邪妖精
在る小さな、邪妖精が住むとされる【やさっと村】に一人の若い男と女が迷い込みました。
邪妖精たちはみな人間の世界に繰り出しては人間の男性を誘惑し騙して遊んでおりました。
一人の村長以外はみな女の邪妖精で、彼らはしょっちゅう人間の男性の奪い合いに明け暮れ互いにあまり仲良くありませんでした。
若い男と女の存在に気がついた一人の小さな邪妖精が、二人の様子を、木の陰から観察しておりました。そうしているうちに妖精は女に嫉妬心を燃やしました。
村の中にいる人間の男は絶対に誘惑してはいけないと一番偉い、村長である男の邪妖精に言われていた邪妖精でしたが、彼女は女が湧水を汲みに行ったのを見計らって、金色の粉を使って彼を誘惑してしまいました。
たまにこんなことが村で起こることがありましたが、騙されるもの、騙されないもの、まちまちであって、必ずや邪妖精に惚れてしまうなんてことはありませんでしたが、意志が弱く激情の持ち主であった彼はまんまと妖精に惚れてしまい、妖精から渡された禁断の果実を口にしてしまいました。
実はその妖精の村には死神が幾体も潜んでおり、彼はそれをきっかけに死神に憑りつかれ、村での死神の誘惑に負け続けていくことで、還らぬ人となってしまったのでした。