表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物喰いの境界線Ⅱ ~卒業した俺と五人の愛しき乙女たち。世界最速の移動拠点(テツクズ号)で巡る、未知の食材と神殺しの美食旅~  作者: ヒデまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/29

第7話:『地底の聖域、神殺しの包丁とガストンの拳』

エルフの森を後にした『テツクズ・マークII』は、北嶺の峻険な山脈の麓にある、巨大な縦穴へと突入していた。

 岩肌を削り、激しい火花を散らしながら垂直に近い斜面を駆け下りる装甲車。そのハンドルを握るガストンの太い腕には、浮き出た血管が脈打つほどの力が入っていた。

「……着いたぜ。俺の故郷、鉄と炎の都『ゴロンドール』だ!」

 広大な地下空洞に広がっていたのは、かつて数千の槌音が響き渡り、溶岩の河が血管のように流れていた鍛冶の聖域だった。だが、今のそこにあるのは、死に絶えた灰色の静寂だ。

 都の中央にある巨大なふいごは停止し、ドワーフたちは泥に汚染された、不気味に熱い「魔放熱」に晒され、熱病のように道端で倒れ伏していた。

「ガストンか……。よく戻ったな。だが、遅すぎたぞ」

 現れたのは、ガストンの師匠であり、この国の最高鍛冶師である古老ボルグだった。

 かつて巨大な鉄床を片手で扱ったという彼の右腕は、肩口までドス黒い泥に侵食され、まるで腐った岩のように硬直して動かない。

「地底最深部の『始源の炉』が泥に呑まれた。火が消え、この熱気が泥に変われば、俺たちドワーフは終わりだ……」

 その時、炉の奥――地底の裂け目から、大地を震わせる咆哮が響いた。

 這い出してきたのは、溶岩と泥が混じり合い、全長数十メートルに及ぶ節足を持った異形の巨獣――『熔泥の百足ラーヴァ・アビス』。

 その甲殻は、溶岩の熱を閉じ込めながら泥で固められ、どんな名剣も通さない絶望的な硬度と、触れるものすべてを腐食させる熱を帯びていた。

「……ガハハ! 師匠、見てな。俺が打った最高の『作品』が、その化け物を料理するぜ!」

 ガストンが叫び、テツクズ・マークIIのコンソールを叩く。

「ハッチ開放! シュウ、あいつの殻をぶち破れるのは、お前しかいねえ!」

「……ああ。……リィネ、一番『不純物』が溜まっている場所を視ろ」

「視えましたわ。関節の裏、溶岩が泥に変わる瞬間の『温度の継ぎ目』ですわ!」

 シュウがハッチから飛び出し、熱風の渦巻く中を弾丸のように突き進む。

 百足が放つ灼熱の泥がシュウを襲うが、フィオナの重力がそれを空中で静止させ、ミーニャの影がシュウの足場となって空間を跳ねさせる。

 だが、百足の放つ熱量は凄まじい。シュウが手にした包丁の刃が、敵に触れる前に赤く歪み始めた。

「……っ! さすがに、この熱は不味いな。刃が保たん」

「シュウ! その包丁の『真の姿』を呼び覚ませ! それはな、俺の先祖が『神の骨』を削って作った未完成の聖遺物なんだ! お前の『魔物喰い』の魔力を、その骨の髄まで流し込め!」

 ガストンの魂の叫びが響く。

 シュウは目を閉じ、包丁の柄を強く握りしめた。

 自身の内側に渦巻く、これまで喰らってきた膨大な魔物の生命エネルギー。それを、包丁という「器」に叩き込む。

 ――その瞬間。

 歪んでいた包丁の刀身から、一切の光を吸い込むような漆黒の輝きが溢れ出した。

 赤熱していた刃は一瞬で絶対零度の冷気を帯び、神々しいまでの鋭利さと、あらゆる理を断ち切る「格」を宿した。

 【境界解体:神殺しの黒一閃】。

 シュウが閃光となった。

 百足の堅牢な甲殻が、まるで熱したナイフを通すバターのように、音もなく両断される。

 一撃。

 泥の核を正確に断ち割られ、百足は溶岩の飛沫を上げながら、ただの「高級な食材」へと変わり果てた。

 戦闘後、シュウは浄化された百足の「最高級の甲殻」を大鍋の蓋代わりに使い、地底の熱源を利用した蒸し料理を仕上げた。

「……師匠、これを食え。……泥の呪いを焼き切る、地底のフルコースだ」

 差し出されたのは、地底湖で獲れた『幻の銀魚』と、百足の出汁で蒸し上げた逸品。

「……っ!? ……おお、腕に感覚が……。それどころか、槌を振るう力が……かつてないほどに溢れてくるわ!」

 ボルグの右腕から泥が剥がれ落ち、筋骨隆々の太い腕が復活した。ドワーフたちに活気が戻り、止まっていたふいごが再び力強く動き出す。

 だが、安堵の空気は長くは続かなかった。

 都を揺らす巨大な震動。それは百足の断末魔ではなく、遥か上空――地上から伝わってくる絶望の予兆だった。

「……待て。様子がおかしい」

 シュウが鋭く呟く。

 その時、テツクズ・マークIIの通信魔導具が、血を吐くようなノイズと共に作動した。

『――緊急事態だ! 卒業式の後、学園の地下迷宮が突如として逆流を始めた! 街が、王都が……黒い泥に飲み込まれていく……助け、て……っ!』

 投影されたホログラムには、つい数日前に別れたばかりの学園の校舎が、黒い泥の海に沈んでいく光景が映し出されていた。

 フィオナの顔から血の気が引き、彼女の周囲で無意識に放たれた重力が、ドワーフの石床を粉々に砕く。

「……嘘よ。お父様も、学園のみんなも……。まだ旅立ったばかりなのに……!」

「フィオナ、落ち着け。……泥の動きが早すぎる。これは、アスモデウスがいなくなったことで、地上の『境界』が完全に壊れたんだ」

 シュウはガストンの打ち直した『神殺しの黒包丁』を鞘に収め、仲間たちを見回した。

「……ガストン、全速力だ。……王都が完全に泥に溶ける前に、俺たちが『不味い根源』を全部切り取ってやる」

「ガハハ! 任せろ相棒! ……野郎ども、掴まってな! テツクズ・マークII、地底突破モード――フルスロットルだ!!」

 ドリルを回転させ、地底の闇を切り裂きながら、装甲車は自分たちの始まりの場所へと猛然と引き返していった。

【今回のキャンプ飯バフ・ステータス更新】

メニュー:地底銀魚の溶岩蒸し ~ラーヴァ・エキスのソース~

獲得効果:【不撓不屈】(熱・冷気・状態異常への完全耐性)、【基礎攻撃力+120】

名前:シュウ

レベル:48→62

新武器:【神殺しの黒包丁・真打】(成長する聖遺物。あらゆる因果を断ち切る)


パーティ状況:

ガストン:【神の鍛冶師】覚醒。テツクズ号の機能を完全掌握。

リィネ:【因果の直感】により、世界の綻び(泥の発生源)を予知可能に。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ