神器
世界を救う?
何をふざけたこと言ってるんだ?
そんな馬鹿なことをいってる場合じゃない、
速く夏織たちを探さなきゃ!
「世界には沢山の神がいるわ。その一つ一つが異なる役割を持っていて、世界はそれで成り立っているの」
まだ、ふざけてるのか!
「世界を救うだとか、そんなふざけてる場合かよ!街が崩壊してるんだぞ!」
「いいから聞いて、貴方の世界にも関係あることなの」
彼女の眼差しには有無を言わせぬ迫力があった。
「その中でも最も重要な役割を持つ、世界に溜まった人の負を浄化するのが『ゼウス』よ」
「ゼ、ゼウスって全能な神って言われている、あのゼウスか?そんなのいるわけないだろ!」
「いるのよ、神は」
「はぁ?何を馬鹿なことを... 」
「信じられない?なら、あれを見て」
俺はそう言われ指を指された方を向いた。
そこには遠くでよくわからないが、確かに二人の人がいた。
(良かったやっぱり他にも人がいたんだ)
速く助けに行かなきゃ
俺はそう思い人影の方に向かおうとしたとき、手を捕まれた。
「行っちゃダメ、行ったら戦いに巻き込まれて死んでしまう」
「巻き込まれて死ぬ?人がいるんだぞ助けなきゃ!」
俺は何を言ってるのかわからない彼女に怒鳴った。
ドォーン!!!
その時、二人の人影が見えた方でいきなり爆発がおきた。
「何だ!?」
突然の爆発に俺は少しの間、動けなくなってしまった。
人が死んだ?
あんな爆発で生きてるはずがない。
何でいきなり爆発なんて...。
俺はしばらく土埃がたっている方を見つめていた。
「戦いが始まったようね」
彼女はそう言った。
「始まった?なにを言ってるんだよ!人が死んだんだぞ!」
俺はあまりの彼女の冷静さに怒りをあらわにしてしまった。
「死んでないわ」
「はぁ?死んでない?そんなこと... 」
俺はもう一度、土埃の方を向いた。
そこには確かに二人の人影と何か大きな影があった。
「そんな.....」
おかしい、確かに大きな爆発ではなかったが、人を殺すのには十分すぎる爆発だった。
生きているはずがない..... なのに何で.....。
「ここも安全とは言えない、一度場所をずらした方がいい」
「ちょっ!」
俺は彼女に手を引かれるまま近くの建物の屋上へと連れていかれた。
「何なんだよあれは!?何でさっきので生きているんだ!逃れてるようには見えなかったぞ!」
「たぶんあのゴーレムで自分の身を守ったんだと思う」
「ゴーレム?」
俺は何を言ってるのかわからず、
爆発があった二人の方を向いた。
「何だよあれ!?」
岩でできた体、人の形をした大きな人形。
そこには本当に一匹のゴーレムがいた。
そんな馬鹿な... 何なんだあれは.....
とにかく二人が危ない、速く助けなきゃ!
「生きているんなら速く助けなきゃ!あの変なゴーレムに殺される!」
「助ける必要はないと思うわ」
「何でだよ!あんなんに踏まれたら今度こそ死ぬぞ!」
「たぶんあれ、あの二人のどちらかの神霊で作った物だと思うから」
「神霊...?何をいきなり..... 」
「さっきの話の続きをするわ。神は世界にたくさんいる。そして人の中にもいるの、どんな人だろうと一人につき一つの神が宿る」
「神が宿る....」
「その神の力を使える者を神器、その力を使うことを神霊と言うの」
神の力を使う.....?そんなファンタジーあるわけない...。
けど、だったらあのゴーレムは何なんだ?
「そして神は.....ゼウスは死んだ。いいえ殺されたの誰かに... 」
「神が死んだ.....」