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18/30

18.告白

 虎の毛皮にぬくぬくと良い睡眠を得た私は、清々しい朝から、どうやって告白するか悩んでいた。


 朝食の為に、私は木の実をレビンは肉か魚を狩りに行っている。

 あっさり言ってみるか?押し倒し、いやそれは流石に夜じゃなきゃなぁ。

 夕方、言ってみるか!その前に、水浴びと浄化魔法かけなくちゃ!


 中身62歳は、惚れた相手への貞操観念少々壊れ気味である。


 【本日の予定】

 朝食→昼食→水浴び浄化魔法→夕方告白→押し倒し→あわよくば、にゃんにゃん(古!)


 惚れてると言われた言葉だけを頼りに、突き進んでみよう。素っ裸になれば、否が応にも異性として認識してくれるだろう……多分。

 でも、そんな対象じゃないと拒否されたら……いや頑張る。これから、一緒に居てくれるんだ何度でもアタックしていこう!決めたじゃない!一生かけて落とすって。


「ぃよっし!頑張るぞ~!」

「何をだ?」

「ぎゃぁぁぁっ!」


 振り向くとレビン!


「何でもない!何か聞こえた?」

「頑張るって聞こえた。あんま頑張りすぎるな、お前が張り切りすぎると周りが心配するから」


 仕方ないない子だなぁという風に、頭を撫でられる。

 あぁ、もう好きだ!心配が迷惑に聞こえなくもないけど。

 そういえば、レビンて何歳なんだろう?

 小さい頃から変わらないから、ずっとオッサンの認識だったけど……。


「ありがとう、程々に頑張る。ねぇ、レビンて何歳なの?」

「っ?!あ、え、な、何でだ?」

「小さい頃から変わらないし、何歳なのかなって」

「え、そ、う~ん」

「?」

「…………91」

「11?!」

「違う!91!」

「な、なんて事……休んで!何でそんな老体で狩りなんてしてるのよ?!馬鹿!

 もう人生残り少、し?え?少しなの?」

「落ち、落ち着け」

「嘘……本当、に?お爺ちゃんなの?後少しで死んじゃうの?や、だ、やだぁー!死んじゃやだー」

「あぁぁ。俺は獣人だぞ?落ち着け、な?」


 大混乱である。

 好きな男が超高齢だと混乱したけど。

 そう、勘違いでした。

 こちら寿命が、人間100~150年。

 獣人は、ピンキリだけど、大体200~ウン千年でした。

 レビンが少々言い淀んだのは、そろそろ本当にオッサンと呼ばれる歳にかかるかららしい。


「落ち着いたか?」

「う、すみませんでした」

「俺達獣人は、寿命が馬鹿みたいに長い奴がいるけど、まぁ大体人間の2~3倍だな。ちなみに、俺の種族は300~350年てとこか」


 バッと計算する。人間で言うところのアラサーあたりか!良かったぁ~!完璧恋愛対象だよ!本当に良かった。


「良かった。お爺ちゃんに無体を強いていたのかと思った」

「お爺……」


 あ、落ち込んでる。

 

「ほ、ほらレビン、朝食食べよ?ごめんね?勘違いして。レビンは若いよ~仕事出来るよ~良い男だよ~油がのって、これからの男だ~」

「油って気持ち悪いな……」


 おっとこっちではそう言わないか。

 頑張って誉めてみたが、レビンの気持ちは上がらず、端っこで腐っている。


 う~ん。この調子で夕方の告白大丈夫だろうか?


 とりあえず、これからの土地に関する事とエルフについて講義をしてもらい午後は過ぎていった。


 エルフの森は、ありがたい程制限がなかった。

 基本自由。自給自足となる畑や、乳獣(牛みたいなの)の飼育も、必要ならば狩りもOK。

 木も、ある程度までなら切り倒すことも了承済みで、冬は森の中の為比較的雪が積もらない。薪となる分は、切ってもいい木なら使ってもいいと。

 まぁ、実際はどうなるか分からないけど……何せあのエルフだし、あの非情種族だし!


「凄いありがたい条件ね。ふっ、実際はどうなるか分からないけど。薪用の木は、およそ生物の入れない場所に生えてるとか、終始監視され囚人のように管理されるとか」

「お前、本当にエルフ怖いんだな」


 可哀想な子を見る目でレビンが見つめてくる。だって、あの恐怖を払拭出来るエルフの良いところなんて見つからなかったもの!

 エルフの子を逃がす度、何故分かるのか迎えに来てたあのエルフ。毎度毎度、心臓が凍るほどの冷たい目線だった。


「いい?レビン!エルフの森は使えない可能性が高いわ!第2の土地も視野に入れて行動するわよ!」

「だ、大丈夫だから」

「氷漬け本当に怖い。エルフ怖いよ~」

「大丈夫、大丈夫」


 午後は私の心持ちが下がった。

 エルフと聞くと、拒否反応が出る。


「エルフって人間の間じゃ、憧れの至高の存在だと聞いてたがなぁ」

「はっはぁ!そんなのあの目で射ぬかれ、氷漬けにされたことないから言えるんだわ」

「お前、結構色んなのに暴力受けたじゃないか。それより怖かったのか?」

「凄く痛いなら自分で治癒出来るでしょう?エルフのは、何も出来ずに凍らされるのよ?意識はあるまま!冷たいし、動かないし本当に死ぬかと思ったんだから!」

「俺も何回かやられたけど、死なない一番優しい拘束魔法だぞ」

「当時は知らなかったのよ。例え知った今でも怖いの。でも、ちゃんと話してくれるんだったら、大丈夫になるかも」

「本当に駄目だったら、俺が間に入るし守るから」

「ふへへ。ありがと、頑張る。本当に好条件みたいだしね」


 レビンの言葉に少し気分が上がる。


「あ、レビン、私夕飯の木の実採ってくる!ついでに水浴びしてくるね」

「お前、昨日も湖行っただろ?今日は浄化だけにしとけ」

「やだ」

「何故?!」

「絶対いや。ちゃんと探知するし、防御もかけるから行かせて~」

「う、じゃあ俺も見張りに行くぞ?良いのか?」


 なんてこった!願ったり叶ったりだわ!

 ラッキースケベでも仕掛けて、レビンに意識させるチャンスじゃないの!


 思考が確実におかしくなってきている私は、気付かなかった。


「勿論!何なら一緒に浴びる?」

「なっ馬鹿!お前は女の子なんだぞ?恥じらいを持て、恥じらいを」

「持ってるわよ。失礼な」

「はぁ」

「さぁ!行こう」

「やれやれ」


 湖に来た私は、覗かれることもなくラッキースケベを披露することなく、普通に水浴びが終わった。ちっ。

 夕飯を食べ、レビンが今夜の寝床のために、乾いた葉っぱを集めている。


 寝床が1つしかない。まさかレビン気付いた?

 まさか寝床1つってそういうこと?!

 

 気付けば良かった。昨夜も寝床1つで獣身のレビンと眠ったこと。

 何故、断られることも想定しなかったのか。

 私の暴走行動で、まだまだ幼い子供だと認識され、私の告白が『お父さんのお嫁さんになる~』的なノリだと思われることも。


 私の頭は、確実に暴走していた。


「レビン、話があるの」

「ん?何だ?」

「私、私」

「……」

「私、レビンが好きです!わ、私と番になって下さい」

「……」

「……レビン?」


 レビンが、無表情で無反応。

 怖くなって呼び掛けてみると、とても苦々しい顔をして、はぁとため息をつく。

 そのため息で、身体がビクッと怯える。


 え?レビン怒ってる?


「アーシュ。ちょっとおいで」

「ん?」


 表情からは予想のつかない言葉に、恐る恐る近付いてみる。


「はい、ここに座って」

「え、うん」


 レビンの前に思わず正座する。

 私の前に、真剣な表情のレビンが座る。

 そして聞かされる内容に、浮かれた頭は叩き落とされる。


「いいか?アーシュは今頼れる存在が俺しかいない。お前は勘違いしているんだ。

 人間の国を出てからずっと一緒にいたから、俺を好きだと思い込んでいる。その思いは刷り込みみたいなもんだ。

 これから沢山の人達に会うだろう?その中には、必ず本気で好きな相手が出てくる筈だ。

 ちゃんと好きな男を作れ。それは俺じゃない」


 俺じゃない、俺じゃない。

 本気で好きな相手を作れ。

 思い込み、刷り込み、間違い……。


 聞かされる内容を噛み砕くのに時間がかかる。

 ぐにゃと、自分の顔が歪むのが分かる。

 笑って一旦やり過ごして、また再挑戦しようと思うのに、顔が上手く笑えない。


「……じゃあ何をしたら本気だと思ってくれる?」

「アーシュ?俺が好きだと言うのは、錯覚に近いもんだ。気持ちは嬉しいよ。ありがとう。俺もお前が大好きだ」

「じゃあ、番になって」

「いや、そうじゃなくて、」

「……嘘。ごめん。あ、言ったことは嘘じゃないよ?本当に、大好き、レビン。

 信じてもらえなくても、レビンと番になりたいくらい好きよ。番は、今は良いわ。必ずレビンから言わせてみせるから」

「ふ、そうか」

「えぇ。覚悟してね?」

「分かった分かった」

「じゃあ、おやすみなさいレビン」

「あぁ。おやすみ」


 野宿の辛いところは、部屋とかに一人で引きこもれない所だなぁ。


 泣いちゃ駄目よ。悲痛な顔したら、レビンが申し訳ないと思って離れちゃうかも。

 笑ってアーシュ。大丈夫。時間はまだまだあるわ。一回駄目だったくらいで萎むような気持ちじゃないでしょ?大丈夫、大丈夫。


 フワッとレビンが獣身になる。


「さて、明日にはジエロ達ご着くだろう。そこから、エルフの森へ行き場所の確認だ。忙しくなるぞ」

「えぇ、おやすみなさいレビン」


 深呼吸をして思考を切り替え、これからの事を細かく考える。

 泣かない、泣かない。大丈夫。


「おやすみ、アーシュ。良い夢を」

「……」


 横になった私に寄り添ってレビンも横になる。


 暫く経っても眠れなかった私は、少し泣いてしまう。身体の振動か息遣いか、気付いたレビンがより私を包む。

 




 振った相手が振られた相手を慰めるんじゃないわよ。馬鹿レビン。


 


お読み頂きありがとうございます。

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