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短編集  作者: ピエロ
2/5

人形

人形のお話。


楽しんでいただければ幸いです。

 見えますか、あそこにある人形を。

 見えますか、あそこにある人型を。

 見えますか、あそこにある■■を。

 そこは真っ暗で何もない世界。暗く暗くどこまでも無明の闇が続く世界。

 その果てには何があるのかわかりません、きっとここより深く思い漆黒の無があることでしょう。

 人形は夜風を浴びて髪を靡かせます。そこには人形しかありません。

 人形は喋る事が出来ません。人形は喋る事が赦されません。人形は動く事も赦されません。人形はただ動いています。

 人形は御堂に入りました。闇が巣くうその場所に、人形が開け放った扉から氷のような風が入り込んできます。人形はその冷たさを気に止めましたが、人形は冷たかったので閉めました。

 人形には感情はありません。人形はそれが悲しかった。誰とも感情を分かち合う事が出来ないのですから。寂しかったのです。

 人形がこの場所に来てから数百年という歴史が流れました。人形はここに来てから人に合った事が有りません。もうどんな姿であったかも覚えていません。人形はそれが悲しい。

 人形はご飯を作りました。お腹が減ったのでした。ご飯が出来上がりました。

 人形はご飯を食卓に並べました。そしてしばらく闇を見続けました。

 闇から帰ると、ご飯は食べられていました。しかたなく人形はそれを食堂に持っていき片付けます。それは嬉しい事だったから鼻歌も混じっています。よく見ると、残していた分の食事も全て平らげられています。仕方ないので食事を作った調理器具を全て洗う事にしました。だって人形は嬉しかったのですから。

 片づけを終えると、人形を見つめます。

 人形は人形を見つめます。

 やがて人形は人形になりました。

 感覚なんてありません。感情なんてありません。何もかもが空っぽで、まるで底なしの闇であるかのような人形がいました。人形は嬉しく思いました。人形にこれ以上嬉しい事はなかったのです。

 人形は無感動に人形を見つめました。人形は嬉々とした目で見つめ返しました。

 人形は足早に去っていきました。振り返る事なんてあるはずもありませんでした。

 人形は悲しかった。しかしやはり嬉しかった。

 だから目を閉じました。

 次に目を開けると、人形は感情を喪失っていました。人形は嬉々とした目で人形をみつめていました。


 <完>

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