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1.守護石

1話目は、短編と同じです。

「ねぇ、オッちゃん」

「オッちゃん言うな。坊主」

「じゃあ、オッサン」

「おい」

「僕さ、人間やめたくなってきた」

「坊主がそう思う事なんてないぞ?仕方ない事だった。あれがあの子の運命だった」

「仕方ないなんて、運命なんてクソだ。もし、運命だったら、僕がここに居る意味は…。

 僕がもっと早く、もっと沢山…ぇっく…何の役にも立たない。こんな知識も無駄だ。僕は僕が…」

「坊主。助けられない命は絶対ある。俺だって、何度も助けられなかった」

「オッサンでも?」

「おい。まぁ、大事なのは救えなかったから、出来なかった事を悔やんで立ち止まるより、じゃあこれからどうするかを考える事だよ」

「ありきたりだけど、良いこと言うね。

 じゃあ、僕は――――」

「お前、本当に6歳か?」

「見て分かんないの?ピチピチの6歳だよ」

「こんな6歳やだ」











 私は、転生者である。

 アリアーシュ=ミラ=ラングシナ

 現在、元公爵令嬢。


 巷で流行りの濡れ衣ざまぁをかまされ、修道院に送られる明日を待つばかりの身。

 やっと心穏やかに、自分として過ごせる。

 そう思っていた時、執事が突然部屋に入ってきた。そして、口を開く。


「だ、旦那様が…いえ、王城に住まうほぼ全て…王族を含め国の中枢を担う方々が、全員亡くなりました」


「…は、はあぁぁぁっ?!」





 私は、ここイーストゥーリャという世界で生を受ける前に、日本で生きていた。

 享年45歳。恋人はいたが、結婚すること無く、仕事に生きて、それなりに楽しかった。最後の記憶は、視界いっぱいの二つの光。


 イーストゥーリャでは、人間は世界の半数を占め、人至上主義を掲げ、他種族を蹂躙している。

 魔法アリ、剣アリ、魔物アリの世界。

 精霊、獣人、エルフにドラゴン。ファンタジーが、ぎゅっと詰まった世界だ。


 ここでの最初の記憶。

 目が覚めると、ぼんやりした視界と思考。はっきり自覚したのは、一歳の頃。余計な記憶が邪魔をして、優秀だが気味の悪い子供として扱われた。

 母は、出産に耐えられず亡くなり、父は、妻を殺した気味の悪い子供との認識で、機械的に必要最低限の接触しかしてこなかった。

 何とか親子として、父に働きかけたが、一桁の歳の子が、どの様に甘えたり接したりするのか分からなかった私は、やり過ぎて余計に不気味に思われた。2歳の子が、横領ダメとか言ったら、引くだろう。改心させたかったんだけどな。

 結果、父との間に深い溝が出来、私を駒としか見なくなった。大人しく従順であれと、鞭打ちされる事も少なくなかった。

 政略で第一王子との婚約も決まり、私は、10歳で、自分を殺して生きていく覚悟を決めた。


 まぁ17歳になり、さぁ結婚かとなった時、よく分からない聖女と称される女の子が、王子を寝取り将来有望な子息達を落として、私を嵌めた時は、この国駄目だわと思ったけど。


 しかも、領地を広げるために、他種族を殲滅出来るほどの存在を召喚しようなんて言い出して、それだけは止めようと画策してた私は、露見し、召喚を止めるなど反逆罪だ!と罰を受け、縁切り修道院送り…。

 だって!召喚て、あれ、誘拐ですから!

 本当、駄目だわ。この国。


 元々、人間至上主義の考えにも、ついて行けなかった。そこら辺も、父との溝を深める事となったのだけれど。奴隷良くない、他種族必要、皆仲良くと、3歳の子供から言われても、はぁ?としか思わないだろう…しくじった。

 あぁ。出来るなら、人に会わず自給自足で、山にでも住みたい。




「…どういう事なの?」

「はい。先日行った召喚術で、黒い髪と瞳を持つものが現れました。キナコ=モチと名乗りましたが、隷属出来ず逃げられたそうです」

「ん?」

「さぞ高い魔力かと、捜索中だったのですが…

 昨夜、王子と聖女の婚約発表を兼ねたパーティーで、参加していた主だった者、全員殺されたそうです。黒い大きな狼に。しきりに、キナコ様と口にしていたようで、召喚関連の報復の可能性が高いと考えられます」

「はっ?」


 絶対日本人だよ!その人!しかも、きな粉餅って!絶対偽名!何でそのチョイス!?その人、大丈夫かな?敬称付けで、復讐してくれる強い狼がいるなら、大丈夫かな…?


「婚約発表のパーティーには、他国の招待客もいた筈、その方々は?」

「無事です。ですが、王族を含め要となる貴族が消された事を知っているので…」

「…乗っ取りね。確実に吸収されるわ。一番近い所なら、3日で。

 被害は、王城のみなのね?領民には、危害を加えられていないのね?」

「…はい。お嬢様、どうされますか?」

「私は、もう明日には平民の身です」

「ですがそれは!あの聖女などと呼ばれる女が!」

「良いのです。今の私が、この国に対して出来ることはありません。せいぜい、民には優しい国の属国となることを祈るだけです。」

「お嬢様…」

「それから、新たな体制が入れば、当主もいない公爵家は取り潰される可能性が高い。

 さぁ、あなた達も、身の振り方を考えなさい。

 紹介状が必要なら、代理で書くわ。修道院に行く日までは公爵令嬢だし、ここもまだ公爵家でしょうから。それから我が領地のために、手を打たなくては」


 ぶっちゃけ、あいつ等の尻拭いしたくないし。

 国相手に、平民墜ちした元公爵令嬢が、相手なんて出来ないわ。

 西隣国のマイマ国が、属国にしてくれたら良いな。人には優しい賢王だから。







 一ヵ月経った。私はまだ領地にいる。

 公爵の財産も民に渡るようにして、新しい領主が決まり、落ち着くまでは持つだろう。律儀にも翌日修道院の迎えが来たが、逃げて来た。

 この国は、隣国のマイマ国に吸収された。領民は、生活にあまり支障が無ければ、さほど気にならないのだろう。上が丸ごと代わっても、大きな混乱はなかった。そんなものだ。良い治世とは言い難いものだったし。


 王都から出て2番目に大きい街で、宿屋にいる。

 人の国を出よう!と、意気込んだはいいが、人の国以外で生きていける自信が、サッパリ無い。

 むしろ出た途端、魔物に食い殺される。


 で、味方が欲しい。

 高度な教育と、血筋のお陰で、冒険者になる力はありそうだ。魔物と戦えるだけの、魔力はあるが…いかんせん、外を知らないし、実際には戦った事もない。山でも森でもいいから、一人でこっそり生きていきたい私は、外の知識が欲しいし、戦える技術が欲しい。


 そして、悩んでる…。獣人の奴隷を買うべきか…。

 どうしよう…う~ん。

 奴隷商館、覗きに行ってみるかな。でも、人が売られるのは、見たくないなぁ。

 この国には奴隷制度があり、獣人は勿論人までも。マイマ国のお陰で、人だけは奴隷より解放されていた。人だけは。

 捕らえられた獣人は、そのままだ。


 人を恨んでる獣人が、私に外で生きるために教えてくれるだろうか…。

 悶々と悩んでみたけど…結局、奴隷商館に来てみた。


「いらっしゃいませ。奴隷をお探しですか?」

「えぇ」

「どの様な奴隷をお探しでしょう?」

「どんな種類がいるの?」

「それはもう、力自慢や知識の豊富なエルフ!エルフは性奴隷でも好評ですから、お薦めですよ」


 そんなにいるのか…私がしてきた事なんて意味なかったな。

 力と知識のある温厚な者と、言うと奴隷商人は、ピエロのようにニィと笑い

 

「そうですよね。お客様程お美しい方なら、わざわざ奴隷とは遊びませんよね」

「早くしてくださる?」

「ただ今。では、こちらで少々お待ちください」


 通された部屋で、ため息をつく。

 あぁ。胸くそ悪い。やっぱりこのまま帰ろうか…。人の国を出た人間が、ギルドを訪れるのを待って弟子入りを頼む方が、良いかな。

 でも、一度外に行った人間は、ほとんど帰ってこないし、1ヶ月待っても連絡無かったしなぁ。


「お待たせしました」


 ハッとして、そちらを見る。


 最初に、視界が捉える、アメジスト。

 そして、脳に染み入る、アメジスト。


「…な…しい」

「お客様?」

「あ、いえ。何でもないの。せっかくだけど、今日は止めとくわ。彼らを連れてきてもらったのに、悪いわね」

「おや?そうですか?」

「えぇ。それじゃあ。失礼するわ」

「お心が決まりましたら、またお出でくださいませ。御待ちしております」


 足早に、商館を出た。

 まずい、まずいまずい。非常にまずい!

 危うく、即決しそうになった。


 アメジスト。紫水晶。前世の誕生守護石だった。

 父さんが20歳の誕生日にピアスでくれた。

 社会人になった時、母さんが、アメジストの嵌まった自分の指輪を私に譲ってくれた。

 初めて付き合った恋人が誕生石だからと、アメジストの首飾りを贈ってくれた。


 石の意味は、真実の愛とか、愛する人を見つけるとかだったけど、一番気に入ったのは、酒に悪酔いしない守り石だった。

 愛する人を見つけて、更に悪酔いしない…合コンの石じゃん!と思った私は、阿呆な大酒呑む子でした。


 別に紫も好きな色じゃない。アメジストよりも、サファイアが好きだったし。

 でも、人生の節目節目でいつも傍にあった。一番身近な石だった。特別になっていった石だった。


 イーストゥーリャの人の国は、紫が不吉とされる。黒は好きなのに。古の神を殺した何かが身に付けていた色だったか…とにかく、周囲に紫が少ない。宝石なんてもっての他。

 気付いてしまうと、欲しくなる。

 あのアメジストが欲しい。どんな種族の獣人か見てなかったけど。あのアメジストの瞳しか私の脳が認識していなかった。


 その夜、郷愁に駆られて少し泣いた。

 自分の側にアメジストが無い事が、とても寂しかった。


 不思議な夢を見た。空間にアメジストが浮いている…。話しかけてくるのだ。


「何で見ていた?」

「何を?」

「この目を。確か、忌避すべき色だろう?」

「…懐かしかったから。懐かしい私の石」

「懐かしい?」

「そう。あのアメジスト欲しいんだ」

「ふーん。…買いなよ。待ってるよ」


「…えっ?!」


 びっくりした!目を開けたら、朝だった。

 不思議な夢…え?夢?部屋には何の変化もない。窓も閉まっていて、寝具も荷物も崩れていない。

 何とも不思議な夢だった。

 夢は、願望を現すなんて聞いたけど、そんなに欲しいのか、私。

 そして、来てしまった。奴隷商館。

 いいの?人買っていいの?駄目じゃない?いや、駄目だろう…でも、欲しい。当初の目的から大分離れてないか?!店の前でうろうろしていると、声を掛けられる。


「昨日のお客様?あぁ、やはりお客様だ。いらして下さったんですね」

「え…あ…」

「さぁさぁどうぞ中へ。昨日の中に、お気に召した奴隷はありましたか?確か、目にとめた奴隷が…。只今、お持ちします」

「あ、いや、その」

「さぁ、座ってお待ちください」


 す、素早い。口を挟む暇もなく、気付くといつの間にか購入手続きをしていた。

 相場を知らないが、人の売り買いにしてはかなり安い金額。


「この腕輪は、決して外さないで下さい。獣人は、人同士で扱われる隷属契約が効きません。これは、獣人が命に背いた場合や、主人に危害を加えようとする際に痛みを与えますから。一歩も歩けず、前後不覚になるほどの痛みです」

「あの…」

「はい?」

「本当にあの子かしら?」

「えぇ。間違いありませんよ」


 連れてこられたアメジストの瞳の持ち主は…白虎の子供だった。10歳くらい?

 …おかしいな。昨日は、もっと高い位置に目線が合った気がするんだけど。160cmの私の肩までしか身長がない。見せやすいように台にでも乗ってたか?


「安心してください。チビですが、腕は確かです。外の森で、一人魔物を狩って生きていましたので、たいていの荒事には、対処出来るかと。

 更に!以前の奉仕先が、教養から、閨事まで仕込んで頂いたようで最高の作品となっております」


 イラッとする。


「以前の?」

「先の王城での事件で、飼い主が不幸に見舞われたらしく…」

「あぁ。そうなのね」

「では、他に何か気になることはございますか?」

「いえ、ないわ」

「お買い上げありがとうございます!また、ご入り用の際は何なりと!」


 …買ってしまった。しかも子供。子供を!

 前世で、犯罪一直線の行為が、精神的ダメージとなって苛む。


「…ご主人様?」

「ハッ!な、何?どうしたの?お腹空いた?疲れた?」

「えっ?いえ、あの」

「あ、ここ往来だったわね。宿屋をとってあるから、行きましょうか」


 その子の手を引いて、宿屋に戻る。


「さて、まず湯浴みをしてらっしゃい。食事を用意するから、食べながら話しましょう」

「は、はい」


 もう、大きな罪悪感から早口で喋る。目も見れないし、名前も聞けない。その子を風呂へ放り込み、私は、宿屋のカウンターで、食事を頼む…あれ?何好きなんだ?肉で良いか、とりあえず。虎だし。

 服屋へ走り、数着服を買うと走って戻る。

 ため息をつき、食事を持って部屋に行く。


 その子が尻丸出しで、髪が濡れたまま立っていた。


「…服を買ってきたわ。これに着替えなさい。髪はよく拭いて。風邪引くから」


 私は、バスタオルで包み、頭の水滴を拭き取ってやる。見えてしまった…背にも腹にも傷だらけ。

 心が痛い。ごめんね。人間が、ごめんね。

 粗方拭き取り服を渡す。もそもそ着替えるその子に、土下座したい気分だ。

 奴隷として買ってふざけるなと、言われるだろうが、私が一人立ち出来たら、自由にしてこの子のしたいようにさせよう。殺させろと言われたら、悩むけど。

 家も権力も金も無くなった私が、どこまで出来るか分からないけど。


「さて、食事にしましょう。食べられない物はある?」

「あ、僕がやります」

「いいわ、座ってて」


  食事を置き、お茶を入れる。

 二人でテーブルにつき、目を合わせる。

 …あぁ、この色だ。アメジストの色。懐かしい。

 いつも側にあった私の石の色。

 顔は可愛い子。くりっとした目に、鼻筋の通った整った顔。将来、美人さんになりそう。男の子だけど。


「あ、あの?」

「あ、ごめんなさい。貴方の名前も聞いていなかったわね。私は、アーシュよ。貴方は?」

「え?!あ、はい。レビンと言います」

「レビンね。これから宜しく」

「宜しくお願いします。アーシュご主人様」

「…アーシュでいいわ。口調も丁寧じゃなくていい」

「いえ、そんな」

「せめて、ご主人様を取って」

「ア、アーシュ…様」


 ちょっとずつなくしていけばいいか。


「慣れてきたらでいいから、いつか口調も戻して、様も取ってね。それで、貴方にして欲しい事があるの」

「はい。して欲しい事ですか?」

「そう。私、人の国を出たいの。外でどこか山とか森でひっそり暮らしたい。私に外の情報と、戦う術を教えて欲しいのよ。

 暮らしていける程度には教えてもらったら、貴方を解放するわ。何かしたいことがあれば、微力ながら手伝う事もする。出来る範囲になるけど」

「…失礼ながら、アーシュ様。貴女様には難しいかと」


 即、ダメ出しされた!


「絶対?絶対に無理?」

「はい」


 計画がいきなり頓挫した!


「私が一人立ち出来たら、解放するのよ?」

「解放はどうでもいいですが、一人立ちは無理です」


 どうでもいい?!てか、全力で否定されとる!


「…何が足りないの?」

「全てです」


 ぎゃふん。


「…」

「…」

「く、訓練を頑張るわ」

「そういう問題ではありません」

「くっ。高位魔物を倒せる魔力量って言われたわ」

「確かに、アーシュ様の魔力含有量は、素晴らしいものがあります。獣人でも上位に位置するほど」

「じゃ、じゃあ、何が問題なの?」

「恐れながら…世間を知らなさ過ぎます」


 こ、子供に世間知らず言われた!

 この子、容赦がないわ!

 落ち込む私を余所に、話は進む。


「人の国を出た事がありませんよね?外には、他種族の国があります。しかも、山や森は他種族つまり獣人が最も得意とする所です。魔物を退けられても、獣人への対処方法がありません。それにアーシュ様は、獣人が放っておかないでしょう」

「憎いから?」

「いえ、アーシュ様は…あのラングシナ公爵令嬢アリアーシュ様ですよね?」

「っ?!」

「しかも、アースと名乗り、獣人奴隷を助け回っていましたよね」

「っっ?!?!」

「外に出た途端、獣人に捕まり十中八九囲われるでしょう」

「????…?」

「分からないという顔ですね」

「話の内容が、衝撃的過ぎて…」


 そうなのだ。転生しちゃった!何か使命があるのかもなんて、思った私は、奴隷解放に尽力しようとした。だがしかし、一桁の子供に何が出来る?少しでも口を出すと父には鞭で叩かれるし、人の国の概念を植え付けるために、拷問かと思われるほど勉強(洗脳)させられた。

 だから、表向き公爵令嬢として生きて、裏でアースと名乗り小姓の格好して、ご飯差し入れたり檻の鍵壊したりと少しずつ奴隷を逃がしたりしてきた。

 もう最終的には、王妃になったら王子を操って奴隷解放しようと思ってたのに、あの様だ。


 でも、変装してた!髪も布で隠したりカツラ被ったり、目の色変えたり、声も変えた。お陰で、潜入捜査官出来るんじゃ?と思えるほど自信作の変装っぷりだった!


「何故?私が、アースと言う人物や、公爵令嬢だと思うの?」

「アーシュ様…その、獣人は…鼻が利きます」

「あ」

「はい」

「…………じ、じゃあ、全部」

「バレております」

「…ぐぅ」

「獣人奴隷の間で、最初小さな噂だったのです。

 男の子の格好した小さな女の子が、食物や傷薬を差し入れにくると。泣きながら謝りながら。

 手を豆だらけにして血を流しても、鍵を壊せず謝りながら帰って行き、成長するにつれ魔法を使い鍵を壊していく様を。奴隷の腕輪は無力化し、囚われている獣人を解放していく。

 傷が酷い者は、何故か公爵家所有の別宅で手厚く看病を受け、解放される。

 アーシュ様が…そうですね、10歳の頃には、奴隷の星と呼ばれていました」


 なんだその変な二つ名…。


「獣人奴隷の中で、その子の匂いが付いた物を回し、手出し無用、その子に何かあったら尽力すると密約されるほどです。

 その子が、王子の婚約破棄を受け、反逆罪で修道院に入るところまでは、ほぼ皆知っております。その後消息不明になり、皆心配していたのです。

 アーシュ様。獣人は、受けた恨みは絶対に忘れませんが、受けた恩も絶対に忘れないのです」


 ぽかーん…


「はぁ…ソウデスカ」

「はい」


 考えよう。なんだ?だから、どうなんだ?

 …あ、駄目だ。パニクってる。


 えーと。人知れずこっそりしてたのがバレバレでした。変装バッチリ!私って天才じゃん!なんて思ってたのに…うむ、恥ずかしい。泣いてたのまで言い回さなくたっていいじゃない!?

 しかも、婚約破棄まで知られて…心配されとる!

 まず自分達の心配しなさいよ!


 結果、恥ずか死ぬ。


「うあぁぁーっ!恥ずかしい!!」

「誇れる事です」

「お黙り!何が悲しくて…婚約破棄まで知れ渡って心配されなきゃいけないの!破棄なんて、願ったり叶ったりなのよ!」

「ソコですか」

「人の心配する前に、自分達の心配をしなさいよ!まだまだ待遇の酷い扱いされてる人だっているのよ?そうよ、強いのに奴隷扱いされて……。

 …?獣人は、人より強い。何故こんな人が?と思うような屈強な獣人も奴隷の中にいた…しかも、解放したのに、また戻ってきた人もいたけど…??あれ?まさか?」

「あ、分かっちゃいました?」

「まさか…まさか?目的があった?目的があって奴隷になってた?わざと?!」

「ご名答!」

「ぎゃーっ!なのに、私…いい人ぶって馬鹿な使命だなんて自己満足で…血が吐ける!今なら血を吐ける!」


 衝撃過ぎる真実!

 そりゃそうだよ!人間と同じ知性で、人間を越える力を持ってたら、そう簡単に屈される訳ないじゃない!この人、奴隷好きなのかな?とか思えるほど、3回くらい顔馴染みになった虎のオッサンとか、蛇のオッサンとかいたけどさ!あれ、絶対潜入だよ!


 穴を、誰か穴を掘って。埋めて私を。マントルまで。火が出るほど恥ずかしい。マントルで燃え尽きたい。


「…アーシュ様」

「そっとしておいて…」

「アーシュ様?獣人は、屈強です。そう簡単には人間に捕らわれない。

 ですが、子供は別です。庇護されるべき子らは、人間にも捕まえやすく、集中的に狙われる。

 アーシュ様は、小さな獣人や、人間の子供を優先的に救ってらした。檻の中で、子らが辛い思いをしているのを見ているしか出来なかった我々の代わりに。

 口惜しい思いをし、復讐を誓い、人間の全滅を願った。ですが、貴女様がいた…アーシュ様はそれらの心をもを救ったのです」


 テーブルに伏せて、どうやって穴を掘ろうか考えていると聞こえた。


「こら?子供?貴方だって子供じゃない。

 それにっ!救った?救えない子もいた!恨みはされても、救ったなどと言えるような事はしていない!もっと、ちゃんとやれる事はあったのに!全ては人間が、起こしてきたのに!人間の私が、私が…」

「また、その考えに陥って」

「何がよ!?」

「立ち止まるより、どうするかを考えろ」

「?…っ!それ、なんで」

「いやー、奴隷買いに来た時、わざわざ人間に嫌われる色の目に戻したのに、熱い視線送って来るんだもんな。

 思わず買われたくなっちゃったじゃん。しかも、外に出たいなんてよ。他の獣人に捕まる前で良かったわー」


 可愛い子が、オッサン口調。激しき違和感。


「あ?え?」

「山で寂しく一人暮らしなんて言うなよ」

「は?」

「俺が守ってやるから」

「は?」

「お前、充分頑張ったよ。奴隷解放なんて、夢掲げてたけど、それは後は俺らが引き継ぐからさ。

 もっと、女らしく人生楽しんでみてもいんじゃないか?ずっと走って来たんだ。そろそろ自分の幸せ考えろ」

「は?」

「お前、さっきから[は?]しか言ってねえ」

「は?いやいや?いやいやいや?オッサン…?」

「オッサン言うな」

「オッサン?!な、何がどうなってこうなったの?!」

「あ!格好?これ、幻術~」


 そう言って、一瞬姿がブレたと思ったら、アメジストの瞳のデカイ白虎の獣人が立ってた。


「オッサンの色?!」

「あ、目か。こっちが自前。奴隷として潜入してんのに、不吉色で避けられたら意味ないだろ?変えてたんだよ」

「毛」

「毛皮?あぁ、ありゃ汚れだ」

「げゃー!」

「潰れたホロルニス(鳥の魔物)みたいな声すんな」






 人生の節目節目に傍にあった、アメジスト。

 一番身近なアメジスト。

 こんな形でまた、傍にあるなんて。

 前世どころか今世でも私の守り石になった。






 ふとした疑問

「ねぇ、何で子供に化けてたの?」

「化け…いや、俺可愛いじゃん?思わず買いたくなるデショ?」

「…」

「なんかいって、おねがい」



 ふとした疑問 に

「ねぇ、オッサン」

「オッサンやめてぇ~」

「オッちゃん」

「おい」

「オッサンの目玉取れるの?」

「こっわ!コッワイわ~この子。幾ら欲しいあめじすとでも、抉らないでくれよ?!」

「何で?」

「ん?」

「…オッサン…何でアメジスト知ってるのかな?」

「…ん?」

「よぉし!歯ぁ食いしばりやがりませ?」

「心配だったから会えて嬉しくてでも奴隷買う言うし思わず確認したくてつい窓から」

「夜中に女性の部屋に侵入する言い訳にはならん!」







お読み頂きありがとうございました。

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