『負』
「神が死んだ.....」
その言葉が俺の脳裏で何度も響き渡った。
俺はそう聞かされて少しの間、動けなかった。
神が死んだなら俺たち人間はどうすればいいんだ.....。
「いきなり言われても戸惑うかもしれない。けど、この話は嘘ではないし、まだ続きがある。」
「続き.....?続きって何だよ?」
俺は聞き返した。
「さっきも言ったと思うけどゼウスには人の『負』を浄化させる仕事があるの。けどゼウスが殺された今、世界に『負』が溜まりはじめている。」
「『負』って言うのは何なんだよ!」
「『負』って言うのは人の原罰。生まれながらに持つ七つの罪から生まれる闇のこと」
「七つの罪って、『憤怒』『嫉妬』『強欲』『傲慢』『食欲』『色欲』『怠惰』のことか?」
「そう」
彼女は首を縦に軽く振って肯定した。
「人は生きてるだけで『負』吐き続けている。けど、世界にもそれに耐えられる限度があるの。だからゼウスは定期的に『負』を浄化してたんだけど.....」
「ある日その人が出す『負』を浄化していたゼウスが殺されたと.....」
「そう、そしてそれを危機に思った偉い人は自分の世界を生き残らせるため他の世界を消そうとした。世界の数が少なくなればそれだけ『負』が溜まるのも遅くなるから、そして互いにその世界で最も強い人を代表生として送り込んだの」
はぁ..... にわかには信じられない。
だって俺はさっきまで普通に高校生活を過ごしていたんだぞ。突然、神が死んだとか力が何だとか言われて納得できるかよ...クソッ!...。
「すぅぅ.....はぁぁ.....」
俺は一度大きく深呼吸をしてから彼女の方を向いた。
彼女は相変わらず無表情で淡々とこちらを向いていた。
彼女は小柄でスラッと長い黒髪はそのセーラー服によく似合っていた。
改めて見ると、とても整った顔立ちをしている。
どことなく誰かに似ているような気がした。
「質問をしていいか?」
「なに?」
彼女は首を傾けた。
「このまま世界に『負』が溜まり続けるとどうなる?」
「世界が消えるわ。多くの世界が.....」
「世界が消える.....」
俺は世界が消えると言われて俺は今までよりは驚かなかった。
何となく予想はしていた。
俺はそのまま質問を続けた。
「おまえの言い方だと世界がいくつもあるみたいだな、どういうことだ?」
「世界はいくつにも複雑に別れている。言うなればパラレルワールド。この世界も貴方の知ってる世界じゃない、もっと前に滅んだ世界」
「じゃあ、俺は何でここにいるんだ?どうやってここに?」
「その話をするのには時間が無さそう」
「じゃあ、君が言っていた代表生ってあの二人のことか」
「そう。他にも私を入れて六人いる」
俺はそれを聞いて代表生と言う彼らの方を向いた。
俺たちが話してる間、静かだと思ったら、
彼らも話していたらしい。
「質問はもう終わり?」
「いいや、あとひとつ..... 君の名前を聞いていい?」
「私の名前は.....槍山文乃」
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「お前なんだそのでけぇ岩の人形?ゴーレムってやつか?」
「敵に神霊をバラすはずがないだろ?まぁ、君の能力はさっきの不意打ちで大体わかったけどね」
「だったら何だよ?それでお前が俺に勝てるとも?」
「あぁ、勝てるね。君の神霊じゃ僕には勝てない、僕の神霊は世界そのものだからね」
「ふーん、興味はないな。俺も負ける気はねぇし、そんなことより俺の名前は火神 紅って言うんだ!」
「何だい?呑気に自己紹介かい?」
「せっかくお互い世界のために戦ってるんじゃねぇか。名前ぐらい聞かせてくれよ?」
「いいよ、冥土の土産ってやつを君にもあげよう。僕の名前はエルバート・エインスワーズ」