11.愛してる
99(適当)%会話。
愛でる会……いつの間にそんなものが……ちょっとショックで立ち直れない。
獣人て、獣人て……変なのばっかりだよ。
気持ちを切り替えねば。聞かねば、気になる言葉が聞こえたから、
「愛でる会に関しては、後々ジックリキッチリ聞かせてもらうわ。それよりサラ?」
「はい、お嬢様」
「知ってたって言ったわよね?逃がしてたこと」
「……はい」
「何故?いつから知ってたの?何故、知ってたのに、そのままにしてくれたの?」
「お嬢様、それにはまず、旦那さまのお話から聞いて頂く必要があります」
「お父様?」
「はい」
思わぬ人が出てきたが、知りたい。あんなにお父様に嫌われていた理由がもしかして……お父様も知ってたの?
ぐるぐる頭で考えているとあり得ない言葉が聞こえた。
「旦那様は、お嬢様を愛しておりました。お嬢様の事を常に心配なさり、いつもお嬢様の事を見守っておられました」
「……?……あり得ない」
「いえ、事実です」
「あり得ない!お父様は、だって、いつも、」
「お嬢様の為を思っての事だったのです。旦那様はお嬢様が、奴隷解放を願っているのをご存知でした。ですが、人間至上を説く国では、それがどれだけ難しいのかも。」
「……」
「そんな中、お嬢様が外で倒れて、公爵家に何度も運び込まれるようになって、お嬢様は夢遊病のようなものと、仰られてましたが……」
確かに当時、全部夢のせいにしてたけど。
「旦那様はご存知でした。夜こっそり抜け出して、奴隷を逃がして、魔力枯渇を起こし倒れていることも」
「な、んで?」
「ずっとお嬢様を見ていたからです。旦那様は仰いました。人の国で、お嬢様の考えは危険だと。周囲に少しでも知られれば、直ぐ排除対象となる。考えを持ち続けるならば、少しの甘えも隙も見せずに、生きていくしかないと」
「……え」
「幼き頃の考えならばと、考えを変えさせるために、非常に厳しい教育をなされました。ですが、お嬢様の意思は、変わるどころか益々強固に。
旦那様にも奴隷解放を説くようになり、旦那様はとても恐れました。その思想が外に少しでも漏れ、お嬢様が排除対象になる事を」
「……」
「ですから、旦那様は非情になりました。我々使用人にも、徹底して情報を隠すよう教育し、お嬢様には、家族にすら甘える事も隙も見せないよう、常に仮面を付け、外す事を許さぬよう……体罰を。
何より、王子が婚約者となった時からより厳しくなさるように。将来、王子が家族になるから、あの阿呆に知られたら、御し得る前に排除されるだろうと心配なさって。
……悩んでおられました。王妃と言う座につけば、国の政治にも口を出せる。お嬢様の夢に近づく一番の近道。しかし、その環境は一分の隙も無く過ごし、常に監視されお嬢様の夢には敵しかいないような環境」
「あ……」
「ですが、お嬢様は表に出る部分は、完璧に公爵令嬢を務めあげました。ですから、旦那様は、夢に近づけるよう王子との婚約を決めたのです」
「そんな……嘘……」
「これが証拠です」
信じられない私に、サラが一枚の羊皮紙を渡す。それは、婚姻契約書。本人と証人の名を書き、教会へ提出するもの。
「証人の欄と、夫の名を」
夫となる者:ベック(コヨーテ族)
妻となる者:サラ=リングル
婚姻事実を証明する者:ギルベルト=ラングシナ
「コヨーテ……お父様の直筆と領主印?そんな、まさか!?」
「ギルベルト様は、私の事も知っておりました。私が、コヨーテ族であり、獣人である事を」
「っ?!」
「ギルベルト様は、仰いました。
『この婚姻契約書は希望だ。娘の夢であり、希望が詰まっている。もし夢に破れ困難となり、娘が落ち込んでいたらこれをみせてくれ。きっと喜ぶ。親である私は、子供の夢を応援するものだ。私は、お前達を祝福する。おめでとう』と。
娘のためにも、絶対別れるなとも言われました」
「……あ、そんな……お父様、私を娘と」
「いつも、ハラハラしておりました。旦那様の言い付けもあって、使用人一同お嬢様に冷たく接して参りました。申し訳ありません。城で暮らすようになれば、今より厳しい環境なのだからと。皆、お嬢様の事が大好きでした。
旦那様が、お嬢様の精神は強く、必ずや耐える事が出来ると呪文のように繰り返し、鞭で叩かれている時は辛そうでした」
「お、とう、さま」
「旦那様は、お嬢様をとても愛されておいででしたよ。何時だったか、政治に関する質問にお答えになった際は、ウチの娘は天才だ!と喜んでおられました」
熱出して寝込んでます。
脳の許容量を簡単に越えた私は、サラ達の話を聞いた夜、倒れてた。
レビンは、リューさんにぶん殴られてた。
「安心させるどころか、精神的負荷がかかり過ぎて寝込んだだろぅがー!このボケェ!」
飛んでった。リューさん最強、納得。
レビンは、その後ずっとオロオロしながら看病してくれている。
「ごめんなぁ、愛されてる事知ったら、元気になるかと」
「……レビン」
「んー?」
「ありがとう。ただ、もう少し小出しにして欲しかった……」
「すまん」
しょんぼりしている姿を見て、笑いそうになる。
「レビン?」
「ん?」
「お父様の形見埋めちゃった」
「お前が、形見だろ?親父さんの全部の思いが詰まったこれ以上ないほど、親父さんが愛して生きた証だ」
「……っ。レビン」
「ん?」
「会いたい。お父様に会いたい。会って謝って、謝って、感謝を……お父様にあいた、いよぅ」
「うん」
「私が、もっとうまく出来てれば……」
「充分だ。頑張り過ぎだ。親父さん、ハラハラしてたって言ってただろ?」
レビンにしがみついて泣いた。
最近、泣き過ぎてミイラになりそうだけど、涙は止まらない。その間も、またレビンが泣かせてくるから、
「アーシュ、大丈夫。お前は愛されてる。たくさんの人に。生まれてくれて、その夢を持ってくれて、俺はすげぇ嬉しい。
アーシュと会えて、すげぇ嬉しい。親父さんも、お前が生まれて、夢に向かって進む姿を応援できて幸せだったよ。皆、お前を愛してるから」
ビャービャー泣いてまた熱上がって、レビンはまたぶっ飛ばされていた。
「レビン」
「駄目だ。もう喋るな。また泣いて熱上がったら、永遠に治らない」
「愛でる会って何?」
気まずそうに、目線を反らしたレビンは、あーうーとか言いながらポツポツ話す。
何でも、一番最初の逃がしたメンバーが筆頭となり、奴隷を助ける子供がいるから、手を出すなと説明しまくった。
本当にその子供が来るから、助けられた獣人や、その家族などが私を心配して、人間の国に浸入したりするため、定期的に瓦版のような情報を流していたらしい。いつの間にか、その子供に何かあったら手助けしようと約束されていったらしい……。
その数、今や8736人。
あ、熱上がりそう。暇だな!獣人!情が深すぎだよ!
「ドワーフは?」
「あー、最初、人間とは思えなくてな。似てる生き物がドワーフだったから……公爵家の庭に住んでるドワーフもどきって……」
「……回復したら、私もぶっ飛ばす」
「え゛」
夢で、お父様に会えますように。
「愛してる。アーシュ」
額にオヤスミのキスを落とし、聞こえた声は、夢のお父様か、誰かか……。
直後のレビン
(やべ!言っちゃった!)
ヒーローは……へたれびん。
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