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ダチが女になりまして。  作者: あけちともあき
一年目、十二月
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十二月計画。今月は何をする?

 月が変わったが、十一月末と十二月頭で何が変わるという事もない。

 郁己と勇太はいつものように登校して、そして朝のホームルーム後の十分程度の空き時間である。


「坂下。十二月なのだ」

「なんだ、藪から棒にどうした和泉」


 端正な顔立ちの友人が、こちらを振り返ってくる。

 席替えがあって、和泉は郁己の前の席になっていた。


「坂下よ。高校一年生の十二月は一度しか無いんだぞ。もっと危機感を持つべきじゃないか」

「なんだお前、またイベントか何か考えてるのか」


 和泉は不敵な笑みを浮かべながら、カバンからタブレットを取り出す。

 中には、彼が気合を入れて作ったのであろうイベント案があった。


「ほう……。これだけのネタを作っていたのか……。ほんと、お前ってこういうの好きだな……! 生徒会活動のついでによくやる」

「俺の生きがいさ」


 今月頭の屋内スキーやスケートはまだいい。

 期末テスト後の予定に、カラオケルームでの王様ゲームまである。この男正気ではない。


「王様ゲームっていうのは、何だかワクワクしないか? 己の力及ばぬところから下された命令で、意に反することをせねばならないこのストレスがなんとも……」

「変態め! っていうか和泉は、クリスマスは彼女と過ごさないのか?」

「彼女とはもう終わったんだ。性格の不一致というやつでね。まあ今回は一ヶ月持ったんだ。だいぶ長いほうだぜ」


 和泉恭一郎という男は、とにかくモテる。

 学園内でもずば抜けて顔がいい上に頭もそれなりによく、運動神経だって割りといい。女性に受けるトークや付き合い方を心得ているし、流行に対する研究にも余念が無い。


「お前、いつか刺されるぞ」

「兄貴が刺されかけたからね。前からなら対処しようもあるが、後ろからはお手上げだと言ってたよ」


 彼は円滑な学園生活を楽しむため、学内では彼女を作らない主義らしい。

 他校の女子生徒からはちょこちょこ告白を受けていて、割りとすぐに付き合うのだが、何かと理由をつけてすぐに別れる。

 和泉に付きまとうストーカーの数は、片手では足りないらしい。

 ただ、多すぎて、ストーカー同士が骨肉の争いをするので、和泉は全くもって無事らしい。

 一時期、和泉と仲がいい夏芽がストーカーに狙われたらしいのだが、刃物で攻撃してきた相手を、凶獣夏芽はスパイク一発で叩き伏せたらしいという伝説が流れたことがある。

 多分それは本当だ。

 あと、和泉と夏芽は『男の友情』で結ばれている。

 夏芽に言うと殴られるから言わない方がいい。


 ともかく、和泉という男は男同士の連帯や、恋愛が絡まない遊びというのをとても大事にしている。

 彼が立てた今回の企画も、きっとかなり練り込んであるのだろう。

 不思議と、勇太の周りの女子達は、和泉に色目を使わない稀有な子ばかりなのだ。

 和泉としても非常に居心地がいいらしい。

 ちなみに、こいつが話してくれたんだが、理想の女性のタイプはまんま、勇太らしい。

 勇太に告白されたら一発で落ちる、と断言していた。

 郁己は、いつかこいつとは戦わねばならんかも知れん、と戦々恐々とするのであった。



 昼休みの時間は40分もあるから、さっさと弁当を食べてしまえばたっぷりと自由時間が取れる。

 和泉は今回の遊びに呼ぶ面子を招集し、どのイベントを行うか決を取った。

 この時間帯、生徒会の用事があったらしいのだがぶっちした和泉である。


 顔ぶれはいつもの連中だ。

 郁己、勇太、上田、楓、夏芽、これに、今回は境山と晴乃が加わるらしい。

 境山なんて普段何を考えているか分からない男なのだが、不思議と郁己とウマが合う。

 一体どこで和泉と知り合ったのか謎すぎる。

 晴乃はお目付け役ということで、勝手についてくることになったらしい。

 多分、休みの間もあのちゃらんぽらんな和田部先生と同じ家にいるのが嫌なのだろう。

 彼の反動で、この真面目な和田部晴乃副委員長が誕生したのだ。


「門限というものもあるから、きちんと予定を立てましょう。私はスキーは反対だわ。日帰りは難しいもの」

「え、泊まっちゃえばいいのに」


 勇太の言葉に、晴乃は目を剥いて怒った。


「とんでもないわ! うら若き男女がひとつ屋根の下なんて、恋人同士だとしても私たちはまだ学生よ!? 間違いがあってはいけないわ。 ということで、このスケートかボウリングを押すわ」


 お硬い反対理由はともかくとして、スケートやボウリングなら確かにお手軽だし、後者なら外食やらショッピングとも組み合わせられるかもしれない。


「す、スケート、したい、な」

「水森さんがスケートなら俺もスケート!」


 楓・上田カップルはそういう意見。


「私はなんでもいいわよ」

「うん、私もどれでもいっかなー」


 運動神経抜群、夏芽と勇太は意見なし。


「温かいところがいい」

「……」


 郁己はボウリング派で、境山は意見なし……?


「……スケート」

「おお、境山が喋った! 俺もスケート派だな、この中なら」

「はい、それじゃあ、スケートに決定します」


 晴乃がメガネをキランと光らせて仕切り始めた。

 いつ用意したのか、ノートに蛍光ペンで計画を書き込み始めている。

 和泉が作ったタブレット上の計画を、しおりという形でまとめるつもりらしい。

 副委員長、そんな趣味が……!

 サラサラ描いてるイラストが、妙に上手い。


 そういう訳で、来週からの期末テスト期間終了次第、スケート大会となったのである。

 その頃にはコートだけではなく、マフラーに手袋と、完全装備が必要になってくることだろう。

 さあ、もりだくさんの十二月の始まりである。

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