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第一話 トランプ

 まさかの愛飢えが完結してないのに二つ目の小説になります。こちらも読んでいただけるとうれしいです。というわけで今回もよろしくお願いします。

 「さて、今日も学校に行きますかね…はぁ、やれやれだぜ…。」


 そう言いながら俺は鞄を持って玄関を出る。


 「いってきまーす。」


 家の中にそう呼びかけて、俺は通学路を歩き始めた。


 俺の名前は島田蒼しまだそう。ごく一般的な男子高校生である。今日もまた学校へと強制労働のように通わなくてはならない。


 「おはよう、蒼。」


 そう言って、俺に声をかけてきたのは同級生の佐藤龍矢さとうりゅうやだ。こいつもまた、俺と同じくごく一般的な男子高校生だ。


 「おはよう、龍矢。」


 俺は龍矢に挨拶を返しつつ、一緒に学校へと歩き始める。


 「おはよう、蒼、龍矢。今日も平和な朝でよかったな。この俺の右腕に封印されし…」


 「ああ、はいはい、おはよう、仁。」


 「ふっ、オレの台詞をさえぎるとはな…さすが蒼だ。」


 そう言いながら俺達に合流してきたのはこれまたごく一般的な男子高校生…じゃなかった…高校生になっても中二病真っ盛りの男子高校生、塚原仁つかはらじんだ。


 相変わらずの仁の中二病の設定やらなんやらを聞き流しながら通学路を歩く。


 そして見えてきたのが俺達の通う高校…私立甲鎖高校しりつこうさこうこうだ。


 『こう』って繰り返しすぎだろ…。なんだか噛みそうになる。だから俺達この学校の生徒はあんまり学校の名前を言わない。いや、言う必要性さえないが…。


 学校についた俺達は下駄箱にそれぞれ靴を入れ、上履きに履き替えて自分たちの教室に向かった。


 ちなみに運が良いのか悪いのか、三人とも同じクラスだ。いや、中二病の仁がまともな男子高校生なら運がいいに含まれたんだろうな。うん。


 「さてと、ホームルームまで暇だな。なにするかな…。」


 「ほう、暇なのか蒼、ならここはオレの考えた…。」


 「却下な。」


 仁が何か言おうとした瞬間に却下する。こいつが何か提案するときは大抵…いやほとんど…いやいやほぼ完璧に中二病に関することなのだ。そんな遊びに巻き込まれては俺まで痛い目で見られてしまう。


 いや、一緒にいる時点でそれなりに視線が気になるのだが…。何でこんなやつと一緒に入るんだ俺。馬鹿なの?クラスのみんなに避けられたいの?


 やめよう。さすがにそれは可愛そうだ。仁のことは温かい目で見てあげようじゃないか。


 「じゃあ、トランプでもどうだい?たまたま鞄に入ってたんだけど…。」


 そこで龍矢がトランプを持ってきた。


 「そうだな。特にすることもないし、そうすっか。」


 「いいだろう、オレの強運を見せてくれる。くっくっく…。」


 「じゃあ、トランプを配るよ?ババ抜きで良いかな?」


 「ああ、それでいいぞ~。」


 龍矢がトランプを配り始める。配り終わって、俺達は手札から揃っているカードを机に捨てていく。


 「じゃあ、順番はじゃんけんで決めるか。いいな?」


 俺の視線に二人が頷く。


 「よし、じゃーんけーん、ぽいっ。」


 俺はチョキ、龍矢はグー、そして仁が薬指と親指を折った形の…よくあるチートとかいうやつだ。


 「仁、じゃんけんくらい真面目にやってくれよ…。」


 「ふっ、オレの勝ちだな。」


 「いや、違うからなっ!?」


 「蒼、落ち着いて。めんどくさいから仁から時計回りで良いよ。」


 「お、おう。そうだな…。」


 龍矢が仁を完全にスルーして俺にそう言ってきた。確かにその通りだ。こんなバ…いや、中二病患者に時間をかけるより、さっさとトランプを始めたほうがいいだろう。


 「では、オレからだな。龍矢から引くぞ。」


 そう言って、仁が龍矢からカードを引く。


 「っち…。揃わなかったか。」


 どうやらカードは揃わなかったようだ。


 「じゃあ、僕の番だね。」


 そう言いながら、龍矢が俺の手札からカードを引く。どうやらカードが揃ったようで、龍矢はカードを机に捨てる。


 「さて、俺の番か。」


 俺はそう言いながら、仁の手札からカードを引く。


 「よし、柄が揃ったぜ。」


 俺もカードが揃ったので机に捨てる。


 そんな感じでゲームは進んでいき…


 仁と俺が残った。


 うわー…最悪だわ。あっ、ゴメン本音が…。こいつに負けるのは俺的には気に食わないのだ。


 現在、俺の手札にババはいない。つまり仁がババを持っているということだ。俺がカードを二枚、仁がカードを一枚持っている。カードが揃ったほうが勝つわけだが…。


 「オレのターンだ!」


 そう言いながら、仁が俺の手札からカードを引く。運が悪い。ここで引いて揃えば俺の勝ちなのだが…ここでもしババでない方を引かれたら最悪である。


 仁がババを引いてくれた。よし!これで俺の勝ちは確定である。


 なぜなら…


 「よし、俺の番だな。」


 そう言って、俺は仁の手札に手を伸ばす。


 そして俺がカードに触れようとした瞬間…仁がすばやくカードの位置を入れ替えた。


 俺はそれを見逃すことなく、入れ替わったほうのカードを引く。


 俺が引いたのは俺が持っているカードの柄のもう一枚のカードだった。


 「よっしゃ!あがり!」


 「くっ…このオレが負けるなど…。」


 仁が頭を抱えて悔しがっている。いや、当たり前だろう。誰でもわかるわ、そんな手口。


 もちろん、普通の人ならあえて位置を入れ替えてババを引かせる作戦に出る人もいるかもしれない。今の俺が入れ替わったカードを引いたように仕向けるみたいな、ね。そうすれば、相手にババが行くわけだ。


 でも仁に限ってそれはない。こいつはそんなことができるほど頭がよくはないのだ。あえてバカとはいわないでおこう、うん。


  キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…。


 そこで朝のホームルーム開始のチャイムがなった。


 「じゃあ、また休み時間に。」


 そんなわけで俺達はそれぞれの席へと戻ったのだった。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。次回も読んでくれると嬉しいです。

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