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27.馬鹿な男。

レビンの独白になります。


※注意※男の勝手な言い訳的な、レビン像が壊れる可能性があります。



 今日、この世で一番大切で愛しいものが、

 この手から離れた。

 誰よりも幸せになる姿を切望していたのに、俺はずっとあの子を泣かせていた。

 あの子の何を見ていたんだろう。

 こんな思いをあの子にさせていたのかと思うと、自分が許せない。



 再会した時あの子は、色々な事に傷付いて押し潰されそうだった。それでもまだ他人の為に働くと言う。胸が締め付けられる。

 まだこれ以上自分の身を削るのか? 

 駄目だ。いい加減、自分の為に生きてくれ。

 お願いだから。


 故人を悼み巨大な樹に祈る姿は、今にも消えそうで思わず手を伸ばして抱き締めた。

 幼精の光に照らされ、涙を流すその顔は本当に綺麗で……絶対に幸せにしようと、勝手に今は亡きあの子の両親に誓った。


 二人で旅をした。

 とても楽しい。

 仲間や他の獣人から、会わせろとせっつかれていたけど、折角ゆっくり出来る時間なのだから、あいつらに会わせるくらいなら、もっと楽しい事を見付けて欲しかった。

 住まわせる土地は見付けていたけど、好奇心旺盛で何でも驚いて笑って感動してくれる姿をもっと見たくて、暫く旅をしようと思った。


 串焼き一本で満面の笑顔。

 結構、安い。

 もっともっと見たい! 


 俺が今まで見てきた素晴らしい景色も、幼子のように喜び、獣人の国では普通の事も、目をキラキラさせて聞いてきた。

 それでも、人間の国を憂いて嘆く事もあって、もうそんなこと気にしないで欲しかった。


 狭い人間の国から出てきたあの子は、毎日楽しそうでこのままずっと二人で旅をしたいと、するためにはと、考えても仕方無いことを真剣に考えたりもした。

 まるで家族。妹のよう。絶対、幸せにしたい。


 会わせなかった事に焦れた仲間が、強行手段で、あの子を拐っていった。

 男とずっと二人きりなんて、もっと気を遣え、同性の知り合いも必要だ! とぶん殴られ、それもそうかとゆっくり目に迎えに行った。

 まさかあんな事になっていたなんて、何故側を離れた?! チキショウ!

 助けたあの子は、助けに来なければ良かったのにと言った。ごめん、ごめんな? そんな事思わせる程の目に合わせて……。

 側を離れたくなくて、でも俺がいることで余計に自分を傷付けるから、扉の前で待っていた。

 泣いて、哭いて、自分も傷付けて、全て自分が悪いと思い込み追い詰められてる声を聞くと、胸が抉られた。

 静かになった頃に覗くと、泣き疲れて眠っていた。抱き上げようとしたら、握り締めた自分の手が血だらけなのに気付き、シーツに包んで持ち上げた。


 小さくて軽い身体、たくさん傷付いて泣けた。

 お願いだから、自分を責めないで。

 起きない程度に抱き締めて暫く頬ずりした。

 側に心配している俺が、皆がいることを体温で伝われば良いと、少し冷えた身体を抱き締め続ける。

 窓から抜け出した姿を見た時、俺を置いていくのかと、嫌いになったのかと悲しかった。


 その後、仲直り出来たけど、自分が誰にも愛されてないと、自分の存在が迷惑になると思い込む。

 違う違う! そんな事は絶対にない! 

 お前は、愛されてる! 

 どうしても教えたくて仲間と連絡を取って、証人を連れてきた。

 喜ぶかと思ったけどその通りだった。

 後に間違いだったと後悔したけど。


 父に会いたいと泣く姿や、獣人と人間の番を見て感動する姿は可愛くて、愛しい。

 頬を濡らして眠る顔は幼くて、保護者なら家族的な意味でなら良いよなと思って、愛してると額に口付けた。


 竜人のクソ餓鬼に目を付けられていたが、駄目だ。あんな奴では駄目だ。この子は任せられん。

 王子は駄目だ、王子は。

 

 幼い頃から面倒見て、今回証人を連れてくるのに手を貸してくれたブレンに、守役を代われと言われた。駄目だ。確かに空から拐われたが、あれは、あれは、リューだったからだ。もう油断しない。

 あまりにしつこいから、あの子を困らせなければ良いと言っといた。ブレンは、口が悪いから多分いや、絶対あの子を落ち込ませると思ってたら案の定。抱えて、即追いかけられない速度で離れた。

 後で、傷つける前に強く断れば良かったと、落ち込んだ顔を見て反省した。


 この子は俺が幸せにするんだ。竜人の王子でもブレンでもない。俺が、俺の……手で……?

 何てこった。この幼い子に、俺、惚れてる?

 駄目だ。俺では駄目だ。早いとこ、好いた男でも見付けて幸せになってもらおう。

 俺は、笑ってる顔を見てるだけで充分だ。

 

 俺が傷付くことが嫌だと言われ、全身で一人になりたくないと言っているあの子に、思わず惚れてると言ってしまった。ずっと一緒にいてあげるから、心配せずに顔上げて欲しくて、思わず。

 その後、俺を好きだと言ってきたが、分かってる。それは、勘違いだ。

 昔から、小さい子らの面倒を見てきてよく告白されたが、それと同じ。もっとたくさんの人と関わり接触していけば、皆、俺を忘れる。


 少し胸が痛んだが、ちゃんと視野を広げて欲しい。

 それに俺は、昔、人間をたくさん殺してきた。

 お前の同族を。

 獣人だし、たくさん人間の国から恨まれてる。

 応えるわけにはいかない。


 恐ろしい事に、あの子はまた他人の為に生きる道を選んだ。そんな事の為に、あの異種の番に会わせたんじゃないのに! 会わせなければ良かった!

 やめろ! やめろやめろやめろ!

 何でそうなんだ?! どうして? 

 自分が楽しめるように生きれば良いじゃないか?  もう充分だから!

 頼むから他人の為に身を削るのはやめてくれ! 

 また傷付く事になるから、お願いだから、もうこれ以上泣く姿は見たくないんだよ。


 ジエロに言われて、これがあの子なのかと、いつもこの道を選ぶのがあの子なんだと思い知った。

 なら、手伝うしかない。完璧な集落を作り、あの子に笑ってもらおう。

 あの子が手を動かす必要はない。今まで走り続けて来たんだ、今回は休んでてもらおう。

 全部俺がやろう。

 完璧に仕上げてあの子に見せよう。

 きっと満面の笑顔で喜んでくれる。きっと。


 集落作りは思いの外、手が掛かった。

 でも、大丈夫だ。

 俺の育ての親である大恩人の娘も協力者になった。

 獣人の職人との距離に戸惑っているようだが、フィンブルに自分で乗り越えなければいけないと言われ、見守るだけにした。

 いや、正直集落を整えるだけで手一杯で、あの子をあまり見れなかった。

 あの子なら大丈夫だと思ったから。

 

 一人で危険な奴に会いに行ったと言われ、爆発した。何故そんな危ないことを?!

 あの、空に拐われていった時の恐怖が甦る。

 またあんな目に遭ったらどうしてたんだ?! 

 思わずそれに惚れたかと口が滑った……いや、多分気があると聞かされ嫉妬した。

 俺は、間違えた。

 あの子に、一番辛い時を父親にされていた事を思い出させてしまった。

 何て事を。


 一人で、落ち込んでいると、アルムが見当違いな事ばかり声高に上げてくる。

 以前、ジエロにあの子の事を相談してるのを聞かれてから、少しおかしい。あの子を敵視している?

 貶める事ばかり言ってくるから、思わず殴りそうになるのを堪えた。

 早く出ていって、一人にしてくれ。

 流石に、恩人の娘は殴れない。

 何とか適当に話を流して、出ていって貰った。

 今日は眠れそうにないから、仕事をしよう。


 真夜中に、一人の獣人が慌てて入ってきた。

 あの子が行方不明だと。

 また、だ。また守れなかった。


 どこにいるアーシュ! どこに?!

 側にいると、ずっと守ると言ったのに!

 俺はいつも間違える。

 今度こそ拐った奴は生かしておかない。

 必ず助けるから!


 匂いを辿っても途中で消えている。

 まさかあのエルフかと思って、長を叩き起こしたが違っていた。


 あぁ! アーシュ! どこにいるんだ?!

 今度こそ見付けたら、もう側を離れるのは止めよう。

 俺の側で、俺の隣で、ずっと手の届く所に!


 夜食を見付けて、アルムとの会話を聞かれたと思った。ジエロとフィンブルに話し、皆に拐われた可能性より、自ら森に入って行った可能性が高いことを話した。

 アーシュに聞かれた事が、適当に話を返答していた事が後悔したけど、話すのも弁解するのも見つかってからだ。とりあえず、殴りたい奴等には殴られといた。自分も殴られたかったから。

 

 ひょっこり現れた時は、あまりに切望するから幻かと思った。一緒にいる奴は? 

 兎に角、抱き締めて存在を確かめたかった。


 手を伸ばしたら、いつも無条件で抱き付いてくるのに、一歩引かれ、悲しげな顔で見つめられ理解できなかった。 何故? アーシュ?


 話を聞くと、大精霊に気に入られ隠されていたようだった。この大精霊、気に入らない。


 兎に角アーシュと話したくて、二人きりになった。

 遅いけど、俺の側にいてもらうよう告白しよう。

 もう、こんな思いは二度としたくない。

 何よりお前が大事なんだ。


 話すアーシの言葉に頭が真っ白になる。

 言葉が上手く出てこない。


 違うんだ、ごめん、今更、お前が好き。


 二度と惚れたと言うなと言われ、何も考えられなかった。


 俺は、あの子の気持ちをずっと否定して、こんなに傷付けていたんだ。

 馬鹿だ。俺は、遅かった。

 ずっと間違えていた。

 たくさん傷付けた俺が言って良い言葉じゃない。

 

 確かにこの手にあったあの子は、他の奴に抱えられ、とても傷付いた顔をして出ていった。

 あの顔をさせていたのは、俺だった。

 


 今日、何より大切な存在をずっと傷付けていた事をやっと知った。

 今日、何より愛しい存在が俺の手を離れた。

 俺は、馬鹿だ。


 もう、俺にはアーシュの側にいる資格は、ない……?







お読み頂きありがとうございます。










何度も書き直したんですが……もしかしたら、内容を練り直すかもしれません。すみません。

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