怪奇事変 指輪
今日も投稿遅れてしまい申し訳ありませんでした!
第四十怪 指輪
「もうじき結婚するんだって?」
「え?何処でそれを聞いたんですか??」
「噂になってるよ、だってお前とあの子が何時も一緒に居る所を見かけるし、何より帰る先も一緒だ」
「いや、たまたまですよ……」
「なるほど……たまたま休暇が重なって、たまたま同じ店に居たっと」
「……何故それを」
「いや、たまたま見た」
仕事の休憩中に話を掛けてきた先輩がからかい様に言う。
なるべく会社の人には見られない様にと務めて来ていたが、やはり隠し通せるものではなかったらしい。
「あのこのことは——」
「言わなきゃ良いんだろ?でも皆知ってるぞ??」
「いや、言うなら自分で報告したいですし」
「筋を通したいってやつか、律儀だね~。まぁほどほどにしろよ~」
「はい……はい?」
「御盛んにならない程度に」
「先輩!?」
「ハハハ!」
その場を去って行く先輩の後ろ姿を見送りため息を付く。
結婚……それは人生の節目でもあり、再スタートでもあれば、終わりとまで比喩する者も多い。
自分にとっては再スタートってところだが、彼女はどう思っているのかは不明だ。
だが、既に心は決まっている、店もある程度目星を付け足しそろそろ良いかもしれない。
そう言ってスーツの皺を伸ばす様にピシっと服装を整えて仕事を再開する。
彼は隣の別会社で付き合っている女性が居る。
出会いは会席場で、話をしていくうちに趣味やプライベートも似ておりそこから連絡先を交換し、休みの日に遊びに行くことなどもしていた。
そこから徐々に彼女を意識していくうちにこれが好意だと気づき、付き合うことになった。
今では同棲しているが、このことも会社の人たちには秘密にしている。
だが今日バレてしまった。
距離や態度など近すぎてしまったのかもしれない、どちらにしろ後になってから説明はしようと思っていたので今か未来かの話にはなるのだが。
「(そこまで露骨だったかな……)」
先ほど皆が気づいていると先輩は言っていた。
先輩は俺達を休日で見つけたと言ってたので分かるが、他の人間にはそう見えていたのかもしれない。
まぁ済んでしまった話をいつまで考えても仕方ないってことになるだろう。
ポケットの中に仕舞っていた携帯を取り出すと、彼女から連絡が届いていた。
『今日の夕飯はカレーで!』
どうやら今日はカレーらしい。
『わかった』と短く返し仕事に集中する。
だが仕事が終わった後に今日は行くところがある、そこの用事を済ませてからではないと今日はちょっと帰れなさそうだ。
帰宅後、自分はそのまま入店して指輪を見ていく。
「どのような物をお探しですか?」
「えっと、結婚指輪を」
「ご結婚なされるのですね、おめでとうございます」
「いえ、まだ結婚自体言ってないので驚かせようと……」
「それならこれはどうですか?」
「えっと……」
店員さんは女性の方なので男性の心よりも同性の気持ちが分かりやすい分、指輪探しも楽だと感じた。
良い物を見繕ってもらい後日購入しに来る約束を取り付けて帰路に着く。
「あ……」
ポツリっと冷たい何かが落ちてくる。
それは雨、今日の天気予報で降るとは言っていなかったのに急な雨に鞄を頭に掲げて帰る羽目になるとは。
情けないと思いながら早々に帰路に着く途中で何か金属音が響く。
コインか何かを蹴っ飛ばしてしまったのだろうか?
その方角に向かって歩くとそこには汚れた指輪が落ちていた。
「落とし物?」
拾い上げた指輪には名前が掘られているようだが、あまりにも汚れと傷のせいで見えなかった。
それを拾い上げて交番へ届け、いよいよ帰路に着けた。
帰宅後は彼女が迎えてくれ、タオルを用意してくれていた。
「大丈夫?お風呂沸いてるよ?」
「ありがとう、急な雨でやられちゃって、助かるよ」
そう言って笑顔を見合わせて見つめ合う。
2人の視線は絡め合いお互いに距離を縮め、口づけをする。
そんな甘い時間を堪能しているとリビングで何かの音が響く。
「いけない!火つけっぱなしだった!」
「怪我しないように!」
「うん、ごめんね!」
口をそっとなぞり微笑む。
自分は幸せ者だと感じ、予定日に告白するのが楽しみだ。
「それじゃ行ってくるね」
「気を付けてね、アナタ」
「え?」
「フフ、だってアナタって分かりやすい人なんだもの」
「……何の話?」
「こ~れ」
そう言って手をかざして見せてきたのは薬指にはめられた“指輪”だった。
「え!?」
いや、オーダーメイドで今制作している途中だ、指輪なんてあるはずがない。
それよりもおかしいのは気の道端に落ちていた“指輪”が何故彼女の元にあるのかだ。
「少し汚れてるけど……愛してるわ」
「……あ、ああ。俺も愛してるよ」
おかしい、何故届けた指輪が此処にあるのか?
そしてそれを何故彼女が嵌めているのか……取り上げる訳にも行かず、結局その日はモヤモヤとした気持ちを抱えながら仕事をすることになった。
帰宅時、昨日行った交番に指輪の話をすると紛失者が来て持って行ったそうだ。
若い女性らしく念のため写真も見せた……が、その人物ではなかったと言う。
確かに警官が言うには長髪の黒い髪をした女性が持って行ったと言った。
「(確かめる必要がある……)」
帰宅後、彼女の入浴の隙を付いて指輪を調べることにした。
「昨日と同じだ……掘り込みも、やっぱり!傷で見えない」
何故此処にある。
彼女はセミロングのブロンド髪だ、特徴も何一つとして一致していない。
なのに……何故?どうやって此処にきたのか?
急に鳥肌が立ってくる。
「お風呂あいたよ~」
「ッ!?あ、ああ!今入る」
指定の位置に指輪を戻して入浴する。
風呂に入ってる間も指輪のことばかり考えている、それにこんな話、言い出しづらい。
実は他人の落とし物で、知らぬ間に家に有りました……なんて俺が彼女なら100%信じないだろう。
仮に信じたとして不気味な話すぎる。
どうすれば良いか考えていると、急に明かりが消える。
「?」
停電……と言う訳ではない。
外の明かりは点いているし、彼女に消されたとしか考えられない。
「なんだ?どうかしたのか?」
そう言って近づこうとすると何かに掴まれたような感覚に陥る。
足が……動かせない。
浴室の折れ戸の向こうから長い髪の何者かが姿を現す。
恐怖で動けないが、思考は巡っていた。
アレは……警官に聞いた話の人物と同じ人物なのではないか?
だとして、何故此処にいる?どうやって部屋に入ってきた??
疑問が尽きない中、ゆっくりと折れ戸を開けてくる女性に恐怖しながらその時間を過ごしていると、廊下を走る音と共に勢いよく外の扉が開かれる。
「ねぇ!私の指輪知らない?」
「え?」
「あ!こんな所にあった、も~なんで勝手に持って行くの?」
「あ、え?……と、ごめん。ちょっと気になって……気づかずに持ってきてしまってたのかも」
「私にくれたんだよね?意地悪しないでよ~」
そう言って彼女は出て行った。
その頃には身体の硬直も解けており、ホッと一息をつこうと湯船に漬かろうしたところで奇妙な感覚に気づく。
「……ッ!?」
声にならないほどの驚きで壁に張り付く。
浴槽には、女性の長髪が浮いていた。
——翌日——
目を覚ましても昨日の出来事が鮮明に記憶に残っている。
通勤時、いつも満員となる電車で窮屈な思いをしてイライラしている自分は、そこには居なかった。
だが一番衝撃は会社に出勤してから先輩に放たれた一言だった。
「なんだ、ようやくプロポーズしたのか?」
「はい?」
「ん?違うのか??」
「まだ何もしてませんけど……」
「じゃなんで——指輪嵌めてるんだよ?」
「ッ!?」
彼女が付ける訳がない。
何故、どうして自分の指に指輪が嵌められているのだろうか?
直ぐに指輪を外し勢いよく引き出しの中に入れた。
「お、おい」
「なん、でも……ありません」
冷汗が出る。
あの日拾った指輪……紛失した人物は既に取りにきたと言っていた。
なのにその指輪は今此処にある事実。
何が起きているのか分からない、頭が混乱する。
結局その日は仕事のミスの連続、頭の中は既に真っ白になっており先輩の言葉も耳に入ってこないほど重症だった。
帰りにオーダーメイドした店に行くと、どうも指輪の完成が遅れているそうだ。
早めに制作してほしいと頼んでみたが、かだ数週間はかかるらしい。
何も要は無いのに交番に向かい、近くのベンチの腰を降ろし周囲を見渡す。
やってることは完全に不審者だが、それでも持ち主が此処を通っている可能性はあるかもしれないと勝手に頭でそう思い込んでいるだけだった。
それも直ぐに飽きて帰路に着く。
「ただいま~」
何時もは「おかえり!」と返事が返ってくるのだが、生憎今日は先に帰ってないみたいだ。
そのままリビングに向かうと既に料理が用意されていた。
「なんだ居るじゃ——」
——オカエリ——
そこには見知ら長髪の黒髪女性が不気味な笑みを浮かべ待っていた。
顔を見えない、前髪が長すぎる。
傍らには倒れている彼女……いや、それよりも今になって気づいたこの鼻に突く香りは。
——キョウハアナタノタメニトクベツナゴチソウヲヨウイシタノ——
食卓を見ると——そこに並べられていたのは***だった。
第四十怪 婚約指輪
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