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16.友達

 レビンが、言う。

 お前には無理だ。

 人間のお前には、関係ない事だ…―と。


『…めろ諦めろ諦めろ諦めろ諦め……――諦めろ』

「あ、うぅ……ぅ」


 言われた言葉が、呪いの文言の様に繰り返し頭に響く。


『諦めろ諦めろ諦めろ……――』

「ぅあぁ……ぁ……くっ…ゃ、だ」


 苦しんでいるのに止まない。

 いつも助けてくれた人は来ない。


『ろ諦めろ諦めろ……――諦めろ』


 やだ、苦しい、煩い、助けて………

 バッ!


「うぁあっ!助けてレビン!」

「えっ?!俺!?」

「えっ?誰?!」


 …………。

 直ぐ近くにレビンがいる。しかも私が横になっていた耳の位置に、顔を寄せ口に手を添えている。

 目が合う。


「「…………」」

「お前かぁっ!!」


 ゴンッ!


「ぐぁ!」

「い゛っ!」


 考えるより先に頭突きを食らわした。

 二人で額を押さえて、ゴロゴロする。

 ……いつも通りの雰囲気に、違う意味でも涙が滲む。

 そんな私達に、ジエロのため息が聞こえる。


「アンタ達……何してるの?」

「いや、昔この方法で洗脳出来るって聞いたから」

「馬鹿なの?!お陰で魘されたわ!」

「洗脳出来てないっ?」

「出来るかぁぁ!」


 ……本当に、いつも通りで涙が出る。

 昨日のシリアス返して。


 まだ手伝ってくれるとは言われてないけど、戻ってきてくれた事に心に力が入る。

 よし、説得だ。


 少々気まずい雰囲気で朝食の干し肉のスープと果物を食べ、話をしようと顔を上げる。


「レビン!話があります!」

「うぉっ!お、おう」


 突然の声に、レビンがビクッとする。それでも、目を合わせてくれる事が嬉しい。


 私の守護石、アメジスト。

 説得する相手なのに、その目にホッとする。


「お願いします!私に手を貸して下さい!知識と戦い方だけでもいい、教えて下さい。

 私一人では無理なんです。今は自分の身すら守れない、人間の国で通用するものしか持っていない私には、レビンが必要なんです。

 だから、お願いします!何でもします!私には、レビンが必要なのっ!」

「……」

「お願いします。どうか……」

「熱烈な愛の告白みたいねぇ。ほらレビン」


 ジエロがレビンを促す。

 レビンの反応は返ってこないと思ったら、一言。


「……洗脳出来なかった」


 まだそれ引きずってるの?!


「……アーシュ、お前馬鹿だなぁ」

「……?」

「本当に、やりたいのか?」


 コクリと頷く。


「色んな事から解放されて、自分の為に面白おかしく生きたって良いんだぞ?むしろ、それを周りが望んでる」

「私が面白おかしく生きる為に必要です」

「ふ。本当に、馬鹿だなぁ」


 アメジストが、ふわっと緩む。

 頭に手を置かれガシガシ撫でられ、拒絶されなかった事に、温かい手にまた涙が滲む。


「あーあー、ほら鼻かめ」

「う゛ぅ~、で、でづだっでくでるの?」

「手伝うよ」


 ジエロがいるから、抱きつきたいけど抱きつけない。ただ賛同してくれた事の嬉しさと、男に二言はねぇな?逃がさんぞという意を込めて服の端を掴み泣く。


「あ゛、あり、がどう~」


 頭から手が離れ、身体全体がふわりと温かく包まれ背中をぽんぽんされる。

 気持ちを自覚する前はただ温かくてすがったけど、保護者ポジションが頭をチラつく……けど、嬉しいものは嬉しい!

 しがみついて、お礼を言い続ける。


「アンタ達……私を完全に忘れてるわね?」

「そんな事ねぇよ。ジエロ、フィンブルに連絡しろ。もう、隠しておけないからな」

「いいの?連れ去られるかもよ?」


 え?何に?


「拠点を決めたら会えるんだ。連れ去り……は、しない……だろう。多分」


 レビンとジエロが、不安そうに可哀想なものを見る目付きで私を見る。


 え?だから何なの?

 

「心配すんな?今度こそ絶対離さねぇから」


 ズドン。

 ……し、心臓が止まる。その台詞、破壊力があり過ぎる。


「あら?可愛い。真っ赤ね」

「おい?やっぱり洞窟で寝たから、風邪引いたか?」

「ぅ、ち、は、い」

 (うっ違う。離さないって言うから)


 クスクス笑うジエロと、オロオロするレビンと、離さない離さないと、頭でぐるぐる反芻してニヤける私で、洞窟内は異様な雰囲気に包まれた。


 ジエロ、レビンの事何でもないのかな?


 ジエロは、双子のお兄さんに今回の計画の協力を得に一旦帰ることになった。


「じゃ、またね」

「レビン、ジエロをそこまで送ってくる」

「俺も行く」


 話すチャンスだと、ジエロを追い掛ける。

 ついてこようとレビンが立つが、それじゃ話が出来ない。


「だめ!」

「な、なんで……」

「えっと、女同士の話がしたいから」

「うふふ~。レビン?大人しく待ってなさい」

「くっ。連れてくなよ」

「ホホホホホッ」


 だから、さっきから連れ去るって何なの?

 渋るレビンを置いて洞窟を出る。


「さて、何が聞きたいの?アーシュ」

「たくさんあるんだけど……最初に、」


 私はジエロに頭を下げる。


「協力してくれて、ありがとうございます。私に手を貸すなんて、人の身でおかしな計画を立てて巻き込んで……レビンみたいに怒るのが普通なのに、何も言わず協力してくれて、本当にありがとうございます!

 私に出来る事なら何でもします。ビシビシ鍛えてください!」

「ちょ、ちょっと待って」

「え?」

「レビンが何故怒ったのか分かる?」

「人間の癖に馬鹿な計画立てたから?」

「……」


 ジエロがポッカーンとしている。

 美人ってどんな顔でも美人だなぁ、と呑気に思っていたら慌てて口を開く。


「何て言われて人間の国から連れ出されたか考えた?」

「やりたいことやれ?的な?」

「あぁ……」


 頭が痛いという風に、項垂れるジエロ。

 そこから、マシンガントークが飛んできた。

 曰く、私が他者の為でなく自分の為に生きて欲しいこと。

 曰く、やりたいことは、恋して結婚したいとかそういう女の子としての幸せを見付けること。決して、半獣(ハーフ)の為に人生捧げる為じゃない。

 曰く、曰く……――


「ぇえ?」

「アンタ達、普段どんな会話してるの……」

「う。じゃあ、レビンは、」

「アーシュが未だに他者のために動くことが嫌だったんじゃないの?」

「ぉう」

「アンタ達、会話が足りないわ」

「う、うん。でも、手伝って貰えるのは凄く嬉しい!ジエロ、ありがとう!」

「……う~ん。やっぱり連れ帰りたいわ」

「だから、それ何?!」


 聞いても教えて貰えなかった。ただ、フィンブルと嫁に気を付けろと意味不明な言葉を貰った。


「あ、後さ、ジエロさ、誰かいい人いるの?」

「え?あ~、そうね。私の初恋はレビンよ?」

「えっ?!」

「ふふっ。私と張り合える?」

「……は、張り合う。色んな所既に負けてるけど、負けない!」


 主に乳と顔が!言ってて悲しい!


「くっふっふふふふ」

「ジエロ?」

「安心したわ。ちゃんと女の子してるじゃない。大丈夫、今のレビンに塵ほども気持ちは無いわ」

「え?」

「アーシュ、貴女はそのままで大丈夫。なんなら寝込みを襲ってしまいなさい」

「え?」

「アーシュ、貴女の幸せを私は願うわ。貴女の望みを叶えたい。貴女は貴女の価値を知るべきね。あの馬鹿がちゃんと教えてやらないから……」


 最終的に、レビンの悪口になっていった。


「ジエロは、もうレビンの事?」

「いらないわ」


 そこまで?!


「レビンは、自分は獣人だから他の男と幸せになれって……」

「なってしまいなさい」

「えぇ?」

「それか寝込みを襲ってしまいなさい」

「ま、またそれ」

「そこまでしないと、あの馬鹿は動かないし気付かないわよ?」

「ぅぅ…」

「ま、時間の問題よ。大丈夫。また悩んだら相談にのるわ」

「ありがとう!本当に色んな事ありがとう!」


 私に恋バナ相談できる友達が必要!


「ジエロ、私と友達になってください。お願いします」

「……貴女、本当に変わってるわ」





 私は、女友達をゲットした!!



 これから、色々忙しくなる。

 頑張るぞ!






お読み頂きありがとうございます。

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