第一章新生活に新たなる出会いを求める俺 2
「ただいまー」
「おかえり~。お兄ちゃん、もうご飯出来てるよ~」
「先に部屋に荷物置いてくる」
「用意しておくから早く降りてきてよ~」
まったく、できのいい妹だ。俺の家庭は親が共働きだから家のことは自分でやらないといけない。だけど家事全般は妹の琴莉がやってくれている。
「今日の晩飯はなんだ?」
「愛情いっぱいのカレーだよ、お兄ちゃん」
・・・・・・・・・・確かに愛情がたっぷりだ。なんで野菜が全部ハート型なんだ?
「私はお兄ちゃんのことをこよなく愛しているからね♪」
訂正しよう、ブラコンを除いたらいい妹だ。
「いやいや、俺たちは家族だからな?わかっているよな?家族愛だよな?」
「わかっているよ、私たちは家族を超えた家族だもんね」
「家族を超えた家族ってなんだよ。ただの兄妹だろ」
「えっ?夫婦じゃないの?」
「ご飯の前に精神科病院に行こう、そうしよう」
重症どころじゃない、本気の顔してやがる。純度100%の本気で言ってやがる。
「まったく、三割は冗談だよ。お兄ちゃんが早く彼女作らないからでしょ」
純度70%のようでした。十分高いけど。
「それだとほぼ本気だぞ。そうなると、彼女は出来て欲しくないんじゃないのか?」
「う~ん、ライバルがいた方が燃えるでしょ?」
そうですか、やっぱり本気なんですね。昔からなついていたけど中学生になったころから変わってきたんだよな。思春期だからかな~。
「琴莉も彼氏とか作ったらいいじゃないか」
「えっ?お兄ちゃん付き合ってくれるの?」
「なんでそこで俺という選択が出てくるんだよ?普通に考えて兄は対象外だろ」
「お兄ちゃん以外は対象外だよ♪」
もうダメだ、取り返しがつかない頭だ。
「頼むから彼女作る邪魔だけはするなよ?」
「出来ないと思うけど、作ってからは邪魔してもいいの?」
「そっちの方が邪魔したらダメだし、今さらりと兄を馬鹿にしたな?」
「お兄ちゃんに彼女作れると思わないもん。女の方からよってくるわけも無いし」
「そ、そんなことないぞ?これでも、た、たまに告白とかされるぞ?」
「私じゃあるまいし、嘘でしょ?」
くそ~、なんて嫌味な妹だ。確かに兄から見た感想でも可愛い、それは認める。
アイドルですか?などと聞かれてもおかしくない。小さいくせに胸は着実に成長しているし、足は無駄にむっちりしてやがる。
短く切りそろえた髪が幼さをまだ持っているけど時々見せる大人っぽさがまた魅力的に感じさしている。
・・・・・・・・って俺は何を語っているんだ。
でもそれだからって、告白されているってことはないだろう。
「お兄ちゃん信じてないでしょ。私ほんとによく告白されるんだからね?」
「えっ、マジで?じゃあ今誰かと付き合ったりしているのか?」
この兄より先に。
「付き合ってないよ」
ふぅ、なんだかんだ言ってなんか妹が付き合うのは複雑な気持ち出しな。先こされるのも嫌だし。
「お兄ちゃんと付き合っているからって言って断っているもん」
・・・・・・・それ、やばくないか?
「それは実の兄って言っているのか?」
「静寂永木と付き合っているよって」
「うん、名前を言っているのか。そうかそうか」
確実に苗字一緒だし実の兄ってわかるな。
「お兄ちゃんがどうしても女の子と付き合いたいから付き合っているって」
「おい、それだと僕が妹を無理やり付き合わしてる変態兄貴じゃないか」
「あっ、今度土曜日に保護者参観があるからお兄ちゃん来てね?」
「俺を社会的に抹殺するきか!?」
いったい何人ぐらいの人に知られているんだ?いったい何人を振ったんだ?
「そういえば最近は何回も振っているせいか告白されなくなったよ~」
既に浸透してる~!どおりで最近コンビニとかで男子中学生の子に睨まれると思った。
女子中学生の子には引かれているし!
「とにかく学校でその誤解は解いておいてくれ。兄とは付き合ってないと」
「そうだね、既に夫婦だし婚約しているって説明しとくね」
「さらに現状を悪化させようと試みるな!とにかく付き合ってないと誤解を解かない限りは保護者参観なんて行かないからな!」
まったく知らないうちに兄の人生を脅かしているとは、これじゃ後輩の女の子を狙えなくなるじゃないか。
「そういえば、親父たちは保護者参観を見に帰って来ないのか?」
「さっき電話で二人ともまだ帰らないって連絡あったよ、お兄ちゃんが帰ってきたら電話するようにだって」
「そういうことは帰ってきた時にすぐ言えよ」
またあのバカ夫婦どもは帰って来ないのか。どれだけ子供に迷惑かけるんだ。
『プルルル~、プルルル~、プルルル~、ガシャ』
「母さん?永木だけどまた帰って来ないのか?」
『只今電話に出ることが出来ないで~す。電話かけ続けてくださ~い』
この留守番電話は変えた方がいいな。こんなにも電話をかけたくなくなるなんて。
しかたない、かけたくないけど親父の方にかけるか。
『あなたの電話番号は着信拒否されております』
うん、こっちの勝ちだ。なんで息子の電話番号を着信拒否しているんだよ。どれだけ俺のこと嫌いなんだよ、妹からの電話は3コール以内には絶対にでるのに。
「琴莉、お前の携帯貸してくれ」
「いいけど、何に使うの?」
「そんなの親父に「浮気チェック?」・・・・」
誰か俺に頭痛に効く薬をください。
「何故その発想が出てくるのか想像したくないが、違うとだけは言っておく」
「もう、お兄ちゃんは照れ屋さんだな~。それで他には何に使うの?」
「他にとかじゃなくて親父に電話かけるだけだから。俺は着信拒否されているんだよ」
「相変わらず嫌われているねー」
まったく世話のかかる親たちだ。
『プルッ、どうした琴莉!永木に襲われたのか!?』
「なんで俺が妹を襲っていると思うんだよ!」
『なっ、なんで琴莉の電話からお前の声が!?さてはヤッたな!』
「なにもしてねーよ!なにがヤッただよ、とにかく母さんに代われ」
『琴莉に飽き足らず、母さんもか。このマザコンが』
「黙れ、勝手に勘違いしてろ。このドタコン(ドウターコンプレックス)が」
『母さん気をつけて・・・・永木~、何したの?』
「何もしてないって、親父が勝手に勘違いしているだけ」
いや、ただの妄想に近いな。勘違いできる要素なんて無いし。
「しかも、母さんから電話してこいって言ったのになんで出ないんだよ」
『あっ、すっかり忘れていたわ。携帯見て、「うわぁ、だるい」って思ったから』
それ忘れてないし、見え見えの嘘つくなよな。
自分から電話させといてだるいってなんだよ、しかもわが子をだるいって。
「はぁ、とにかくなんか連絡あるんだろ?」
『いやね~、ごめん。また帰るのが延長になったのよ、だから後よろしくね』
両親は日本中の観光スポットを紹介するライターをやっている。
だけど親父は秘境や隠れた名所などそういった秘密の場所を探すのが好きで、いや中毒なほど好きなのだ。
そのせいでよく「これは何かあるぞ!」みたいなことになってよく帰ってくるのを延長しやがる。最近は秘湯を探すのにはまっているらしい。
いわゆる放浪癖ってやつだ。
母さんもそういったことが好きで昔探しているときに遭難したそうだ。そのとき親父に出会ったといっていた。どんな劇的な出会いだよって思って詳しく聞いたことがあるけど詳細なことは教えてくれなかった。
「まったくお金振り込んでおいてくれよ、そろそろなくなりそうだから」
『え~、もうなくなりそうなの?あんたバイトしなさいよ』
「いやだよ、俺は忙しいんだよ」
なんで俺が家庭を支えるために働かないとダメなんだよ。親父たちは色々なところを見つけるので有名だから意外にうちの家庭は裕福なのだ。
食料費(琴莉にできるだけ削減をさしている)を払うのは親の役目だろ。まったく今月発売する新作ラノベが買えないじゃないか。
「他には何にも無いのか?」
『う~ん、保護者参観よろしく頼むわよ』
「えっ?それって本当なのか?俺は兄だから無理なんじゃないか?」
『あんたの方が保護者にふさわしいじゃない』
うん、なぜか納得してしまうのは何故だろう。ほとんど俺が琴莉を育てたようなもんだからな~。
「とにかくなるべく早く帰ってきてやれよ。保護者参観ぐらい来てやれよな~」
『なるべく早く帰るようにするから。それじゃあよろしく頼んだわよ』
その後は琴莉の熱烈な愛の言葉を華麗に交わしながらご飯をすました。さっさと風呂入って寝るか。
「お兄ちゃん、お風呂入るの?」
「先入るぞ。久々に家から出たから疲れた、さっぱりしたい」
「わかったよ~、うんしょっと」
「うん、なんで服を脱ぎ始めた?」
こいつ中学二年のくせに俺の前でためらいもなく脱ぎだしたぞ。どうした思春期の女子中学生だろ、嫌がるのが当然だろ!
「お背中お流ししますわ~♪」
「いらんわ!風呂ぐらいゆっくりさせろ!」
まったく誰が妹と風呂なんか入るか!ただでさえ色々誤解されているのにここで入ったら事実になっちまうし。参観日までには誤解を解いてもらわないと社会的に終わるし。
後でしっかり注意しとかないと、まったくもって効果はないと思うけど。
「ふぅ、今は忘れてゆっくりしよう」
なんで家でゆっくり落ち着けるのが風呂場だけなんだろう?
今日はミスったな~。せっかく可愛い子と接触できたのに変態と誤解されるなんて。
そこまで深刻じゃないだろうけど誤解を解かないと今後にひびくからな~。
しかし全然叫んだつもりなんて無かったんだけどな?そんなに大声で女の子が好きだって宣言したのか?確かに叫んでもおかしくないぐらい飢えているのは確かだ。だからって場所をわきまえない行為は基本しない。女子に好かれない行為は控えている、はずだ。
「いや、普通ではないと思うがの~」
はい?そんなわけ無いだろう?なんど言えば俺が紳士だとわかるのか。
「って、俺の心を読んだのは誰だ!?」
あたりを見回しても風呂場には誰もいない。いや、いたら怖い。可能性があるとしたら琴莉ぐらいだけどさっき追っ払ったし、鍵も閉めたはずだ。う~ん、俺の妄想か?
俺の妄想はほっといて入学式はどうするかを考えなければ!進夢を連行して学校に連れて行くのは当然として今日会った子を探すのは最優先にしよう。
だけど会ってどうするか?しかもあった瞬間に逃げられる可能性は・・・・・あるかもしれない。いや、そこまではひどくないはず。少しひかれるぐらいだ!
「自分で言って落ち込んでどうするのじゃ」
落ち込んでなんかいないやい!すこし現実逃避をしようか迷っていただけだ!
「って、せっかくばれないように落ち込んでいたのを明るみに出したのは誰だ!?」
誰もいないのはさっき確認した。外の窓から話しているのはありえない。なぜなら俺の家は風呂場が二階にあるからだ。
今この風呂場には俺一人しかいないのは確定されていることだ。さっきは空耳だと思ったけど二回目となると怖いな。もしかして俺のストーカーとか?
「そんなことする物好きはいないと思うがの?」
「そんなことはない!・・・・・えっ?」
文句を言おうと目を開けると浴槽に・・・・・美女、裸の。
プシャーーーーーーー
「うん?あっ、裸だ・・・・・・・・」
僕はそのまま血の海に沈むのだった。
書いてあった分です