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7.絶望

胸糞悪くなります。

虐待が作中にでます。


 目を覚ますと、岩?見渡すと、洞窟のようだ。

 ……ちょっと、泣きそう。


「本当に、人間は弱いな」

「ああ、こんな脆弱な生き物が……」

「起きたぞ」


 3人の竜人が振り返る。

 落ち着け、落ち着け、大丈夫。殺すつもりなら、目が覚めるまで待たない筈だ。


「おい!真名を答えろ!」

「御自分は名乗られないのですか?」

「何だと!?」

「お前など直ぐにでも殺せるのだぞ?」

「では、殺せば良い。何か利用価値があるからこそ私を連れ出し、殺さず真名を聞くのでしょう?」

「くっ」

「おい、殺されない等と思うな。利用価値がなければ、生かしておく必要が無いのだから」

「では、何に利用されるのか尋ねても?」

「お前の獣人を呼び寄せろ」

「?」


 レビンを?


「分からぬようだな。お前にも益のある話だ。我々は人間の全滅を願っている」


 私の益?……全滅?!レビン一人で?!


「お前もそうだろ?潜入していたものに聞いた。お前は、父から虐待されていたな?その父が死んだ時、泣きもせず葬儀に参加したそうじゃないか。悲しむ事なく、憎んでいるからだ。

 お前は、人間が嫌いだろう?だから、国を出た。父親は死んだが、他の人間に復讐したくはないか?お前を気味が悪い、不気味だと蔑んでいた人間に。

 我が子達を逃す際にも、人間の追っ手に暴力を受けたそうではないか。感謝しているが、そんな人間達に復讐をしたくはないか?」


 なにをいってるの?


「我らは、人間を全滅させる。お前は、特例として生きることを認めてやろう。さぁ、真名を明かし獣人を呼び寄せろ」

「レ、虎の獣人一人でそれが叶うと言うのですか?」

「……お前は知らんのか?」

「?」

「確かにあやつは小国ほどは潰せるだろう。だが、他の獣人もだ。お前が、何の気紛れか解放してきた獣人共よ。お前の為に命を捧げる者までいる。お前が望めば、白虎を筆頭にその数6000以上が従うのだ」

「?!」

「あやつらは、そう密約している。知らなかったのか?」

「そん…な、事……」

「お前の真名で呼び掛ければ信憑性は増すし、直ぐにでも集まるだろう」

「先ずはその数で攻め入り、人と獣人の間に決定的な決裂を。そこからは簡単だ。つつけば人間共は容易に掛かる。他の獣人も無視出来ず迎え撃つだろう。力の差では、圧倒的に我らの勝利だ」


 いきが……できない……


「母親の命を奪い、父親から虐待され、周囲の者には不気味だと見下され、婚約者から捨てられ、誰にも愛されることなく生きてきたお前は、元婚約者や父親が死んだ時も悲しまず、お前は、人間が憎いのだ。

 人に相手にされぬから、我ら獣人に情けでもかけたつもりなのだろう?その傲り、実に腹立たしいが我が子を救ったのも事実。目を瞑ろう」

「……」

「我らが、人間を滅してやろう」

「さあ、真名を明かせ」


 なんて、こと。6000の獣人?

 知らない、知らない知らない!!

 人間と獣人を?

 私の、私のしてきたことは、こんな、こんな事に

 ……なんで……お父様……愛されない

 誰か、助けて。

 


 ……つぶれそうだよ。れびん

 これを知らしめたかったの?

 ほんとうは、わたしを――――?



 掛けられる言葉全てが、真っ白になった頭に届く。重過ぎて、大き過ぎて受け止めきれない。


 自分の罪が。私は、存在するだけで罪だ。


「何を黙る。優越感か?何故こんな者にあれだけの獣人が慕うのか分からん」

「解放しておきながら、自らも奴隷も求めたではないか。やはりここは我々だけでも……」

「いや、人間の国で奴隷をした奴は、どいつも手練れだ。無視はできない。使えばかなり早い段階で思う方向に向くぞ?」


 吐きそうだ。息がうまく出来ない。

 考えろ、考えろ考えろ!

 このままでは……例え私が居なくなっても、この思想でいれば、同調する獣人は増える。

 遠からず、戦争だ。

 考えろ!


「くっふふっ」

「どうした?あまりの嬉しさに笑いが出るか?」

「例え憎んでも同胞だろうに。お前の本性を知れば慕う獣人も減りそうだな?」

「ふふふっ。いえ、あまりに幼稚な考えで、可笑しくって」


 笑え!口角をあげ笑う顔をしろ!態度に余裕を!

 (胸が軋む。心が痛い)


「だってそうでしょう?人間の全滅などと、子供くらいじゃない?思い付くのは」

「何だと?」

「あなた方が、思うほど人間は簡単ではないわ。狡猾でしぶとく、生に貪欲なのよ。あなた方がつついたところで全ての人間が掛かると思うの?

 策にかかった人間と、あなた方が戦い傷つき疲弊しているところに、新な人間が一気に畳み掛け、獣人を踏み潰すでしよう。人間の強味はその数!

 あなた達は?本当に、全ての他種族と連携がとれるの?まず、エルフは無理ね。世界に森に影響がなければ動かない。むしろ、双方数が減れば、森の負担が減って喜ぶのかもしれないわね?もしくは、バランスが崩れるから、争いを止めるかも」


 思うところがあるのか、3人は渋面になる。

 何の言葉が正しいのか分からない。どの言葉が、戦いを止める事になるのか分からない。

 でも、やらなければ。

 (胸が痛い、心が壊れる)


「蛇族で一番の大国は、純粋な後継者ではないため、国を治めるだけで精一杯と聞くわ。戦いには率先して参加しないでしょう。

 人狼族は身体能力は高くとも、魔力耐性が低い。人間の魔力持ちがどれだけ存在するか知らぬわけではないでしょう?

 そして、私は、死んでも獣人達を呼ばない」

「こっの!」

「よく考えて。あなた達の、ガッ」

「黙れ!」


 バキッと音と共に、顔に衝撃が来る。

 視界が揺れ、蹴られたと分かる。

 ……大丈夫、まだ生きてる。意識もある。

 簡単に殺せる力があるのに、まだ生かし意識を奪わないという事は、言葉を聞くつもりがあるという事。

 単に、痛めつけるだけかもだけど。

 まだ話せる。

 (たすけて)


「……よく、考えなさい。どれだけの獣人があなた達に協力するの?人間の数は脅威。共通の敵が出来た時の団結力は強いわ。

 人間の国をよく見なさい。奴隷の数は減らない。逃がしても逃がしても、同じだけまた捕らわれている!獣人の力を奪う策が!対処法が!あるのよ人間には!

 潜入のために、わざわざ奴隷の振りをして供給する場を設けて待遇は変わっても、減らないの、よ」


 たすけて、だれか、もうげんかい


「……考え直して、人には弱いからこそ、脅威となる存在をどうするか常に考え対処をグッ」

「黙れ。お前はもういらない」


 髪を掴まれ、顔を上に向かされる。頚に手がかかり絞まる。

 言葉を間違えた。私には無理だった。


「やはり、こんなものに協力なんて無理だったのだ。所詮人間。人間の追っ手に殺されたとすれば、多少は決起するだろう」


 あぁここで死ぬのか。それも良い。

 もう、疲れた。願わくは、皆が馬鹿な考えを捨てるよう。止められなくて、ごめんなさい。


「し」


 目を瞑る。

 

「アーーシュッ!!」


 目を開け、声の方を見る。

 目に映る、四神の西を司る白虎神。

 神の名に相応しい、雄々しく美しい姿。

 そして、私の守り石のアメジストの瞳。


「れ、びん」


 一気に安心して、そして悲しくなる。

 あなたも望んだの?……ワタシはイラナイ。

 心にひびが入る音が聞こえた気がした。

 息苦しさから意識が遠のく。


「やめて!父様!」

「やめろ!お前達は、間違ってる!アーシュがどれだけ父親を愛してて獣人を好きなのか!一人でも傷付けばどれだけその心が傷付くのか、どれだけの人々に愛されてる存在なのか、全然分かってない!

 もう、それ以上アーシュを傷付けたら……俺が、許さない」


 レビンと、灰色のあの子?

 愛されてるナンテ……

 意識が途切れる。






お読み頂きありがとうございます。










作者、最近ジャンルが違うような気がしてならないのです。

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