のっぽ女子から見た小さい友達→閑話休題。
城聖学園高等学校は、スポーツがそれなりに有名な高校である。
特に、女子バレーは強い。
毎年全国各校から、スポーツ推薦で特待生がやってくる。
岩田夏芽もその一人。
180㎝を超える身長、全身のバネは強く、足腰が強い。中学ではスーパーエースとして活躍。所属中学を、そのスパイク一本で全国準優勝まで導いた。
問答無用に超大型新人である。
彼女の生活は全て、バレーボールのためにある。
他県からやってきた彼女は、全てをバレーに捧げるつもりでやってきた。
そこで、ちっこい女の子と出会う。
同い年だというのに、頭2つ分も差がある。
勇、という名前の彼女は背丈はクラスで一番小さくて、夏芽は一番大きい。
入学式では周りより頭ひとつ以上大きいから、周囲を睥睨できる。
すると、一箇所だけ凹んでいるところは結構目立つのだ。
彼女はガチガチになって、妙に緊張していた。
……かーわいい。
挙動不審で、周囲をきょろきょろ。
校長や生徒会長の挨拶が見えないらしくて、背伸びしたり、ちょっとジャンプしたり。
うわ、なにあの子。
可愛すぎる、反則だよ。
会場の体育館から戻る時、その子は妙に急いでいて、階段を一段とばし。
そうしたら案の定、ガツンとつまずいて、あろうことか後頭部から落っこちてきた。
「うおおっ!」
乙女らしからぬ咆哮をあげて、夏芽は三段飛ばしで跳躍した。横を駆け抜けられたクラスメイトが目を丸くしている。
そして、落下しようとした彼女をばすん、と受け止めた。
夏芽は胸板には自信がある。鍛えぬかれた筋肉と、バランスよくボリュームもある胸。優秀なクッションが勇をバッチリ受け止めた。
ずり落ちそうな彼女を、むぎゅっと抱きしめる。
ふんわり柔らかくて、いい匂いがした。
「大丈夫?」
そう聞いたら、彼女は真っ赤になって、
「あ、あ、あ、あり、あり、ありがと」
上がり症なのかしら。
クラス一番ののっぽと、クラス一番のちびっ子の組み合わせは実に目立ったらしい。
注目を浴びてしまった。
手を離すと、彼女はぴょいーんと弾むようにして夏芽から離れ、結構上にある床へ着地。
これって何気に、凄いバネ。
彼女はばたばた走ってクラスへ飛び込んでいった。
あらあら、と笑いながら夏芽は後に続く。
他のクラスメイトたちも、勇には微笑ましいものを感じているらしい。
あの娘かわいいよね、なんて会話しながら教室の扉をくぐった。
まだこの身長なら、頭は引っ掛からないな。
さて、教室内に入ったらば、さっきのおちびさんったら男の子と額を突き合わせてお話をしている。
ずいぶん距離も近いし、会話にも熱が篭ってるようだから、ちょっと茶化してあげた。
「お熱いねお二人さん。それとも同じ中学?」
彼は坂下郁己君と言って、同じ中学の子らしい。聞けば結構遠いところから通っているとか。
二人の仲に興味があったから、駅近くのバーガーショップまでお付き合いしてみた。
この二人はどうやら、友達以上、恋人未満というところらしい。
夏芽から見ると、郁己は勇のことを意識していている。
勇は、多分、自分の気持に気づいてない。
お熱いなあ、なんて思うのだ。
部活見学に来た彼らはちょっと注目の的で、男子たちからじっと見られる勇に同情したものだ。
だが、立派に郁己は男の子をしていて、きちんと勇を男たちの視線から守っていた。
うん、好感度高いぞ。
何故か二人が、弟や妹みたいに見えて微笑ましい。
郁己とつるみだした和泉という男子生徒がいる。
二人で何やら、良からぬことをたくらんでいるみたいだけど……。ははーん、ゴールデンウィークに、郁己は勇に何かモーションをかけるのかしら。
後日、和泉から連休中の二人のデートを聞き出して、ちょっとニヤニヤ。
ほんと、微笑ましいったらありゃしない。
ちょっと行く先が心配な二人だけど、退屈しないわね、なんて思うのだ。




