英雄
そこに恐怖は存在する。
最北の森。通称「終わりの森」。
その森はまさに地獄。
その森へ一歩踏み込んだ者は生きて帰ってこれない。
どんなに最強であっても、強者であってもその森に行くのは死にゆくのと同等。
その森に存在するのは常識の通用しないものばかり。
終わりの森に当たり前などない。
力を持たぬ人はもちろん、力ある魔物ですら瞬殺されるだろう。
「ここが、終わりの森…」
そんな森に、踏み込んだ人間が一人。
赤髪に蒼い瞳の男だ。
男は白く輝く剣を片手に、ゆっくりと森の奥へと進んでいった。
「英雄」
終わりの森にやってきた男の名をアクス・オウィリと言った。
知らぬものはいないだろう。
「光の英雄」
光の魔術を駆使し、悪の象徴魔王を一人で倒したことで有名。
世界で初めて、勇者以外の人間が魔王討伐を果たしたことでその名を轟かせた。
その者の名をアクス。
アクス・オウィリ。
「悪の堕落者」
勇者を陥れ、世界一の王国シルヴァスの国宝を盗んだ重罪人。
その後力を過信し、勇者に戦いを挑み無残に敗れたことで世界を驚かせた。
その者の名を、アクス。
光の英雄、アクス・オウィリという。
英雄であるアクスは重罪人として追放された。
終わりの森への追放。
死を覚悟したアクスだったが予想に反して大した脅威はなかった。
「ここは本当に、終わりの森なのか?」
思わず漏れた声。はっ、として辺りを見回すも何もおらず。
安堵のため息をついたアクスは、硬直することになる。
「うん、ここは終わりの森で間違いないよ。」
そんな声が、聞こえてきたために。




