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「ダメだ、何故、何故来た!自分の世界に帰れ!」
愛しいと思った声で俺は我に返った。
ここは、何処だ?
何だ?あれは?
ふと見た自分の手が透けている。
「神よ!何故彼を寄越した!!余計なことをするなっ!」
泣いているような叫び声に彼女の姿を視界に入れる。
けれど、ぼやけてハッキリと見ることができない。
たくさんの巨大な玩具箱が散乱する世界。
歪んだ大地と色とりどりの空。
その空に浮かぶのは、どこか滑稽な姿のピエロ。
不敵な笑みを浮かべるピエロはジャグリングのボールで遊んでいる。
なんだ?
ここは・・・。
大地さえ歪んでいる世界は平衡感覚や視覚を狂わしていく。
実体のない俺は、ただ、その場所から動けないまま立ち尽くしていた。
ピエロは時々、ボールを投げて寄越す。
そのボールは、この空間にあるモノに触れるだけで大きな爆発を起こす。
爆風は俺を通り過ぎていく。
彼女は、俺を横目で見ながら、ボールを避けて、ピエロに攻撃を仕掛けている。
強い。
ピエロも強いと思ったが、身の丈ほどある大振りの剣を使いこなす彼女の方が強いと直感した。
俺など、足元にも及ばない。
この感情でハッと気付く。
俺は偽者だったと。
それは、誰の?
彼女の?
実体のないこの世界に現れた俺は、自分の心の中にこの空間を思い出す。
俺は戦っていた。
何かを犠牲に、何かを守るために・・・。
一体何を守ろうとしていた?
遠くで聞こえる誰かの声に背きながら。
それしか、彼女を失わない方法はないと聞かされたから。
けれど、俺は偽者だった。
俺が本物の代わりに戦うには限界があったんだ。
それは分かりきったことだった。
けれど、何とかしたかった。
彼女との時が永遠になるならば・・・。
俺は、間違ったのか?
何を?
分からない。
分からない。
相変わらず、爆音が響く狂った世界で、俺は立ち尽くしている。
目の前で信じられないほどのスピードでピエロを切り刻んでいく彼女を見ながら。
つづく
なんかポエムっぽくなってしまった。




