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海水浴、彼女の水着と海の家

水着描写は捗ります

 城聖学園が男女六人、ワンボックスカーにむぎゅっとつめ込まれて、海にやってきた。

 運転するは、坂下家の長女、綾音である。大学生である彼女は、この夏に一人侘びしく家でテレビなど見ていたところ、夏休み突入したての弟に引っ張られて、運転手に任命されたのである。


「うはー、疲れたー。運転きついわー」


 車を止めて降りると、腰をトントン叩く綾音に、助手席から降りた少女が駐車場入口で買ってきたスポーツドリンクを差し出した。


「おっ、心葉ちゃんありがとう! いやあ、気が利くわねえ」

「いえ、お世話になってますから」


 そんな彼女たちの背後で、どやどやと降りてくる者達。

 郁己と勇太、和泉と夏芽、上田と楓である。

 テンション高めで、お喋りも止まらない。


 空は晴れ渡り、絶好の海日和。

 海水浴場は案の定混んでいるけれど、人が多いってことはお祭り気分みたいなもので。


「いや、これは楽しみだな! 主に女性陣の水着がだけど」

「和泉も正直だな。しかし今年は勇太と二人かと思ってたけど、あと二人も増えてよかったよかった」

「坂下こそ男を数に入れてないよな?」


 と、掛け合いしながら歩く郁己と和泉の後ろで、のっぽとちっちゃいのがきゃあきゃあ騒いでいる。


「もうね、この隙に遊んどかないと、一週間でインターハイだから!」

「夏芽ちゃんがんばだよ! 今日は遊びまくらないとね!」

「うんうん、私の水着で浜辺の男どもを悩殺してやるわ!」

「私は目立たなくてもいいかな……!」

「何言ってるのよ勇! あんたこそ、どどんと前に出なくちゃ!」


 しんがりは新米カップル。


「みっ、水森さんの水着、楽しみにしてるぜ!」

「うん、あ、ありがとう。でも、ちょ、ちょっと恥ずかしい、な」

「大丈夫! 水森さん、絶対似合ってるから! まだ見てないけど!」


 いや、真のしんがりは運転手と付き添いの少女だった。

 綾音が太陽の圧倒的光量にぶつくさ文句を言いながら続く。


「いやー、ありえないわー。この日差しの下で素肌とかないわー。UV塗りたくりですわー。帰りも運転かと思うとビールも飲めないわー」

「お疲れ様です。海の家についたら肩をお揉みします」

「ううっ、心葉ちゃんはいい子だねえ。お姉さん、心葉ちゃんをお嫁に欲しいよ」

「ビールを飲んでもいいのです。帰りは運転代行を呼べばいいのです」

「その手が……! もしや心葉ちゃん天才……!?」


 勇太によく似た少女が、無表情ながら綾音の賞賛にドヤ顔っぽい雰囲気を醸し出す。

 そんな彼ら八人が到着したのは、それなりに大きな海の家。外からも見える調理場では、マッチョなお兄ちゃんが焼きそばを豪快に焼いている。


「おー、ウマそう」

「やはり海の家といえば、焼きそば、カレー、ラーメンだよな。勇はどれにする?」

「私焼きそば!」

「これこれ欠食児童たち。いきなり食べ始めてどうするのよ」


 席を決めて荷物を置き、綾音と心葉は荷物番。

 六人はそれぞれ更衣室に消えていく。

 男たちの着替えは速い。一般的にトランクスタイプに着替え……とルーチンをこなそうとしていた郁己は、和泉を見て目を見張った。


「ブーメランパンツ……!!」


 こやつ……! と郁己の背筋を戦慄が走った。


「フフフ、下の手入れもバッチリだ。全てこの日のためさ!」

「あわわわわ、えらいこっちゃ」


 改めて、郁己は和泉恭一郎という男の恐ろしさを実感する。


「はあぁ、水森さん水森さん水森さん水森さん水森さん……」


 別世界にいっちゃってるのも約一名。

 ともあれ、着替えが早く済んだので、どやどやと男チームが登場。

 和泉の格好を見て、綾音は「あと3歳年を食ってれば……」とか言い、心葉は眉を寄せて奇妙なものを見る目をした。


「(金城さんの妹さんもかなりレベル高いよな。フリーなのか?)」

「(お前心葉ちゃん狙うのかよ!? あの子のガード、鉄壁ってレベルじゃなくイージスの盾レベルだぞ!)」

「(だからこそ落とす価値が……)」

「そもそも心葉ちゃん、男に興味があるのかどうかすら……」

「……?」


 心葉が男二人のやり取りを、首を傾げながら聞いていた。

 そんなこんなしている間に、女子たちの着替えが終わった様子である。

 先頭を切ってやってきたのは、やはりと言うか流石というか、夏芽だった。


「お待たせ! ……どう?」

「おおっ」

「うおっ」

「ひえっ」


 三者三様の感想が上がる。

 四月で16歳になっていた夏芽だが、それでも180㎝を超える長身と、長い足、鍛えられて引き締まった体は、年齢相応には見えない。ガッチリしたモデル体型ながら、腰回りや胸元など、つくべきところにはきちんと肉が付いている。

 さらに、ペイズリー柄の露出度多めのビキニもよく似合う。

 これで日焼けして、肌を小麦色にしてしまえば、絵になるだろうな、なんて思わせる姿だった。

 海の家にいる他のカップル連れも、男のほうがぽかんと口を開けて夏芽を見てて、彼女に腿をつねられたりしている。

 夏芽の方も、そういう反応が分かっててちょっとセクシー女優っぽいポーズを決めるもんだから、体を捻った隙間から、胸元とか、ボトムのリングになったサイド部分とか、微妙な場所が覗けそうで覗けない。


「これは……いきなり高得点が出ましたねえ和泉さん」

「ええ、後続の選手、いささか苦しい戦いになるかもしれません」

「うわあああ、俺には水森さんが、水森さんがああ」

「あんたたち面白いわねー」


 綾音がビールを飲みながら言った。既に飲み始めている。

 続いて、可愛らしいピンク色の色彩。

 楓がもじもじしながら登場である。


「どう……かな?」


 モノキニは、前側はワンピース、後ろから見るとビキニというタイプの水着。楓が身に着けているのは、脇腹のスリットが深く、肉付きの薄い彼女のお腹のサイドの陰影がしっかり見える。あまり自信が無さそうな胸元は、フリルタイプの布地がしっかり補ってくれる。


「うおおおおおおおお!! 水森さん! いいよ! 最高に似合ってる! 可愛いよ!!」


 上田が吠えた。

 溜まりに溜まったリビドーが今、終着点に達したのである。

 我慢した甲斐があった、と上田は涙した。


「そ、そう?」


 照れながらも満更では無くて、楓はその場でくるっと回ってみせる。

 再び言うが、後ろから見るとビキニである。背後側の露出度はかなり高い。半ばまでむき出しになったお尻と、背中から肩甲骨にかかり、今はむき出しのうなじまでが一直線でしっかり見える。

 上田が限界を迎えた。

 鼻血を垂らしながら崩折れる。


「ウオッ! 上田っ! 上田ー!!」

「これは興奮しすぎたな……。どうしたものか」

「きゃあ、う、上田くん!?」

「あちゃあ、そこまで興奮したわけ……?」


 しんなりした上田を助け起こす和泉の手を、止めるものがいる。

 心葉だ。


「気付けをしましょう」


 彼女は無表情でそう言うと、上田の肩を掴んで、「哈っ」と掛け声。明らかに目に見えるほど濃密なサムシングが彼の体に送り込まれ、びくんと痙攣して目を覚ました。


「はっ、お、俺は一体」

「上田くん!!」


 復活の上田に、安堵した楓が涙目で抱きついたので、


「み、水森さ……っ!!!」


 まだ上田が鼻血を吹いてしんなりした。


「もう知りません」


 心葉がコーラを注文した。

 そして最後は勇太である。

 自信なさげにタオルを巻いて、てててっと出てきて、ちょこんと郁己の隣りに座る。


「金城さん……。タオル脱がなきゃ」


 笑顔で言う泉だが、目が笑ってない。


「そうだぞ勇、脱がなきゃ」

「郁己はなんか別の意図があるみたいに聞こえるぞ! ……仕方ないなあ。笑わないでよ……?」


 はらりとタオルを落とすと、男二人と綾音が目を見開き、楓は口元を抑えてのけぞり、夏芽がドヤ顔をして、心葉がコーラを飲んだ。


 上着はタンクトップタイプで、ウエストまでゆるやかに落ちるデザインながら、胸に生まれた谷間がすごい。ブルーストライプの水着だから、ふくらみも縮小して見えるのだが、それでもボリュームを感じさせる。あえて模様の違うボトムのハイビスカス柄も可愛く、大人と少女の中間に位置するであろう、勇太の魅力を存分に引き出していた、と郁己は見た。

 つつつっと近寄って、


「(しかし、本当に夏までになくなっちゃって正解だったな)」

「(俺は別に、パレオでも良かったんだけど)」

「(俺はパレオじゃない方が)好きだ! あと、すげえ似合ってるな!」

「そこだけ大きい声で言うなよ! んもー、馬鹿郁己ー!!」


 だが満更でも無さそうである。

 一方、郁己は、こやつに水をかけたら、胸元はどのようになるんだろうと真剣に考えていた。

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