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17.土地決定

 始まった。

 全速力で始まった。


 分不相応な野望の協力者二人を手に入れて、これから土地探し家や施設の建築、自給自足のための地盤作り、私自身の知識や戦闘能力の底上げ、ハーフの捜索・救助、異種同士の婚姻者への移住の打診等々……等々。

 気が遠くなる遠大な計画!

 凄く、凄く気合い入れた。

 入れた……筈だったんだよ?

 

 あの日から一ヶ月。現在、私は次々と建てられる建築物を見ながら、ぼーっとしてる。





 ジエロがお兄さんの協力を仰ぎに帰った後、レビンにこれからの事を決めようと相談した。


「ん?土地か?もう見つけた。借りる範囲は広がったけど、大丈夫だろ」

「は?え?いつ?」

「目星はつけてたんだ。その土地の所有者に承諾してもらうのに少し時間かかっちまったけど」

「は?そ、んな事何も言ってないじゃない」

「決まってから教えようと思ってな」

「あ、ありがとう?どこになるの?」

「エルフの森」

「……?…………??………………?!」


 エルフ……エルフとは、森の守護者であり、管理者。高潔なる白の民。世界の調整者。

 その存在は、この世界に種族と言うより、精霊か神に近い存在。他種族に偏って手を貸すことはなく、非情な程平等。一族と守護すべき森以外は関心も興味も無い。

 森や世界のバランスを見て、害有りと判断された場合、速やかに排除される。

 人間の非道な行いで、エルフの執行がいつか下ると恐れていた人もいた。

 最高の戦闘能力と魔力と寿命と知識を持つ、執行者。


「……レビン。何か夢を見たんだね?大丈夫、ちゃんと一歩一歩探そう。妄想もそこまでいくと笑えないよ?……ボケた?」

「ボケてないわ!いや、本当に」

「……」

「本当に」

「げゃあー!消される!消されるんだわ!エルフに!なんて所に土地交渉してんのよ!森に入った途端、即斬首!殺される!」

「お、落ち着け。大丈夫だ」


 事の異常さも、気にすんなよという顔でエヘラと笑う憎き白虎!

 両肩を掴み、カックンカックン振ってやる。


「私の人生お仕舞いよ。せっかく明るい未来に向かって羽ばたこうとしたのに。よりにもよって、エルフ!あの、非常に非情な他種族完全平等主義者に!」

「だから、落ち着けって」

「落ち着いていられるかぁー!エルフの子供を逃がした時に、私何回死にそうになったことか!あの冷たい目!一度氷漬けにされたのよ?!」

「おーそんな事もあったなぁ」

「いやー!また氷漬けにされるんだー!」


 思い切りトラウマである。

 傷が酷かったエルフの子を別邸で看病していたときに現れた大人エルフ。

 出会った瞬間、心臓が凍りそうな程の冷たい目を向けられ身体が動かなくなった。

 冷たくて、寒くて、解凍されたときは生きている喜びを噛み締めた。あの時、若干7歳の私。容赦ない仕打ちに3日寝込んだ。


「だ、大丈夫だ。もうそんなことは無いから。最近、急激に土や森の力が減ってるだろう?どこぞの国があちこち召喚しまくってて。だが、逆に森は力を溜め込み過ぎて澱み始めているんだ」

「は、はぁ……?」


 レビン曰く、現在、人間の国で現在ガンガン召喚が行われている。それのせいで滅ぼされたり逆に力を持ったりする人間の国が出てきている。それはどうでも良くて、問題はその土地や森。膨大な魔力が失われ大地の力が人為的に減っている。……申し訳ない。ホンットすみません。

 だが、逆に森の深い部分は、ずっと何者にも侵食されず力が澱み腐り始めて来ている。

 

「つまり……奥底には溜まりすぎた力あって、表面は力が吸いとられカッサカサってこと?」

「そうだ。今までエルフがずっと守ってきたが、そのせいで澱んでいる。まぁ、創世記以来だからそれも頷ける。何千億年前だからな。

 それで今回、深部の力を解放するためにも、他種族を森に入れて、風通し良くしていこうって訳だ。

 で、映えある第一号が、アーシュ達。森って言っても比較的拓けた所だし、エルフも気にはかけてくれるそうだ」

「私、氷漬けにされない?解放終わったら直ぐ追い出されるとかは?」

「されないされない!少しずつだから、解放も何千年かかる」

「何か条件とかは?」

「無益な殺生禁止くらいか」

「そんなのしないしさせない。

 というかいつの間にそんな交渉してたの?そんなに仕事出来るオッサンだったっけ?」

「久々だな!オイ。……俺だってちゃんと考えてるのに……」

「あぁ!ご、ごめん!だってずっとご当地の飲み食いしてただけだったから」


 私が慌てて言い訳を探していると、レビンはふと笑って頭を撫でる。

 

「ちゃんと考えるさ。大事なアーシュの事だからな」


 だ、大事って言われた。うへへ。


「それに、エルフが何かしてきても大丈夫だ。俺が必ず側で守るから」


 何か、良い雰囲気?

 こ、これは、告白のチャンスなのでは?!


「そんなにエルフを毛嫌いするもんじゃないぞ?何せ最高位の戦闘種族だ。お前を任せるのには充分過ぎるくらい良い男がわんさといるからな!」


 ……え?


「え?」

「俺もエルフ族だったら、安心して任せられる!エルフの長に頼んで見繕ってもらうか?最近人間と婚姻を結んだエルフもいるらしいし、アーシュの可愛さだったら引く手数多だろう!」


 あぁ、そうだね。……とても理想的な保護者だったね、貴方は。

 なんで惚れたと言った同じ口で、他の男を薦められるの?分かんないよ。


「あ、うん。そうだね、見繕ってもらうかぁ……でもその前に受け入れ場所の環境を整えなきゃね」

「その辺も心配いらないぞ?仲間に繋ぎをとった。住む場所も、建物も俺らに任せれば良い。お前は、ドーンと構えてれば良いんだ」

「はは」

「アーシュ?」

「安心したら、さ、お腹減った。木の実探してくる。ついでにお花摘み。覗かないでよ?」

「覗かねぇよ!あんま遠く行くなよ」


 洞窟を出る。走る。転ぶ。泣く。

 ガクンと手と膝を突き、叫ぶ!

 

「昨日と同じ状況だな!こんちきしょー!」


 成長しない私。こうなったらジエロの言う通り、寝込み襲うか……うん、襲うか!

 そうだよ。協力者が増えたってことはこの先二人きりは難しくなるかもしれない。

 今がチャンスなのでは?てか、今しかない?


「だけどどうやって?寝てるとこに服剥いていく?変態だよ、そりゃ。私が脱いでいく?寝ぼけてると勘違いされて逆に服を着込まされそう」


 さっぱり思い付かない。

 とにかく異性として意識してもらうために、抱きついて……いつも抱きついてる気がする。


「どうしたら良いんだー!?」


 結局、何も思い付かないまま木の実を採って帰る。戻ってからは、受け入れ場所作りの色気の無い話。いや、大事な話だけどさ。

 建物の建築や畑作りは、得意な獣人がいると。ハーフ達の捜索は、潜入している獣人に確認してもらい助け出す。異種婚姻者達には、人間の国や獣人の間に噂を流し、隠れて暮らしているだろう人達に耳に入るようにするしか手だてはない。隠れて暮らしているから、探すのは困難だと。

 私は何もせず待機……って、おかしくない?


「待機って。私、洗脳も解けるし奴隷の解除も出来る!だから、ハーフの捜索に加わりたい。受け入れ場所の基板が出来てからになるけど」

「ん~そうか、そうだな。どれだけの人数になるか分からんから、その人数が把握出来てから、アーシュの出番になるだろうな」

「参加、していいの?」

「駄目っつっても、止められないだろう?必ず俺と一緒な?」

「うん、うん!ありがとう!」

「さて、今日はこのぐらいにして、眠るか」

「うん」


 そうだ!


「ねぇレビン。い、いいい一緒に寝てもいい?」

「えっ?!……あっ!そうだな!いいぞ」


 一人合点がいったという顔で、レビンは虎の獣身になった。


「へ?」

「やっぱり昨日寒かったんだろ?今朝、体調わるそうだったからな。こっちのが温かい」

「あ、うん」


 体調悪そうだったのは、レビンの言葉に悶えてたんだけど。


「これから、忙しくなる。良く食って眠って身体を休めないと」

「あ、うん」

「よし、良い子だ」


 ぽふん。むにむに。

 肉球で頭ナデナデされる。き、気持ちいい。


「明後日にはジエロ達も着くだろうし、な」

「え、うん」


 そんなに早く来るの?北の大分遠い場所って聞いたけど?!

 レビンが後ろから、もっふもふで包んでくれる。


「おやすみ、アーシュ」

「へ、うん」


 この状況、どうしたら良いの?

 寝込み襲うって、初っぱなから獣身はハードル高過ぎなんだけど?

 言う?言ってみる?言葉だけ伝えてみる?


「レ、レビン?……好きです」

「……」

「レビン?」

「……」


 一世一代の告白に反応がない。

 ぐるりと、レビンの方に身体を向けると、ね、寝てる?!早い!

 髭の生えた頬っぺたをグニグニしてみるが、起きないし、鼻からプスープスーと寝息が聞こえる。

 知らないところで沢山動いてくれてたし、凄く疲れてるんだろうな。


「レビン、ありがとう。……大好きだよ」


 チュッと鼻にキスしてみた。

 明後日には来るなら、明日告白してみよう。

 今日は、もっふもふに包まれて眠ろう。

 レビンの毛皮に抱きついて、目を瞑ると思いの外直ぐ眠ってしまった。




 もそりとレビンの頭が動く。

 じっとアーシュを見つめ、はぁぁぁと深いため息をする。


「俺の身にもなれ、このドワーフもどきめ。……おやすみ、アーシュ。良い夢を」


 レビンはアーシュの頭にキスを落とすと、また大きなため息をつき、もそりとその小さな身体を抱え直し目を瞑った。







とある一つの考えと答え。


 アーシュがレビンと土地の話をしていたときに、ふとある可能性が頭を過る。


 森の深部が澱み、人間が召喚を始め、表面の力を使う。深部の力を解放するのに、私達他種族が入る。

 力は一ヶ所に留まらず、深部地表共に上手く巡る。

 遠大な計画だ。でもこの星、森からしたら時間なんて関係無い。

 何ていうか、手のひらで踊らされてるようなそんな気がしてならない。

 世界の存続のために、召喚が始まったのかも?異界人はもしかしたらその為に呼ばれているのかも?全てはこの世界の意思?

 

 突拍子もない考えに、少し目眩がする。

 召喚される異界人の絶望と引き換えに、この世界が……?

 いや、人間の国が馬鹿な真似をしてるのは事実。

 受け入れ場所に、異界人も住めるよう環境を整えよう。前世の記憶が、何か役に立つかもしれないし……もしかして、この前世の記憶も?


 やだ!怖い!凄く怖い!考えないようにしよう。





お読み頂きありがとうございます。

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