出会い
嫌な夢を見た気がした。内容は覚えていない。時計の針は7時を指していた。家から学校までは、10分だ。本当は7時30分に起きてから行けば十分。そのつもりだったのに今の夢のせいで、もう眠りにはつけそうにない。しょうがない、転入初日ということで、早めに行くか。
部屋を出ると、隣の部屋からも同じ制服を着た男子が出てきた。見た目からして不良君だ。
「お前誰だ。同じ学校か、見たことねぇぞ」
見たことなくて当たり前だ。今日転入するのだから。そう言うのも面倒で、無視をしようと決めた。
「おい、シカトすんなよ。俺は新道輝一。新しい道に一番輝く。っで、新道輝一だ。よろしくな。ネクタイが青か。同じ学年だな、クラス同じがいいな。ところでお前名前何て言うんだ」
新しい道ね。はぁ。なにを一人で喋っているんだ。
「なぜ君に言わないといけないんだ」
「おぉ、喋れたんだな」
「なんだと」
「何も言わねぇから、喋れねぇんだと。で、名前」
こいつとは、関わらないほうがいい。直感で思った。無視して歩き出すと
「ちょっ、待てよ。同じ学校なんだから、一緒に行こうぜ」
「なんで」
僕は一人で行きたいんだ。誰とも関わりたくないんだ。僕が早足で、歩いて行ってもあのうるさいやつは、着いて来た。
途中で、泣いている女の子がいた。僕は無視して歩き続けていると
「どうしたんだ」
あいつは声をかけていた。ほっておけばいいのに。僕は振り向きあいつを見ていた。女の子は
「風船がね、木に引っかかっちゃったの」
と、泣きながら伝えた。
「あの、赤い風船か」
女の子がうなづいた。どうするんだ。あいつは、ニヤッと笑うと。
「ちょっとまってろ」
と言って、鞄を道路に置いた。そして木を登り始めた。
「おいっ、何をしているんだ。落ちたらどうするんだ」
僕は、さっきまでうるさいと思っていたやつに声をかけていた。なぜか、目が離せなかった。いつもなら、そんなことはせずに置いていっている。でも、ほっておけなかった。
「大丈夫。困っている奴をほっておけないだろ」
キラキラして見えた。そして、あいつが風船を手に取ると降りてきた。
「これだろ、もう離すんじゃねぇぞ」
そう言って女の子の頭を撫で風船を渡した
「ありがとう。お兄ちゃん」
女の子は走り去っていった。こいつは、いいやつなのか。