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ダチが女になりまして。  作者: あけちともあき
一年目、十二月
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妹さんの事情~合コン帰りの一悶着?

「もう、聞いてよバカ兄貴のこと」


 バーガーをすごい勢いで食べ終わり、ポテトをつまみながらの晴乃である。

 勇太はこの後夕食を食べる気があるらしく、珍しくダブルチーズバーガーセットのみである。

 彼女は晴乃の愚痴に付き合うつもりらしく、ふんふん、なんて相槌を打っている。


「体育祭であんな変な種目を考えるくらいのヤツなんだけどさ、もう、女の子が大好きで」

「それはよく分かる」


 和田部教諭にシンパシーすら覚える郁己である。


「そのくせに、女運がすっごく悪いの。高校の頃の最初の彼女には、二股かけられて振られて、大学で出来た最初の彼女には、二股かけられて振られて、大学で出来た次の彼女は、あろうことか浮気真っ最中の現場にやってきたらしくて、その場で振られて」

「ひええ」


 勇太が戦慄する。

 恐ろしい女運の無さである。あと致命的に間が悪い。

 ……ん? 誰か身近な人間にそっくりなような。

 郁己は遠い目をする。


「それなのに、女の子女の子って、もう……! あんなに痛い目にあってるんだから、大人しくしてればいいのに……」

「晴乃ちゃんは、お兄さんのこと心配なんだね」

「……絶対あのバカ、また騙されてひどいことになるもの。へらへら笑ってるけど、辛くてこっちのほうが見てられないの」


 だから、兄が合コンに行ったことにもイライラするわけだ。

 まあ、妹が心配している以上に、和田部教諭のハートが堅固な鋼で出来ている可能性もある。

 というかあんな種目や問題を作っておいて、しれっと学校に在籍しているし、一部女子生徒からはセクハラ種目の教師として揶揄されてても、楽しそうに女子高生をガン見しているから、多分ハートは鋼どころかオリハルコンなのだ。


「晴乃ちゃんはお兄さん思いだ……」


 ジーンときた勇太。


「それに比べてうちの妹なんて、俺をお馬鹿お馬鹿って……」

「まあ実際、心葉ちゃん頭いいからな」


 この沿線地区では間違いなく最高レベルの学力である高校に通い、そこでも上位の順位に位置しているのである。

 それから、勇太の扱いは割りと、晴乃が和田部教諭をバカバカ言うのと一緒な気がする。


「えっ、金城さん妹さんがいるの?」

「うん、双子の妹だから同い年なんだけど」

「金城さん双子だったの!?」

「勇は二卵性の双子だから、似てるけど結構外見違うよ」


 胸とか。

 あと目つき。


「へえ……」


 今日一番びっくりした、という顔の晴乃。

 まあ、双子なんて一つの学校に一組から二組いるかいないかという程度のレアさである。

 少子化の時代、あまり見かけなくなっても仕方ない。

 だが、双子は確かに存在した。今目の前にいるのである。


「坂下くんは一人っ子なの?」

「いや、うちは姉がいるよ。男運が無くて間が悪いのが」

「あー……。どこにでもそういう人っているのね。もう、いっそうちのバカ兄貴、坂下くんのお姉さんがもらってくれないかしら」

「ま、うちの姉貴もアレだからなあ。駄目な人だから」


 妹と弟が溜め息を吐いた。

 そんな風にとりとめもない話をしていたらば、そろそろお時間である。


「それじゃあ、私は帰るわね。今日は楽しかった。また学校でね」


 去っていく晴乃を見送る二人。


「よし、俺たちも帰るか」

「うん!」


 そういうことになった。

 日が落ちている中、帰りの電車はそれなりの込み方。

 運良く二人並んで座れたので、スケートの話などしながら帰る。

 主に、晴乃と境山にロマンスは発生するのか、という語らいになった。

 人の色恋沙汰は楽しい話である。

 いざ自分たちはどうなんだ、となると、テンパるのだが。

 そして少しすると、電車ではすぐ眠くなる勇太が、またも船を漕ぎだしたので、肩を貸してよりかからせる。

 すぐに駅に到着するから、揺り起こす。

 スケート場は学校よりは家に近い。


 欠伸を繰り返す勇太を押すように帰途につくと、向こうからは心葉がやってきた。


「帰りが遅いので携帯を鳴らしたのですが、出ないのでやってきました」


 勇太は携帯電話のたぐいが嫌いなので、常にバイブモードにしてカバンの底にしまってある。

 周囲をタオルで巻いていたりするので、振動も漏れてこないことがままある。

 携帯の意味があるまい。


「ほいほい、心葉ちゃんお疲れ様。ご覧のとおり無事ですよ」

「郁己さんが一緒なので心配はしていません。あまり遅くなると母さんの機嫌が悪くなるのです」

「うえ、母さん怒ってる?」

「まだギリギリ怒っていません」

「そっか……じゃあ、走るか! 郁己、それじゃ俺、走って帰るから! またね!」


 勇太も心葉と走り去っていく。

 優等生ながら、勇太の身体能力にしれっとついていって追走する心葉も並の女子高生ではない。

 郁己が帰宅すると、今まさに夕食の準備が終わったところであった。

 このために、バーガーは控えめにしてきた郁己。

 荷物を自分の部屋に置くと、食卓についた。


「姉貴はまだ帰ってきてないんだ?」

「お友達と夜は飲み会だって言ってたわね」

「ああ、合コンだもんな」

「合コンだと!? 父さんは許さんぞ!」

「あなた落ち着いて」


 食事をして、明日の授業の予習をして、X会の教材を一時間ほどやって、風呂に入って出てくる。

 まだ姉は帰ってきていないようだ。

 そろそろいい時間である。

 日付が変わりそうだ。

 父は心配そうに、居間でもじもじしている。

 母が電話をしたらしいが、繋がらなかったようだ。

 年頃の娘を持つと心配の種が尽きないものである。

 そんなこんなで日付が変わった頃合い。


「すみませーん!」


 チャイムが鳴らされ、姉帰る。

 すっかり酔いつぶれてぐでんぐでんになった綾音は、それなりにがっしりした男性に肩を支えられていた。


「いやあ、坂下さん、途中で酔いつぶれちゃって。家を聞こうにもなかなか分からなくてですね」

「貴様が綾音をー!」

「あなた落ち着いて。彼は綾音を連れて来てくれたんでしょう」

「ハッ、そ、そうだった」

「お義父さん」

「誰がお義父さんかーっ!」

「あ、すみません、言ってみただけです」


 なんだか面白いやり取りをしている。

 顔を出した郁己。その男性の方に明らかに見覚えがある。


「……和田部先生?」

「……おっ!? 坂下か。ってことは、坂下さんは坂下の……」

「はい、姉です」


 それは、体育祭でセクハラ種目教諭として勇名を馳せた男。和田部晴乃の兄である、和田部教諭だったのである。

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