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バーガーショップ。3人での会話。疑心とうっかり。

バーガーショップで会話しながら郁己が何やら考えたり。

落ちません。

 そこは、駅前や繁華街ならどこにでもあるバーガーショップ、モズバーガー。

 ややお高いものの、注文を受けてから焼いてくれるビーフパティはジューシーで柔らかく、同じく焼かれたバンズと相成って、育ち盛りの少年少女の胃袋を刺激せずにはいない。


「それでは、こうして出会えた幸運に乾杯を!」


 郁己の音頭に、勇太と夏芽が吹き出した。


「なんだよそれ、郁己おっさんみたいじゃん」

「正直ないよね、それは。ふつーに乾杯でいいじゃない」


 横に並んだ小柄な少女と、大柄な少女が続ける。

 郁己はそんな二人をじっと観察する。主に、大柄な少女……岩田夏芽のことだ。

 入学式終了後、自分と勇太の間に入ってきたイレギュラー。彼女はどのような人物なのか。

 金城勇太は、つい数ヶ月前までは男子中学生だった女子高生だ。そうなってしまったことには特殊な事情があり、それゆえに彼……彼女は、中学まで育った学区を離れて通学することになった。

 自分がそれに付き合っているのは、少しなりとも、勇太の姿に責任を感じているからだ。

 多分そうだ。

 決して女になった勇太がちょっと可愛いと思ったからだけではない。

 


「……でさ、私のことを大女とかマウンテンとか言っていた男子はそれで再起不能になったわけよ」

「ひえー」


 勇太が慄く声が聞こえる。

 恐ろしい話をしている女子連中だ。

 さて、この娘、どこまで勇太の話をできるものか……。

 いや、できないだろう。

 常識で考えて、元男子の女子なんて話は容易に信じてもらえるとは思えないし、それで人間関係に距離ができてはやりづらくなる。

 だが、いつまでも誤魔化していられるものか?

 勇太は完全に女の子になっていないし、ひょんなことで気付かれでもしたら、隠していたことが問題になったりは……。

 いやいやいや、今からそんなことを考えてどうするんだ?

 石橋を叩いて渡るのは構わんが、石橋を壊れるまで叩くのは無駄な行為だ。

 つまりそれくらい無駄な慎重さではないのか、これは。

 

「…くみ、郁己!」

「んお!? ふおふー!?」


 顔を上げた瞬間、口に太いポテトを突っ込まれた。

 揚げたてホクホク、程よい塩味だが、思わず噛み切った中からじゅわっと熱い芋が顔をのぞかせる。


「ふわっち!? あぢ、あぢぃって!?」


 慌ててドリンクを口に含んだ。郁己はいつもコーラである。

 炭酸の刺激は熱した舌にややきつかったが、清涼飲料水の冷たさが落ち着きを取り戻させてくれる気がする。


「な、何をしてくれるのだね金城さん!」

「呼んでも反応しないんだもん」


 ちょっとぷーっと膨れて見せるあたりがもう抱きしめたくなるくらい可愛い。


「俺に話を振るのなら、もっと話しかけてくれなさい。そもそも勇太は」

「ゆうた?」


 やばい、岩田が食いついた。


「ゆ、ユウタンは」


 ぶばっと勇太が含んでいたジュースを吹き出した。

 鼻に入ったらしくむせている。ちなみに彼女のドリンクはメロンソーダ。

 危ないところだった。

 勇太は事情があって女として入学しているから、(実際女になっているのだが)名前は金城勇、ということになっている。

 戸籍を見られれば一発なのだが、高校生で戸籍を調べるようなことを考える輩はおるまい。

 いたとしても付き合いたくない。

 なんだか勇太が赤くなって凄い目で睨んできているが気にしないことにする郁己である。


「ユウタン、って呼んでるわけ? マジで? ひええええ、は、は、恥ずかしいぃ」


 夏芽まで真っ赤になっている。

 無論、郁己も真っ赤だ。

 だが後には退けぬ。大事な親友のためだ。

 ここで勇太を疑われるわけには行かないではないか。


「その通り……フガッ」

「なわけないじゃん!!」


 開きかけた口にまたポテトを突っ込まれた。

 郁己の口を塞いだ勇太は中腰のままで、ぐりっと夏芽を向くと、


「もうね、もうね、全部この男の妄想だから!俺とこいつは普通の友達だから!特別な関係とかじゃなくて!その、こい、こい、とか、ほら!そういうのじゃ全然ないから!」


 やめろ勇太、必死に否定するほど夏芽の表情が笑顔に変わって行っている。

 間違いなくこいつは勘違いしている。

 ……勘違いなのか?

 郁己は首をかしげると、気を取り直してやや冷めたポテトを咀嚼した。そして。


「バーガー食おう」


 バーガーショップに来た本懐を果たし始める。

自宅に帰る電車の中。

そりゃあのイベントだってあるわけで。

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