第一章新生活に新たなる出会いを求める俺 1
第一章新生活に新たなる出会いを求める俺
高校の入学式、新しい青春とのファーストコンタクト。今これ以上に大事なミッションはない。・・・・・と言っても入学式の三日前にやっと立ち直った俺だけど。
はぁ、また泣き崩れてしまった。卒業式に振られてから二人に盛大な10人斬り(実際は10人斬られ)お祝いパーティーをやられた。慰めのかけらもなかったぜ、散々バカにしやがって。そのせいでニートみたいに引きこもってしまった、隅で隅限定で。
久しぶりの太陽は眩しいな、真剣に脱水症状で枯れ死にそうだ。体の中の水分を使いきった俺には辛過ぎるぜ。
「永木、枯れてないでさっさと制服選びに行くぞ」
「早く出て来い、引きこもり!」
進夢だけには引きこもりって言われたくないな。年中無休の引きこもりのくせに。
「わかったから、ちょっと待ってろ」
そうなのです、今から制服を選びにいくのです。俺たちは何故だか学力的には同レベで一緒の高校に行くことになった(定員割れで合格だが)。
俺たちが行く学校の制服は何種類かあり自前に高校に行って選ばないといけない。だからどんな制服が自分に合うかしっかりと吟味して行かなければならない。
う~ん、女子の制服が楽しみだ。
「そこの鼻の下伸ばしながら窓枠に座っている変態早く降りて来い」
「早くしないと捕まるぞ?」
「誰に捕まるんだよ、ボケ!」
まったく人を変態犯罪者扱いしやがって、どれだけ俺が紳士かわかっていないだろ。女子の制服を見て何処がどう可愛いかを褒めれるようにしっかりと調べるつもりなのに。
「さあ、検証に行きますか」
「検証ってなんだよ。制服を買いに行くんだろ」
「永木くんは相変わらず脳内がおかしいですね~」
「うるさいな、他の奴より繊細なだけだよ」
「確かに変態は繊細だ、扱いが難しいからな」
「変態と紳士は紙一重って言葉を教えてやるよ」
まったくこいつらは何もわかってないな。変態も紳士も同じようなものだ。
「そうだったんだ、永木くんは変態紳士なんだな」
「繋げないでくれ、頼むから。俺が悪かったと認めるから」
繋げただけでこれほど威力が上がるとは思わなかったな。精神へのダメージが絶大だ。
「おっ、永木が落ち込んでいる間に着いたぞ」
う~ん、なんか最近落ち込んでばっかりだ、ここは気分を変えていこう。
「女子はいるかな?」
「到着一番からそれかよ」
「永木くんは相変わらず飢えていますね~」
ふっ、女子に興味のない男なんていない。もしもこの思春期の時期で女子に対してなんの興味もない奴は確実にホモ確定じゃないか。
「全然人来てないみたいだぞ」
聡流の言うとおりで女子どころか男子すらチラホラしか見られない。流石に三日前に選びに来るバカな連中はいないってことか。
「僕は空いている方がいいや、人ごみはきついから」
それはそうだろう。いつも部屋ばかりにいるインドア野朗の進夢からしたらどこでもきついだろ。
「はぁ、もっと女の子が沢山いるときに来たかったな」
「お前がいつまでも落ち込んでいるからだろ」
「そのおかげで空いているから僕は許してあげよう」
こいつに何を許してもらうんだ?何を?
「どうせ俺が立ち直っていても進夢が部屋から出て来なかっただろ。感謝してもらいたいね、俺に責任を押し付けられるんだから」
「確かにそうだな、こいつは何を言っても反抗しただろうな」
「失礼な、僕は何を言われても反応なんてしない!」
「さらにたちが悪いな、どこまで筋金入りの引きこもりだよ」
「筋金入りの変態よりはマシだと思うよ?」
まだ変態だとかなんだと言っているのか。ここはちょっとはっきりさしておこう。
「俺はこよなく女子のことが好きなだけだ!」
「そうやって大声で叫んでいるのが変態だと言われるんだよ。少しは学習しろ」
「まったく、永木くんはバカですね~」
あれ?全然声出してないつもりだったんだけどな?制服販売の人たちが俺から距離を取っているみたいだから(女性店員は距離を取るどころか逃走してしまった)かなりの大声だったみたいだ。
「永木、バカやってないで早く制服決めるぞ」
「俺は元々バカだからしょうがないだろう」
「開き直っているじゃん」
さてどんな制服にしようかな?見たところ色は赤色、青色、黄色、黒色、白色、保護色などなど・・・・・・誰が保護色なんて選ぶんだろうな?こんなの着ているやつは露出狂以外の何者でもないじゃないか。
柄はチェック、スタンダード、グラデーションなどなど・・・・・・保護色のグラデーションってあるのかな?つーか制服にグラデーションって普通に考えてダメだろ。
「僕は保護色のグラデーションにしよう」
「あの進夢、俺と友達やめてくれないか?」
変態と友達だったら俺の高校生活は一瞬にして黒歴史として人生の一ページに刻み込まれるからな。
「冗談に決まってるし。誰が保護色なんて選ぶかよ、グラデーションはマジだけど」
「まったく冗談きついぞ。お前の顔マジにしか見えなかったし」
本気でこいつの記憶から俺の存在をどうやって消そうか考えてしまった。友達は大切にしないとダメだよね。
「グラデーションもよさそうだが、やっぱりスタンダードだろ」
「聡流がスタンダードなら永木くんはチェック決定ですね~」
「なんで勝手に決めようとしているんだよ」
「バラバラの方が面白そうじゃん。頼むよ~」
元々チェックにするつもりだったからいいけど、無理やり押し付けられるとなんか抵抗したくなりますよね。
「仕方ない、チェックにしてやるよ。色はどうする?」
「俺は黒にするつもりだが?」
「普通~、聡流それ男らしいつもり?」
「別にそんなつもりで選んだわけじゃない。ただ無難だろ」
「それでもお前は男か!そこはもっと違う色を選ぶべきだろう!」
「なら保護色か?」
「聡流、その判断だけはしたらダメだ」
それはある意味男らしいけど世間様から見たらただの変態になるだけだからな。
「安心しろ冗談だ、色は変えるつもりはない。そういう進夢は何色なんだ?」
「普通に白だろ?これが一番しっくりくる」
「また目立つ色を選ぶな、しかもグラデーションだし」
白のグラデーションってどんなだ?そもそもグラデーションする意味があるのか?
「どうせ永木くんも黒でちょうね~」
ムカつく言い方だ。赤ちゃん言葉で馬鹿にされるのが一番イラッとくると思う。
「残念でした、俺は違う色を選ぶ」
「何を選ぶんだ?」
「保護色に決まっているだろ!」
ああ、さらに店員さんたちが遠のいていく。
「その冗談もういいよ、二回までだろ」
「俺の捨て身の冗談をバッサリ切るな。少しはリアクションしろよ」
「さすがに三回目は面白くもなんともないぞ」
くそ~、流れからして言うべきだと思ったのに。仕方なく言ったんだぞ!
「結局どの色なんだよ?」
「まぁ、青色にしようかなと」
「そこは赤色とかにしとけば面白かったのにな~」
「永木は相変わらずしょうもない」
なんでこいつらに笑いのレベルを審査されなくちゃならないんだよ。そんな変わんないだろ、同レベ同レベ。
「んじゃ、さっさと買って帰るか」
三人で注文書を書いて購入しようとしていると女子が一人僕らの後ろに並んできた。しかも幸運なことにかなり可愛い、これは関係を持っておくべきだ!
いやこれが本命になるかも!
「こ、こ、こんちは。君はどんな制服にした?」
「あ、はい、こんにちは。・・・・・」
うん、さっきの聞こえてたみたいだ。確実に引いてるし。しかもテンパッタヨ。久々の女子との会話だし少し緊張しているのかな?よし、シャキッとしろ、俺!
「・・・・・あの、それじゃ失礼します」
そして、かろやかな足取りで去って行ってしまった。
「今の子おびえていたね~、永木を見て」
「結構ダッシュで逃げていたな、永木を見て」
「現実を突き付けるな~!」
せっかく「かろやか」とか使って少し表現を柔らかくして自分を傷つけないようにしたのに。まさかあんなにも必死に逃げられるとか思わなかった。
「ちぇっ、なんか失敗したな~。学校で会って気まずくならなきゃいいけど」
「もしかしたら同じクラスになったりして」
「そして、永木の変態をクラス中に言われて高校生活バットエンドとかな」
「なんか実際にありそうな予想をするなよ」
心臓に悪い。確かに僕が変態だって誤解は解いておかないと高校生活に支障起こしかねないな。入学式にでも探して誤解を解いておこう。そしてメルアドも聞いておこう。
「んじゃ、三日後の入学式は進夢の家集合な」
「なんで僕の家なのさ?永木の家でいいじゃん」
「いや、永木の言うとおり進夢の家だ。お前は入学式に来ない可能性がある」
「そうそう、俺らでお前を連行していかないとダメだからな」
「ナンノコトデスカ?ワタシハ、ガッコ、イキマスヨ?」
これで信じる奴いないだろ。しかも、どれだけベタなごまかし方だよ。
「とにかく、進夢の家で決定だ」
「引きこもりを舐めるなよ!」
「そんなことで威張ってどうする。じゃあ、入学式の日に」
「覚えていろ、変態紳士め!」
「変態紳士って言うな!」
まったく今日は変態、変態、変態ばっかりだったな。俺は紳士だっていうのに。
書いてあった分です