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24.未知との遭遇

 眩い宇宙人は、足を捻ってしゃがんでいる私に手を伸ばす。未知との遭遇……。

 私は何も言わず、人差し指を出してみた。


「…………違います」


 少し怒気の籠った口調で言われ、手首をグイと引かれる。近頃の宇宙人は、感情豊かだなぁ。初めて見るけど。

 いきなり立たされたので、足首の痛みを覚悟していたら、痛みはなく腫れも赤みも無いようだ。

 ?確かに捻ったのに?あれ?


「足はどうです?」

「痛くないようです」

「それは良かった」


 私の手首を持つ存在を、改めて視界に入れる。

 簡単に言うと、目に優しい主張しない淡い黄緑光の、人型蛍光灯である。目に優しい。触れているので存在はするようだけど、硬いが木と同じ温かい手、高さは2m前後?


「足はあなたが?」

「はい」

「それは、ありがとうございます」

「いえいえ」

「……」

「……」


 この現実離れした状況に、頭が思考停止している。でも何を言えばいいんだ?正体知ったら上から光が注いで、円盤に乗せられる?

 私は思わず上を見たが、大きな木の枝と葉がミッシリ詰まって所々淡く光っているだけで、円盤は無い。


 フォレスト様、私の脳の許容量はパンク寸前ですが?


「もしもし?」

「ハッ!すみません」

「いえいえ」


 仕方ない、話しかけるか。

 どこか人間臭い謎の人型蛍光灯に向き直り、口を開く。


「私にチップを埋めますか?」

「……埋めません。そもそも貴女の言う宇宙人ではありませんし、円盤もありません」

「……まさか私の頭?」

「ある程度筒抜けです」

「げ。止めてください」

「分かりました」


 思わず否定的な言葉を言ったのに、あっさり了承され拍子抜けした。ずっと手首を持たれたままなので、私は手を取り直し木の根っこに一緒に座り、状況の分析と正体を探ろうと思い至る。

 こうなりゃとことん聞いてみよう!という気分だった。ヤケクソとも言う。


「質問良いですか?」

「はい、どうぞ」

「どちら様ですか?」

「ふふ。それを一番初めに聞きたかったです。私は精霊です」

「せ……いれい?ほんとにいた……」

「人間の国以外は、わりと存在を知られていますよ」


 目に優しい人型蛍光灯。

 精霊が本当にいるなんて。

 世界の創成者。私達人間の国では、エルフよりも幻の存在。どの種族にも偏って庇護する事を禁じられた意思のある自然。その性質は、非常に気紛れ。

 前世で言うところの古き神々ヤマトタケル等のような扱いだった。それが今目の前に……そして、突っ込み入る程の気安さ。


 ちょっと!人間、鎖国してる場合じゃないって!異世界かと思うほど、人間の国と外の国の常識かけ離れてるけど?!


「どうしました?」

「いえ、ちょっと人間があまりに阿呆なのが、ショックで」

「人間は、非常に臆病です。自衛の為なのでしょう。自らより強き存在は、化物とするかいないものして、己の精神や矜持を保つ。とても愚かで面白い自衛の仕方です」


 はは……それ、自滅って言いません?

 怒ってる?それ、怒ってるよね?

 

「怒ってませんよ?面白いと思ってます」

「また、頭見ましたね?」

「おや、すみません」


 全く心込もってない。まぁいいやもう、何でも来いだよ。私の頭から煙出てるよ絶対。


「その、精霊様が、私の前に現れたのは何故でしょう?」

「あまりに面白いので、話してみたくなりました」

「まさか、ずっといた?」

「はい。ここで休んでいたら、顔をグシャグシャにした女の子?が失恋したと嘆いていて、しかも相手は獣人!」


 ちょっとぉー?!私何口走ってた?!

 しかも、さりげなく女の子?って疑問系でしたね!


「とても面白いので、貴女の願いを叶えてあげようかと」

「願い?」

「えぇ」


 失恋したら願いを叶えてくれる精霊が現れた!

 理由は面白い!失恋したてにこの仕打ち!


 まぅいいや、どうしよう?

 世界から争いを無くす?いや寧ろ、争いない世界の方が歪だ。「いや、あの……」

 奴隷全解放?駄目、また直ぐ捕まる。

 人間の情緒の底上げ?異種族相手に向けられるとは限らない。「ちょっと?聞こえてますか?」


 ハーフの所在を教えてもらう?あ、救出は?だけど、また活発に実験されたら目も当てられない。「もしもし?」

 根本的な解決にはやっぱり、人間の異種族に対する嫌悪を和らげるは?これなら今後の努力次第で、何とかなるんじゃない?


「決まりました!」

「ああ、はい」

「全人間の、異種族にたいす」

「ちょっと待ちなさい」


 スパン。

 精霊様が突っ込みで叩いてきました。


「貴女の願いですよ」

「だから、私の願いを……また頭覗きましたね?」

「話を聞かないから。良いですか?貴女の為の願いです」

「だから、全人間の」


 スッパン。

 やや強めに突っ込み入りました。

 何なの?!これ幸いと、欲望にまみれた願いは叶えてもらえないのかしら?

 

「はぁ。欲望って……その願い叶えて差し上げたいですが、」

「だったら!」

「聞きなさい。それは現存する生き物達で、何とかしなければいけません。私達の介入はそこまで許されていない。特定の『お気に入り』を作る事は良いのですが、種族全体に関わる事は出来ないんです」

「えぇ~、良いと思ったのに(……けち)」

「何か?」

「いぃええ。では、どんな願いなら叶えて頂けるのですか?」


 思ったより精霊は、制限あるのか。この世界の管理にもルールはあるのだろう。


「先に言ったでしょう?涙を止めてあげると。それは新しい恋です!」

「……は?」


 いや止めろなんて言ってな……


「先程の涙が止まらないと言ってましたね?失恋には、新しい恋です。それによって、貴女の涙を止めてあげましょう!」


 いやだから言ってない……。


 フォレスト様?精霊って案外、俗にまみれておりますね?メッチャ楽しそう。


「はぁぁ。人の失恋を玩具にしないでください」

「そんな!可愛い女の子?が泣いているんです。慰めたいと思うのは自然では?私なんて如何です?」


 きっと記憶持ちなのがバレてるんだろうけど、いちいち『?』付けないで欲しい。それに新しい恋の相手が蛍光灯だったら、前世じゃ病院送りだよ。


「この姿は仮です。貴女の望む姿になりましょう。絶世の美男子、精悍で屈強な男、可愛らしい少女、何にでも変化出来ますよ?我々には性別はありませんから。心配しないで下さい。子を成すことも可能です」


 オイー!選択肢におかしなの混ざってたわ!

 子を成すって、致さないよ!


「さて、貴女の望む姿は……」

「は?え?ちょっと」


 話聞かないな!いつ承諾したのよ?!


 蛍光灯の顔がこちらをじっと見て、少しずつ輪郭が出てくる。嫌な予感しかしないんですが?

 ……案の定、出てきたのはやけにキリッとキラキラしたレビンでした……。まるできこりの泉に落ちた綺麗なジャイ○ン的な。

 恋愛フィルターかかったレビンは、格好良かった。


「おやまぁ、これは……」

「私の心をいたぶりに来たんですか、精霊様は」

「そんなことありません。まさかこれほどとは。補正が掛かってますが、正にあの虎獣人ですね?あれだけの仕打ちをされたのに、これだけハッキリクッキリ写し出されるとは、少し妬けます」


 フォレスト様!この精霊ぶん殴っても良いですか?良いですよね?

 きれいなレビンは、とても丁寧な口調で違和感が半端ない。


「まぁまぁ。何が良いですか?」

「本当にそんな願い事しか叶えてくれないんですか?」

「他にありますか?」


 元は表情も分からない人型蛍光灯の癖に、今はレビンの姿で妙に人間臭く肩を竦めて、やれやれという雰囲気を出した。

 何だろう?腹立つし、こっちが疲れた。


「あ……精霊様はお強いですか?」

「え?えぇまぁ。これでも創成の一人ですからね」

「私の、護衛兼師匠になってください」

「は?」

「探してたんですよ!武術の師匠!誰も相手にしてくれなくて!ついでに嘘に付き合ってください。一つとは言いませんでしたよね?」


 ハーフの救出のために身体を鍛え、闘う事を習いたかったが、誰に頼んでも駄目だった。

 

 私の願いを叶えろというならやってくれ!私で遊ぶな!師匠になってくれ、そしてその姿はやめろ、属性教えてと、説得という駄々をこねてたら、私はめでたく精霊様の師匠を手に入れた。

 師匠は、何故か属性は教えてくれなかったが、凄~く渋々承諾してくれた。


「真名は分かるけど、何故属性教えてくれないんですか?」

「魔法全般の知識はあるから、問題ないでしょう?それに、私の属性を貴女が使えるとは限りませんし、素養を見てからにします。それと、何故護衛と嘘?」

「はい。護衛ですか?私、レビン離れをしようかと思って」

「虎獣人と?」

「はい。いつまでも頼ると、全く見てもらえないことが分かったので、自分磨きをしようかと。

 まぁ、アルム……他の人とくっついたかもしれないから、今更ですけど。もしそうなら、逃がした魚はでかかったと凄い後悔して欲しいという、乙女心です。嘘はその、離れるための嘘です」

「ふむ」

「強い護衛兼師匠を手に入れたから、もう守らなくていいよと、言いたくて。すみません、師匠」

「まぁ、利用されてあげましょう。姿は何が良いですか?」

「流石太っ腹!何でも良いですよ。綺麗なレビンでなければ、師匠が楽な姿で。ただ、眠るときは発光抑えていただきたいですが」

「貴女……私をさりげなく対象外にしましたね?」

「だって師匠、完璧に私をそう見てないのは分かるし、私からしてみると、存在が大きすぎて神様のような感覚です」

「……それにしてはだいぶ扱いが……」

「えへ。親しみやすい神様精霊様です」


 だって精霊がこんなに気安いなんて、さっきの新しい恋とか言い出した時には、敬う気持ち70%減ですがな。


「思考読んでも良いですか?」

「やめてください駄目です」


 こうして私は、ア○ターの世界で不思議な発光体の師匠を手に入れた。

 ちなみに姿は、性別ナシの中性的な姿でエルフッポイ何かと勘違いしてもらえるように、白髪の水色目綺麗な顔になった。


 夜も遅いから、日が出てから出発しようとその場で寝た。

 翌日、大後悔した。


「ぎぃやあぁぁぁぁ!」

「何です?煩いですよ」

「し、師匠、くさ、腐ってるゥー!」

「?あぁ、ここは深部ですからね。夜冷える時は活動休止していたもの達が、外部を日で温められて活動し始めたのでしょう」

「ふ、腐界の森ィー!!」


 寝て起きたら、美しいア○ターの世界は、ぐにょぐにょうねうねドロドロのエグい腐界の森に変わってました。


「失礼ですね。ほら、行きますよ!貴女といると色々起きそうですからねぇ。楽しみです」


 私で遊ぶ気満々の精霊様。

 ちょっと早まったかな……。

 トラウマが新たに出来た日でした。




お読み頂きありがとうございます。

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