第三話 数学
今回もよろしくお願いします。
体育のあと、俺たちは教室に戻り、休み時間を雑談しながらすごした。
キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…。
チャイムが鳴り、教師が教室に入ってくる。
「きりーつ、礼。着席。」
「えー、では授業を始めよう。」
そう言って、教師が教科書を見ながら、黒板に数式を書いていく。
「えー、では教科書23ページを開けー。」
生徒たちはそれに従い、教科書を開く。教師がいつものように板書をしながら、口頭で説明していく。
「よし、ではこの問題が解ける者ー?」
「はい。」
そこですかさず手を上げるのが、我らが委員長、高橋清隆だ。
「よし、高橋、黒板に回答を書いてくれ。」
「はい。」
そう言いながら委員長が黒板の前に立ち数式を解いていく。
「…というわけで答えはⅩ=5、Y=8です。」
「正解だ。よし、では次の問題を…そうだな、島田、解いてみろ。」
そこで俺が指名されてしまった。数学は特に苦手というわけではないが…やっぱり黒板に書き込むのって緊張するよなぁ…。
「はい。えっと…。」
そう思いながらも黒板に答えを書いていく。
「こうですかね?」
「うむ、正解だ。では最後に…塚原、この問題を解いてみてくれ。」
あっ…仁を指名してしまった…。
「はい。」
返事をして、仁が立ち上がる。
「組織の魔術式か…。この程度、俺の力を以ってすれば…。」
仁がなにかぶつぶつ呟きながら黒板に数式を書いていく。
ちなみに仁がなにかぶつぶつ呟いていても誰も気にしない。教師さえもだ。なぜなら仁は中二病である。もうそういう性格なのだとみんな分かりきっているのだ。
まさに、触らぬ神にたたりなし、てある。ここで誰かがうかつに突っ込めば…
『なんだ貴様!組織の魔術式だとわからないのか!消されるぞ!』
とか何とか叫びだすに決まっているのだ。
ちなみに仁はそういうことを今まで数学の授業ですでに5,6回行っている。
入学早々、やらかすやつであった。
「先生、これでどうすか?」
そうして仁が黒板の前から退くと、そこには意味のわからない模様が…。
「はぁ…もういい、席につけ塚原。代わりに佐藤、解いてくれ。それと塚原は後で職員室に来るように。」
そんなこんなで龍矢が数式を解く。
「正解だ。このクラスは一部を除いて数学の出来が本当によろしい。優秀だな。」
そしてまた口頭での説明と板書が行われる。
一部って明らかに仁の事だよな…。そう思って仁の方をちらりと見ると、どうやらクラス全員がそう思ったようで、視線が集まっていた。
キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…。
そこでチャイムが鳴った。今日の授業はここまでのようだ。
「よし、今日はここまでとする。今日の復習と明日の予習をしっかりするように。」
そういい残して、教師が教室から出て行く。
すると、俺の席にいつものように龍矢と仁が集まるのだが…。
「仁、さっさと職員室行けよ。先生がお呼びだぞ?」
「ふっ…あんなもの組織の罠に決まっているだろう。故にオレは行かない。」
「「いいから行け。」」
そんな風に龍矢と合わせて仁を威圧し、職員室に向かわせるのだった。
「なんであいつは中二病なんだろうな?」
そう龍矢に聞いてみる。
「そうだねぇ…登山家ってさ、山があると山に登るじゃない?そこに山があるからだ~とか言って。」
「ああ、あるある。それで?」
「仁も同じなんだよ。自分は中二病で居続ける、そこに組織(設定)があるからだ、みたいなね。」
「うん、そうだな。」
なんか納得した。
もちろん、仁が職員室で雑巾のごとく絞られたであろうことは言うまでもない。
最尾まで読んでいただき、ありがとうございました。次回も読んでくれると嬉しいです。