表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物喰いの境界線Ⅱ ~卒業した俺と五人の愛しき乙女たち。世界最速の移動拠点(テツクズ号)で巡る、未知の食材と神殺しの美食旅~  作者: ヒデまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/29

第8話:『陥落の王都、フィオナの覚悟と「重すぎる愛」』

地底の岩盤を突き破り、地上の光を浴びた『テツクズ・マークII』の視界に飛び込んできたのは、数日前に後にしたばかりの輝かしい王都ではなく、街全体がどす黒い泥の海に沈みかけている地獄絵図だった。

「……ひどい。……全部、泥に溶けてる。……人々の影が、消えていく」

 車窓から外を眺めるミーニャが、震える声で呟く。銀色の猫尻尾は恐怖で逆立ち、リィネの千里眼もあまりの惨状に曇りかけていた。

「シュウ様、王宮の真上に『真の主』の影が視えますわ! ……あれは、この世界の因果そのものを腐食させ、飲み込もうとしていますわ!」


 王都を飲み込もうとする泥の波は、生き物のようにのたうち、逃げ惑う人々を容赦なく引きずり込んでいく。その中心、かつてシュウたちが卒業式を挙げた学園の講堂は、今や巨大な泥の噴出口と化していた。

「……待て。あそこに残っているのは……フィオナの侍女か?」


 シュウが指差した先、崩れかけた王宮のバルコニーで、泥の魔物に追い詰められている数人の生存者がいた。

「――お下がりなさい。その不潔な手で、私の民に触れることは許しませんわ!」

 テツクズ・マークIIのハッチを蹴破り、フィオナが弾丸のように飛び出した。

 黄金の髪を激しくなびかせ、彼女は空中へと静止する。その瞳は、怒りと慈愛が入り混じった、真の統治者の輝きを帯びていた。


「フィオナ、一人で突っ込むな! まだ敵の正体が――」

「いいえ、シュウ! 私にはわかっているの。……この泥を止められるのは、私の『愛』だけよ!」

 フィオナが両手を広げると、王都全域を覆うほどの巨大な魔方陣が虚空に展開された。


 【重力魔法・極圏:アトラスの嘆き】。

 凄まじい轟音と共に、王都を飲み込もうとしていた泥の波が、まるで見えない巨大な手で押さえつけられたかのように、その場でピタリと静止した。


 だが、その代償はあまりに重い。数万トンの泥の質量を一人で支えるフィオナの白い肌には、魔力過負荷オーバーロードによる赤い亀裂のような紋様が浮かび上がり、口端から一筋の血が流れる。

「……フィオナ! 無茶だ、その魔力量じゃ体が保たん!」

「……黙って、シュウ! 私の愛は……一度掴んだものは、死んでも離さないって言ったでしょう……! 国も、民も、そして貴方も……全部、私が繋ぎ止めてみせるわ!」

 これこそが、彼女の「重すぎる愛」の正体。


 執着、独占、そして守護。そのあまりに巨大で偏った感情が、物理的な「絶対停止の重力」へと昇華された瞬間だった。


「……三分だ。シュウ、貴方に三分の時間をあげる! その間に、学園の地下にある『泥の心臓』を断ち切りなさい! 私が……この国を背負っている間に!」

 フィオナの悲鳴に近い叫びが、シュウの魂を叩く。

 彼女が街を、因果を、重力で固定している今だけが、泥の核を叩く唯一の好機。


「……わかった。……三分もいらない。……一分で、不味い根源を解体してやる」

 シュウは、ガストンの打ち直した『神殺しの黒包丁』を抜き放った。

 漆黒の刃が、フィオナの重力圏を切り裂き、泥の渦巻く学園の地下へと突き刺さる。


 ミーニャが影の道を作り、エレインが精霊の風で背中を押し、リィネが勝利の因果を指し示す。

「……ガストン、テツクズ号でフィオナを支えろ! ……行ってくる!」

 シュウは泥の海へとダイブした。

 愛する女が命懸けで支える、一瞬の静寂の中。

 境界の調理師による、世界で最も過酷な「毒抜き」が始まった。


【今回のステータス更新】

名前:フィオナ

称号:【国を背負いし重力の女王】

覚醒スキル:【不変の重力圏エターナル・グラビティ

効果:自身が指定した領域内の全事象を完全停止させる。ただし、発動中は自身の生命力を激しく消耗する。


名前:シュウ

レベル:62→75 (泥の魔物を道中で解体・吸収)

状態:【超集中・神速解体】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ