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13.レビンのくそバカ

 ニパーッと、牙剥き出しの鼻に皺寄せ凶悪顔の、満面の笑みで放たれた一言を飲み込むのに、時間が掛かって尚もレビンが話す。


「お前に惚れてるから、お前が死ぬまでそんなの作らんぞ?だから気にすんな」

「ぇ……ぁ……?」

「それより、お前何か話したいことあるだろ?ブレンが近くにくると話やめてたし。何だ?何かあるのか?」


 それより?え?何?どゆこと?


「惚れ……?」

「ん?あぁ、うん。惚れてるぞ」


 何?何なの?この色気の無い告白…。

 惚れてるってどの分類?人間性?異性として?

 でも死ぬまでって。


「惚れ……」

「あぁ、安心しろ。俺は獣人だ。

 お前とどうこうなんて考えてないから。お前が幸せになるなら、お前がちゃんと惚れて好いた相手と添い遂げられるよう手伝ってやるからな!」


 ……え?ますます分からないわ?

 獣人だから?私が人間だからダメ?

 私が他のとくっついてもOK!って言ってるの?惚れてると言った口で!?

 

「意味不明なんだけど?」

「ん~。簡単に言うとだな…お前が幸せなら何でも良いんだ!俺は」

「……私が人間だから、恋愛対象にならないと?

 ……何よそれ。だったら、惚れてるとか言うんじゃないわよ!ぼけぇっ!!」

「えっ?!な、何怒って」

「お前の幸せ~?そりゃ、どこのお父さん発言だ!

 私の父さんは、前世の三郎と現世のギルベルトだけよ!これ以上増えて堪るかっ!」

「お、おぉ」


 何で、私こんなに腹立つの?

 何で、私こんなに悲しいの?


「ハッキリ言えば良いじゃない!

 感情的に話す人間の女が!

 ひ、貧乳の人間の女が!

 中身62歳の気味の悪い人間の女が!

 に、人間の女なんか私なんか恋愛対象にならないって、ハッキリ言えば良いじゃない!何よ!知ってたわよ!くそバカ!」

「く、くそば」

「あったま来た!冷やしてくる!湯浴みすんだから近寄んな!」

「お、おぉ」


 鼻息荒く、避難していた洞窟を出る。

 川がどこにあるか分からないけど、感情のままに走って走って走って、木に激突した。


「い゛っ!前方不注意……いったぁ」


 木に激突した額を押さえ、その場に踞る。痛みと共に、滲む涙が堰を切ったように溢れてくる。


 またやってしまった……。感情爆発。なんて面倒臭いんだ私は。

 でも、おかしいじゃない?惚れてるって言ってくれたのに、獣人だから人間だから、他所の男と幸せになる手助けするって。

 獣人と人間が幸せになったサラ達を見てもその意見が出るなんて、完璧に私はその対象じゃないと言ってるんじゃないの!

 お前が幸せなら何でも良いなんて、


「本当、父親ポジションじゃない……あっ!だから兄?ハハ、最初から言ってたわ」


 こんなおかしな考えが出るのは、リューさんが変な事言ったからだと思いたい。けど……。

 

「私は?ドッキドキと寂しさが足りないと思ったけど、それどころじゃないわ。胸が……締め付けられて、苦、しいや」


 あぁそうか。参った。

 私、レビンが好きなのか……。


 自覚したら、ちょっと虚しくなって、泣いた。


「はぁ。参ったなぁ……見込みないじゃない。何よ、他の男と幸せになれって。あんたが幸せにしなさいよ」


 お父さんをどうやって恋人にするか……犯罪臭がすから、お父さんはやめよう。

 自称保護者にどうやって恋愛対象として見てもらうか……。


 私は立ち上がり、川を探しながら考える。

 落ち着いてみると水の音がするから、近い筈だ。川にでも飛び込んで、スッキリしてから戻ろう。


 川でなく湖を見つけた私は、周囲に気配が無いか探知魔法をかける。誰もいないことを確認し、乾燥の魔法が使えるから、下着姿で入る。

 下着と言っても手縫いのふんどしモドキと、袖無しチュニックみたいなもの。夜なべして縫ったわ。


 そういえば貴族だった時、コルセットとクリノリンを着けドレス着た時は人として大事な何かを失った気がするなぁ。ノーパンだったから……。

 一人で用も足せない服開発しないで欲しいわ。あんなのこの世界でも流行るとはね。

 ウェスト細くとか宇宙全人類の女の夢なのかしら。トイレ行きたいの死ぬほど我慢して膀胱炎になりそうだった……。

 ちなみに、ノーパンに耐えられない私はふんどしモドキを縫って着用。


 ……あぁ、脳がレビンを考えることを拒否している。何でパンツの事なんて思い出したのかしら?


 空を見ながら、プカリと浮かぶ。

 あ、雲がパンツの形……。


「……アホらしい。いっそレビンが好きだから貴方が私を幸せにして~とか、言ってみる?……真剣に諦めるよう説得されるだろうな。それは流石に今後に響く。一緒にいれなくなりそう」

 

 それは嫌だ。

 色仕掛け?いや、前世でもやったことないよ。


「惚れてるって、違う。そんなのただの庇護欲じゃない。レビンのくそバカ……」


 また泣きそうになって、潜水する。

 透明度の高い湖だ。肉食魚防止に防御魔法も掛けている。魚がいたら夕御飯に持って帰ろう。


 尾が2本の魚がいたときは、何をどうしたらそうなったのか、ダーウィンに会いたくなってしまった。過去の偉人だけど。


 10m程潜った辺りで、目の端に黒い長い何かが動いた気がした。


「?」


 かなりの大きさに感じた……。まずい、この防御では防ぎきれないかも。急いで岸まで泳ぎ、何とか陸まで上がり振り返る。


「はぁっはぁっは……気のせい?そういえば、地上だけしか探知掛けなかった。ボーッとし過ぎたわ」

「そうね」

「ひゃっ…むぐっ!んー!んー!」


 一人言にいきなり後ろから返答があり、驚き叫ぼうとしたら、何かに口を覆われる。


「ちょっと煩いわよ?別に取って食おうって訳じゃないんだから、落ち着きなさい」

「ふ…む?」

「久しぶりね、アース様?」

「む?」

「今は、アーシュ様ね?」

「むん」

「ん~!あぁ会いたかったわ!」

「ぐっ、ぅうー!」


 聞こえてくる言葉に、腕が身体に回り締め付けられる。口も塞がれ、かなり苦しい!

 訴えるとその人は私を解放する。

 目に入った人は、褐色の肌に長い黒い髪を一つに縛り紅い目をした美魔女だった。


「わぁ、妖艶……」

「あら、ありがと」


 褐色の肌に映える金糸入った光沢のある白いシャツを着て、黒のパンツスタイル。


「褐色のオス○ル様(古?)……」

「だぁれ?」

「あ、漫画、じゃなくて物語の主人公です」

「ふーん。ねぇ、アーシュ様。服着ないの?」

「あっ!」


 突然の美魔女に忘れてた!

 急いで乾燥をかけて服を着る。服を整え、美魔女に振り向く。


「あの、私の事知って?」

「知ってるわよ。ずっと会いたかったわ。こんなに立派なレディになって……」


 レディ!こんな綺麗な人にレディって言われたわ!皆散々変わってないだの成長してないだの言ってたのに!嬉しい!


「私の可愛いドワーフ」


 あ゛ぁ?


 有頂天から思いきり叩き落とされた私に、美魔女が近付き匂いを嗅いでくる。


「え?」

「あら、やっぱりレビンといるのね?それにブレンまで?」

「えっ?匂い?分かりますか?」


 そんなに臭い?!


「私達獣人は分かるからね。消したいなら最低3日は離れて身に付けたもの捨てなくちゃ」

「そんなに?!あ、ところで貴女は?」

「あらやだ、ごめんなさい。私はジエロよ。覚えてる?」

「う、ごめんなさい」

「良いのよ。凄い人数だったから、覚えてないのも無理無いわ。でも、確実に貴女に助けられた一人。助けてくれてありがとう」

「いえ、」

「さて!レビンの所に行きましょう?ブレンは要らないけど」

「あ、はい。ブレンネスとはもう別れました」

「そうなの?あのくそ餓鬼に会わないで済むなんて本当に良かったわ~」


 ブレンネス……あんた対人関係相当だね……。


 私は、美魔女と連れだってレビンの元に戻る。

 レビンに何か用があるのかな?


 顔合わせ辛い!!

 どうしよう……。






 うんうん悩んでる私をジエロが、ジッと見ているなんて気付かなかった。





お読み頂きありがとうございます。

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