやいや、それはおぬしの妹が頭痛いじゃろ。今までよく平然と生活してきておるの!』
ふっ、うちの家庭は想像を絶するほどの頭のおかしい家族だからな。俺が一番まともだからしっかりしないと。
『おぬしがまともかどうかについては黙秘さしてもらうとするかの』
なんだ?リティは俺のことをまともじゃないとか思っているのか?それは勘違いも甚だしいぞ。俺の何処を見てそう感じるのか聞きたいね。
『基本的に変態は自分では普通だと思っているのが世の中の定石だからの~』
リティのたわ言はほっておいてさっさと琴利のところに行こう。琴莉に拗ねられるのは面倒だからな。
書いてた分です